No.1ホスト現れる。
こんな田舎の駅に、かなり目を引く派手な若者が降りたった。
ランチタイムが、終わって、休憩に入ろうと、リョウタが、入り口の鍵を閉めようとしたとき
「アンタ、RSKのボーカル?」
高級ブランドのサングラスをして、金髪に近い茶髪をして、ヒョウ柄のジャケットを着た若者がリョウタに言った。
「どちら様ですか?」
リョウタが聞いてるのに、その若者は店に入ってきた。
「駿と、カンジ呼んで」
唐突に、若者は、言った。
「今、RSKって、バンドやってるんだろ」
「私、RSKの所属してる事務所の代表の笹原と申しますが、RSKに、ご意見ございましたら、私が承わります」
私は、その派手な若者に言った。
「へえー。社長さん、びっじーんっ」
派手な若者は、私に壁ドンをした。
「触んないでくれる?俺の妻なんだから」
リョウタは、ムッとして言った。
「妻?!ボーカルの旦那さん、オッサンじゃねーの。オレ、24歳のピチピチだから。若いよー」
そう言って、派手な若者は私の目の前でサングラスを外した。
ひえっっーー。か、か、可愛いーーっ。
派手な若者のサングラスを外した顔は、くっきり二重に、でかい目だった。鼻筋が通っていて肌もつるつるで、超イケメンだった。
リョウタは、私が、あまりイケメン過ぎて驚いてるのを見て、不機嫌になった。
『花江、すぐ来て。超イケメンが現れる』
私は、花江にメールをした。
「ルキア、なんで、いるんだよっ」
駿くんと、カンジくんが来た。
その派手な若者は、唯川ルキアくんと言って、駿くんとカンジくんがいたビジュアル系バンド、visionTXのボーカルだった。
「駿、カンジ。ひでーよ。オレを差し置いて、他のボーカルで、バンドやるなんて」
どうも、RSKのHPを見たらしい。そのvisionTXのファンだった子が、RSKを見つけて、ルキアくんに教えたみたいである。
「つーか、ルキア。彼女に安定した職についてって言われて、サラリーマンなったんじゃなかったけ?なんで、そんな派手な格好してるんだ?」
駿くんが、ルキアくんに聞いた。
「ああ。一週間で辞めた。で、彼女にもフラレて、今は、新宿でホストやってる。一応、ナンバーワンなんだぜ」
でたよ。ホスト。ビジュアル系バンドは、ホストするのは珍しいことでもないが、まるで、リョウタがホストになってたらの姿を見てるようだ。
「京子っっー。来たわよっ。イケメンは、どこっー」
花江が急いでやってきた。
「誰?このマダムは?」
さすが、ナンバーワンホストだ。花江を見てルキアくんは言った。
「この町のイケメン評論家の花江さんだよ」
カンジくんが言った。
「へえー。イケメン評論家かあー。もち肌で、可愛いねー。花江さん」
ルキアくんは、花江に、両手で壁ドンをした。
「ひいっーー」
花江は、嬉しい悲鳴をあげて、気を失う寸前だった。
なぜか、ルキアくんは、うちに泊まることになった。
駿くんは、奥さんの彩ちゃんにルキアくんが、ちょっかい出したことがあって、泊めることを断固拒否をした。カンジくんは、婿なので、泊められないので、私の家に3日くらいいるらしい。
いったい、ルキアくんは、こんな田舎まで、何しに来たんだろ。ただ、駿くんとカンジくんに、別にバンドを組んだから文句を言いに来たのだろうか。
でも、visionTXの解散の原因は、ルキアくんが、彼女に入れ混んで、彼女に安定した職につかないと別れると言われて、バンドを脱退したからだ。
「社長さんのお母さん?びっじーんっ。親子揃って、美人ですね」
ルキアくんを家に連れていくと、私の母親を見ると言った。ホストだけあって、かなりの持ち上げ上手だ。
「もう。お世辞上手いわねー」
イケメンのルキアくんを見て、母親は、照れていた。
「本当ですよ。こんな、品のあるお母さんを今まで、見たことないですよ」
ルキアくんは、泊めてもらいためか、母親を散々持ち上げた。
「お母さーんっ。このうどん、めちゃ美味いですー」
なんだか、25歳のリョウタを見てるようだった。
あの時、リョウタが上京して、バンドをやるために、ホストしていたら、こんな風になっていたのだろうか。
でも、ルキアくんがいるとリョウタが落ち着いて見える。
ルキアくんは、無邪気な笑顔で、母性をくすぐる。
これじゃあ、ナンバーワンホストなのが、分かる気がする。
「なに、この子、可愛いっー」
ルキアくんが、恭ちゃん見て言った。
「お兄ちゃん。だあれ?」
恭ちゃんが、ルキアくんを見て言った。
「オレ、ルキア。ナンバーワンホストだぜっ。泊まるんで、よろしくね」
ルキアくんは、恭ちゃんにも、屈託のない笑顔で言った。
次の日は、水曜日だったので休みだった。
恭ちゃんの幼稚園を迎えに行ってから、花江を呼んで、私と、母親と、花江で、ルキアくんを取り囲んで、談笑した。
「花江さん、面白いー。キュートだし、面白いし、花江さん、最高だね。」
41歳の花江を捕まえて、キュートと表現するところも、さすがだ。
リョウタは、駿くんとカンジくんとで、バンドの練習に、甲斐くんの倉に行った。
「社長さん、RSKって、良い曲をやってるね」
良い曲と言っても、発表しているオリジナル曲は、まだ一曲だ。
「オレ、visionTXのとき、詞書いてたけど、あんな風に書けないや。まだ本当の愛を知らないのかな」
ルキアくんは、真面目に言った。
ルキアくんが、RSKの演奏を生で聴きたいというので、練習してる場所を教えた。
甲斐くんの倉の入り口で、ルキアくんは、RSKの演奏を聴いていた。
リョウタが、ルキアくんに気づいた。
「ルキアくん、歌ってみる?」
「オレ、解散してから、歌ってないから」
ルキアくんは、躊躇していた。
「ルキア、dearest、久しぶりに演ろうぜ」
駿くんが、ルキアくんと演ってみたくなったのか言った。
リョウタが、駿くんにギターを貸した。
カンジくんが、カウントをとった。
ルキアくんは、最初は戸惑っていたが歌い始めた。
メジャーになれるほど、人気のあったバンドだけある。
ルキアくんの声は、少しハスキーで、色気のある歌い方だった。
まだ、24歳。可能性なんて、いくらでもある。
本当の愛を知らなくても、魅了する何かを持っている。
ルキアくんは、東京に戻った。
ホストを辞め、新しいバンドを組んだらしい。
RSKの駿くんとカンジくんを、見て思ったそうだ。
「オレ、また歌いたくなった。」




