イベント。
今度の日曜日に、市民広場で、特産品まつりが行われることになった。そこで、町のイケメンに選ばれた三人衆は、宣伝することになった。
で、今日のローカル局の夕方の情報番組に出ることになった。
中継で都会の街頭で、地元の宣伝をするコーナーである。
「今日は、○○市○○町から、イケメン三人が、起こしくださいました」
地方局でベテランのおばさんレポーターは、テンションが高かった。
「こんばんはー」
リョウタ、真吾くん、駿くんの三人は声を揃えて挨拶した。
「なにぃ?市のイケメン投票で、選ばれた三人なんだって?」
おばさんレポーターは、年下だと思ってか、やけに馴れ馴れしい話し方だった。
「はい。おらがの町のイケメンに選ばれました」
「一位のリョウタくんは、パスタ屋さんの店長さんです。二位の真吾くんは、米専業農家の跡継ぎさん。三位の駿くんは、野菜専業農家の跡継ぎさんだそうでーす。みんな、かなりのイケメンだもんね。もう芸能人みたいっ。素人さんイケメンに思えない」
おばさんレポーターは、かなり、はしゃいでいた。
「そんなことないですよ。顔で選ばれたわけじゃないですから」
真吾くんが、言った。
「またまたーっ。こんなイケメン三人滅多にいないってー。おばさん喜んじゃう」
おばさんレポーターは、謙遜するふりして、自分をおばさんと言って、ぶりっ子していた。
「では、お知らせお願いしますー」
「今度の日曜日に、○○市市民広場で、特産品まつりを開催します。朝10時から夕方5時までです。色んな特産品がありますので。ぜひお越し下さい。」
リョウタが、詳細を読み上げた。
「その日は、真吾くんの家のお米と、駿くんの家の野菜も、販売するんでしょう。リョウタくんのパスタ屋は、なにかするの?」
「うちのパスタ屋は、出店をだします。」
「パスタするの?」
「パスタは、出店で難しいので、ピザと、ホットドックとかあるんで、食べに来てください」
「おばさんも、行こうかしら?」
おばさんレポーターは、また謙遜するふりして言った。
「ぜひ、来てください。」
「あとリョウタくんから、個人的にお知らせあるんだって。このコーナーは、町の宣伝だから、特別よお」
またまた、おばさんレポーターは、ぶりっ子した。
「来週のの日曜日。ここのライブハウス、voiceで、オレがギターをやってるAvid crownのライブやります。開演は5時からです。チケット完売したんですが、当日券少しでますので、見に来てください」
リョウタは、ちゃっかりライブの宣伝した。
「そこのライブハウス?おばさんも娘と見にいこうかしら」
おばさんレポーターは、誘ってもらいたい感じで言った。
「はい。ぜひ、来てください」
「○○市のイケメン三人組でしたー。」
おばさんレポーターが、コーナーをしめた。
「来てくださいーっ」
そう言って、三人は、テレビカメラに手を振った。
はあ。無事にテレビ出演は終わった。
私は家で、両親と恭ちゃんとテレビを見ていた。
「リョウタくんは、やっぱりライブしてるから、テレビ慣れしてるわね」
母親が言った。
「なんか、あのレポーターの人、嬉しそうだったね」
私が、皮肉って言った。
「やっぱり若い男性だと、嬉しいんだろうね。あのレポーター、やたら自分をおばさんと言ってたけど、年は、京子よりは、上よね。」
自分を、謙遜するふりして、おばさんと言い出したら、おばさんである。
その頃、カットがかかった中継先では、おばさんレポーターは、まだ三人に話しかけていた。
「リョウタくん、そこのライブハウスなら、ライブ行きたいけど、チケット完売なんでしょお」
おばさんレポーターは、リョウタに猫なで声で言った。
「来るんなら、顔パスにしますよ。受け付けに名前言えば入れるようにしときます」
「ほんとお。じゃあ娘と行くっ。行くっ。」
おばさんレポーターは、かなり、はしゃいでいた。
そうなのである。今度の日曜日に、特産品まつりで、うちのパスタ屋は、出店を出すのである。当日は、花江に手伝ってもらうことにした。
ピザ釜を持っていくにわけにいかないので、鉄板焼で出来るピザにして、値段は、安くしようと思っている。あと、リョウタのお父さんの会社から仕入れてるウインナー使って、ホットドックを出そうと思っている。
リョウタ、真吾くん、駿くんのテレビ出演は、県内でかなりの反響があり、お問い合わせが、かなり多かったらしい。当日、市民広場の特産品まつりの様子を情報番組が、レポートに来るらしい。
また、あのおばさんレポーターが来るのだろうか。
特産品まつり当日。
朝から、すごい人だった。こんなに動員できると思ってなかった市の実行委員も、てんてこまいだった。
実行委員で同級生の三塚くんが来て、
「京子の旦那さん達のおかげで、テレビを見た隣の市からも、都会の市からも、来てる人が沢山いるよ」
真吾くんの家のお米も、駿くんの家の野菜も、かなり売れてるみたいだ。
うちの出店は、大変なことになっている。
ホットドックが好評で、すごい並んでいる。
「めちゃ、美味いー」
小学生の軍団で、来た男の子たちが、休憩所のテントで、ホットドックに、かぶりついていた。
ホットドックは、100円にしたので、小学生でも買える値段である。
「リョウタくーんっ。来たわよー」
あの、おばさんレポーターが、手を振りながら、リョウタに駆け寄ってきた。やはり、このおばさんレポーターが、レポートに来たのか。
実際、このおばさんレポーターは、顔を生で見てみると、若作りして、化粧もばっちりしてるが、50歳はいってそうだ。
「あっ。うちの妻です」
リョウタは、私を紹介した。
「えっ。リョウタくん、結婚してるのおー」
おばさんレポーターは、驚いて、雄叫びをしていた。
「えっ。真吾くんも、駿くんも結婚してますよ。言いませんでしたっけ?」
「えー。みんな結婚してるのおーー」
おばさんレポーターは、かなりショックを受けているようだった。
リョウタが、結婚してるとか、してないのとか、おばさんレポーターに、何の関係があるんだ?さては、狙ってたのだろうか。




