エンドロール
「えっ。湿布を京子さんにやってもらうって、手を怪我したんじゃないから、自分でできるだろ」
スタジオに集まったときに、真吾くんが言った。
「いや。いつも京子にやってもらうよ。怪我人だから、髪も洗ってもらう」
真吾くんどころか、駿くんとカンジくんまで、驚いてた。
「普通、旦那さんが、怪我や病気したら、普通するだろ」
「ありえない。足を怪我したのに、髪まで、京子さんに洗ってもらうって。手は使える。そんなんで、京子さんに、怒られないの?」
真吾くんは、言った。
「怒んない。靴下も、いつも脱がしてもらうし」
三人は、ええっーて、顔をした。
「オレなんか、出産近いから、紀香の靴下をはかしてやるよ。」
真吾くんは、紀香ちゃんは、お腹が大きいから、そうだろう。
「年上女房って、旦那さんを尻に敷くイメージが強いけど、リョウタさん亭主関白なんですか」
駿くんが言った。
「亭主関白じゃないと思うけど。言えば、やってくれる。耳かきも、いつも京子にやってもらう」
「わかった。恭ちゃんの世話するのと、同じ感覚なんじゃないの。だから、やってあげて当たり前みたいな。子供が二人いるみたいなー」
真吾くんは、からかうように笑った。
「誰が、子供だよっ。恭と一緒にするなよ」
「しかし、尽くされていいねー。オレなんか、付き合った最初だけだよ。つくされたの」
真吾くんが羨ましそうに言った。
こうして、リョウタの捻挫は、完治した。
RSKのレコーディングもあるし、東京行ってられないんだが、江口さんから、関係者の試写会に呼ばれている。
また日曜日に東京行ったら、恭ちゃんと一緒にいれない。
「オレも行く。だから、京子が仕事行ってる間、恭の面倒見てるから」
リョウタと恭ちゃんも、東京に行くことになった。
新幹線でリョウタと恭ちゃんは、東京に行くのが楽しそうだった。でも、私は監督に会わなきゃいけないし、憂鬱。
私は、リョウタと恭ちゃんと東京駅で別れた。
会場に行くと、江口さんと映画関係者の方が待っていた。
「先生、試写終わってから、監督にあってもらえますか」
やはり、会わなくちゃいけないのだろうか。
映画を見ていても、特に私のピアノが流れる場面がなかった。カットしたのだろうか。カットしたのなら、監督と会う必要もないかなと、ちょっとカットされてることを期待した。
映画は、クライマックスに入った。感動の場面でピアノの音が流れた。
ここで、使う?!
エンディングで使うとは。
私のピアノの曲と、ともにエンドロールが流れた。
スタッフクレジットどころか
主題歌「peace of mind」Kyoko
ええっー。主題歌っ。私、プロのピアニストじゃないよー。
やめてくんないかな。
私は、ぐったりになってロビーに出た。
「京子ちゃん?やっぱり、主題歌のピアノ、京子ちゃんだったんだ」
そこに立っていたのは、坂間和音くんだった。
坂間和音くんは、プロのピアニストである。試写に呼ばれたのだろうか。
「あの音、京子ちゃんにしか出せないから、京子ちゃんが弾いてると思った」
いつも坂間和音くんは、コンクールで準優勝だった。
「あのときは、京子ちゃんに、負けたのが悔しかったけど、今なら分かる。なぜオレがいつも準優勝だったか。視野狭い音だったよね。オレのピアノは」
坂間和音くんは、品のよいオジサンになっていたが面影は残っていた。
江口さんが、呼びにきて監督に会うことになった。
「監督。先生をお連れしました」
「始めまして。石川賢三と申します。素敵なピアノを弾いて頂いてありがとうございます。私は、大学生のとき、あなたの曲が大好きでした。だから今回の映画で、あなたの曲を使いたかった。それも急遽、あなたに、ピアノを弾いて頂けるなんて感動です」
石川賢三監督は、私と同じ年だった。
でも年より若くみえた。
はー。とりあえず、終わった。終わった。
リョウタと恭ちゃんは、どこで、遊んでるのかな。
「ママー。ラッキーのとこにきてー」
恭ちゃんが、電話で言った。
Dランドに行ってるのか。
リョウタの密かな夢をかなえるために、私はDランドに向かった。
恭ちゃんとリョウタは、はしゃいでた。
なんか、子供が二人いるみたいに、無邪気だ。
「ママー。早くー」
「京子。早く来いよ。ラッキーと写真撮るぞ」
私は、ラッキーより、ぽーさんが好きなのっ。




