友達。
土曜日。
すごい寒い夜だった。
「寒い。早く閉店して、帰ろう」
私は、言った。
リョウタは、外に看板をしまいに言った。
入り口の前に、女性が立っていた。
「申し訳ございません。本日は閉店になりまして、」
リョウタが、女性にそう言っても、立っていた。
リョウタが、なかなか来ないので、私は、心配になって、外に行った。
「リョウタ、何やってるの?」
リョウタは、女性の方を見た。
「香織・・」
立っていた女性は、私が、独身時代に縁を切った同級生の香織だった。
あー。なんか面倒くさそうだな。
香織に中に、入ってもらった。
香織は、中に入りづらくて、ずっと立っていたのか、体が冷えていたようだった。
リョウタが、香織に暖かいココアを出した。
「京子が、この間、料理コーナーのテレビ出てて。私が短大で、京子が大学ん時、京子のアパート行くと、パスタ作ってくれて、美味しかったなーって思い出して。」
確かに、香織とは、幼稚園からの付き合いなので、香織が、結婚するまで、仲良かった。
でも、香織は、結婚した途端、態度が変わった。結婚しない私をを見下し、35歳になっても、子どもを産んだことがない私を見下した。何につけて、上から目線で、言うようになった。
公務員の旦那さんと結婚したことが、自慢なようで、リョウタと、付き合ってた私を、『遊ばれてる』『捨てられる』って、バカにしてた。
いい年して、子どもを産まない私を恥ずかしいと言った。
私は、そして、香織とは考えが違う人だと、縁を切った。
それを、今更、私に会いに来て、何を言いたいのだろう。
香織の旦那が浮気をし、浮気相手が妊娠し、離婚を攻まられて、立場が変わり、私に泣きつきに来たのだろうか。
それは、調子がいい気がする。
「私、京子より、先に結婚出来て嬉かった。旦那は親も納得する安定した公務員だし、京子より、やっと上に立てた気がした。
30過ぎて、結婚しない子供産まない京子を見下してた。京子は、私より頭よくて、美人で、モテたし。そんな美人で、モテた京子が、まだ結婚しないんだって優越感たっぷりだった。働きづめの京子をバカじゃないかって思った。キャリア積んだって、結婚しなけりゃ、女性として、どうなのって思った。中学の時、私が、ずっと好きだった男子が、京子のことを好きだったの。私は、その男子をすごい思ってたのに、京子は、全く、その男子に興味なしで、私は、バカにされた気分だった。私が選んだ男は、たいしたことないのよって、京子に、思われてるようで。だから、私は、先に結婚して、見返してやりたかった。」
香織は、切実に言っていた。
「それで、見返して結果はでたの?」
ちっぽけな僻みや、プライドで、友情は簡単に壊れる。
そんなことで、ひがまれるなら、付き合わなくてもいい。
「結果は、でた。私のくだらない意地だった。結婚して、離婚にすることになって、なんも残らなかった。幸せって残るもんだと思ってたけど、残らなかった」
離婚にすることにしたのか。意地になって離婚しないと言ってたらしいが、旦那さんは、もう香織に気持ちはないのだろう。
「なんだか、京子の旦那さんみたら、私、なんで、あんなオッサンと結婚したのだろうと思った。頭なんかハゲテて、腹は出てるし、それで、話はクドイし、細かいし、偉そうだし、性格も良くないし、なんで、結婚したんだろって、可笑しくなった。浮気相手の若い女も、略奪するくらい、あんなオッサンのどこいんだろうって、呆れた。やっぱ、私、男、見る目ないんだね」
リョウタのことを、あんなにヒモ男だの、ボロクソ言ってたのにね。
私は、独身時代に香織に言われたことは、忘れないし、見下されたことも忘れない。だから、香織が、今言ってることが、調子いいと思った。ただ今、自分が、窮地だから、弱いように、反省してるようにしてるだけ。また状況が変わったら、私を見下すだろう。
人って、そんなに変わらない。
「これから、どうするの?」
私は、香織に聞いた。
「まだ、わからない。実家には帰ってきたくない。公務員の旦那と離婚して帰ってくるなんて、いい笑い者よ」
まだ、見栄やプライドがあるようだ。
「私の母が、離婚することになったら、京子ちゃんは、料理教室の先生やったり、色々出来るけど、あなたは、何も出来ないって、バカにされた」
でも、香織は、結婚しないで、仕事をしてた私をバカにしてたじゃないの。
「香織。今から始めたって、遅くない。香織に出来ること、あるよ。人の目を気にしたり、へんなプライド持ってたら、何も始められないよ。もう私達、41歳だよ。人の目を気にして、どうするの?オバサンって、バカにされたっていいじゃない。とにかく始めなきゃ。」
私は、まだ、見栄のある香織に、言った。
「京子、ありがとう。ごめんね」
そう言って、香織は、帰って言った。
人の幸せなんて、人それぞれ。
結婚するのが幸せ。
仕事をするのが幸せ。
だから、自分と同じ幸せを強要した香織は、私とは共有出来ないと思った。
ムリに友達を続ける気はない。
もし、60歳くらいになったら、香織と同級会で、会ったら、これまでのことが笑い話になるかもしれない。
でも、私は、香織に言われたことを忘れない。
だから今は、お互いに笑え合えない。
でかい空は、たまに場所によって、差別をする。
災害をもたらし、かと思えば何もないように晴れたり。
今、自分を弱いと思っても、
不幸と思っても、
いつか、晴れる日がくるんじゃないだろうか。
空は、見てた気がする。ずっと。
悩んでる姿を、疲れた姿を。
見てたよ。




