年上の嫁。
「リョウタ、音低くして」
リョウタは、朝から洋楽のハードロックをずっと聴いている。
「恭ちゃん昼寝してるんだから、低くしてっ」
「都会でライブ近いんだから、他の曲も聴いて、ライブ感出さないといけないのっ」
今度の都会でのライブが、キャパ300人のライブハウスで、やるそうだ。無理しちゃって。と思ったが、すでにチケットは完売したらしい。
この町から、わざわざ見に来る人もいるらしく、都会の大学生になったお客様が、友達つれて来たりするらしい。
「だったら、防音の部屋で聴いてよ。朝から、ハードな曲ばかりで、頭いたい。」
「京子は、古い曲しか聴かないからなー」
そう言ってリョウタは、音楽を消して、コンビニ言ってくるといって、出掛けた。
むかつくー。なんなの古い曲しか聴かないって、人を古人みたいに。リョウタが聴いてるバンドが憧れてたバンドを私は聴いてるんでしょーが。いわば音楽のルーツを聴いてるわけ。基本でしょーが。
料理教室の日。
「先生、真吾が、ポスター撮りまでに、痩せるって、私が買ってあげたランニングマシンを毎日やってるんです。太る前は、真吾イケメンだったんで、痩せるの楽しみー」
紀香ちゃんは、真吾くんが痩せる気になってくれて嬉しそうだった。
「今だって、ワイルド系のイケメンじゃないの。ワイルド系好きな人は真吾くんに投票したんだよ」
私は、紀香ちゃんに言った。
「そうですけどー。私は、やっぱり細マッチョのほうがいんで」
紀香ちゃんが嬉しそうなのに反して、駿くんのお嫁さんの彩ちゃんは、元気がないようだった。
次の日。
朝、駿くんが、店に、配達に来た。
「京子さん、オレ、ポスターのモデルを辞退しようと思います」
駿くんは、町の活性化イメージポスターのモデルを辞めると言い出した。
「えっ。どうして?駿くん、3位で、選ばれたんだよ」
「イケメン投票の条件にもあったように、オレ、町のイメージを壊さないことは、出来ないんで。オレ、腕にタトゥーあるから。田舎って、そういうの嫌うじゃないですか」
駿くんは、タトゥーがあるのを気にしているようだった。
「そんなことないよ。駿くんにタトゥーあること、駿くんの披露宴で、招待客に謝辞で、言って、みんな知ってるんだし、それでも、駿くんが投票されて3位になったんだよ。町のみんな、駿くんが東京から帰ってきて、跡継ぎで、農業を一生懸命やってるのを見てたから、だから、投票してくれたんだよ。そんなこと、気にしなくていいよ」
私は、駿くんを説得した。駿くんの披露宴は、かなりの招待客だった。町の半分の住民を呼んだと言っても過言ではない。その中には市会議員もいた。もちろん市職員もいた。そんな招待客の前で、自分が東京でバンドやってて、タトゥーがあることを正直に言ったのである。市役所が、タトゥーのことを知ってて、モデルに適してないなら、ランキングから除外してもおかしくない。
「駿くん、みんなが、選んでくれたんだよ。考えなおして」
私は駿くんに、もう一度言った。
リョウタは駿くんが悩んでるのを知ってたのか、黙って聞いていた。駿くんが帰ったあと、リョウタは、後で飲みに行くときに、真吾くんと、説得してみるからと言った。
リョウタは、真吾くんと、駿くんと飲みに行くと言って、出掛けた。
三人は個室がある居酒屋に言った。
「京子さん、やばいっすよー」
駿くんが突然言い出した。
「なんなんですか。あの包容力。京子さんが、オレなんかに、必死に説得しようとしてるのを見て、ヤバイと思った。オレなんかに、優しすぎますよ。」
リョウタの顔が、ぴくついた。
「わかるー。京子さんの大人の包容力すげーよ。オレみたいな年下を面倒くさがらず相手してくれて、話聞いてくれて。これが母性だろーかって思う。」
今度は、真吾くんが言った。
リョウタは、かなり、顔がひきつっていた。
「アハハ。リョウタくん、不機嫌なったー。町一番の嫉妬深さだからな。リョウタくん。誤解すんなよ。オレらが言ってんのは、京子さんは、憧れの優しいお姉さんって感じなんだよ。小さい頃に、優しいお姉さんが大好きだったっていう、あの感覚よ。安心しろ」
真吾くんは、リョウタに、なだめるように言った。
「まあ、真吾くんと駿くんが言ってることは、分かるけどよ」
リョウタは、言った。
「リョウタくんが心配する気持ちも分かる。あれじゃ、年上の女性が好きな男っているから、年下から、モテそうだもんな。リョウタくんは、年上が好きだったの?」
真吾くんが、リョウタに聞いてきた。
「別に年上好きってわけじゃなかった。たまたま京子が、10歳も上だったんだよ。若く見えたし」
「好きになったら、年を気にしてらんないからな」
若い子が好きな真吾くんが言った。
「オレの同級生の男子も、京子さんのファン多いよ」
真吾くんが、よせばいいのに、言った。
リョウタは気が気じゃなかった。
リョウタが飲み会から帰ってきた。
「おかえりー。駿くん、どうだった?モデルするって?」
「うーん。なんか市役所の人に聞いてみるって言ってた。あとで、ダメ言われても嫌だろうしな」
「じゃあ。市役所で、いいって言ったら、駿くんモデルするんだねー。良かった」
私は、安心したようにリョウタに言った。
「あのさ。オレ以外に、あんまり母性を発揮しないでくれる?」
そう言って、リョウタは、私を抱きしめた。
後日。駿くんは、担当の市役所の人に確認しに行った。
「町のイケメン条件みましたよね?町の住民であること。町のイメージを壊さないこと。人気者であること。町の活性化に協力できること。の条件です。条件に合ってない人は除外してます。もちろん、投票された中で、条件に適してなくて、除外した人もいました。湯川さんは、条件を満たされてたわけです。」
担当の人は、駿くんに説明をした。
「でもオレ、タトゥーあるし、町のイメージによくないし、条件を満たしてないと思うんですが」
「いやいや。そういう見た目で、判断して投票してもらったわけじゃないですから。湯川さんは、町でも、大きな専業農家の息子さんで、若いのに一生懸命、農業に取りかかってる姿勢が、町の人に指示されたわけです。それと、町の活性化に、協力して頂けると思ったからです。町の人に信用ない人は、町のイケメンに選びませんよ。そういうこと、ですから」
そう言って、担当の人が席を立とうした時、言った。
「あと笹原さんも見込んでる若者だから、信用はできると思ったので。じゃあ、ポスター撮りのほうお願いします」
担当の人は私の父親の元部下だった。父親は、その担当の元部下に、イケメンを選出する際に駿くんのことを聞かれたらしい。
こうして、無事に町の活性化イメージポスターの撮影は行われた。
なぜか、三人は紋付き羽織袴姿だった。
金屏風の前で、三人は撮影した。
真吾くんと、駿くんは、黒の羽織袴だったが、リョウタはセンターで白の羽織だった。
ポスターには、
「イケてる町、イケてる町人、行くしかない」
と、イマイチわかりにくい、コピーが書いてあった。




