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29 三将軍

 最早完全に慣れてしまった帰路につき、ダンジョンを抜けた僕らはグライン将軍と相対する。


「報告しろ」


 将軍が居丈高に腕組みして慎太に尋ねる。

 見慣れた光景だ。


 クラスではもう誰も抵抗する者はいない。それも至極当たり前のこと。将軍の鍛え上げられた身体、そしてレベルを見れば萎縮してしまうのも無理はなかった。



 ―――――――――――――――

 グライン・ゴットマー 32歳 男 レベル62

 人族

 職業:暗黒騎士(ダーク・ナイト)

 ―――――――――――――――

 


 恐ろしく強い。

 少なくとも僕らはレベル31ないと歯が立たなさそうだ。

 いや、暗黒騎士なんて職業だから、実際はレベル40くらいないと相手にならないのかもしれない。どうやら騎士の上級職のようだし。

 なんか命を削って放つ超攻撃を繰り出してきそうだ。


 畏怖するところはそれだけじゃない。

 僕は将軍の腰、そこに佩刀されている剣に視線を下ろした。

 漆黒の鞘に収められた剣は嫌になるほど胡散臭い雰囲気を醸し出していた。


 魔剣の臭いがプンプンする……。鑑定できなかったし。

 そんな僕を余所に、慎太が将軍の言葉に応じて前に出た。


「今日の成果は第一層の攻略。それだけだ」


「ほう……。魔宮の一層を攻略できたのか」


 やっぱりこいつ知ってやがったね。

 死体回収しろって言ったのはこのダンジョンが魔宮だって知ってたからだ。


「お疲れ、とだけ言っておこう。もう帰っていい」


「言われなくてもそうする」  


 冷厳な双眸を睨んで慎太が踵を返した。

 そしていつもの如く衛兵が僕らを牢まで連行していく。

 この後はいつも通りマズイ飯を食べて硬い床に寝るのだろう。

 僕はそう思っていた。

 これから起こることなど露知らず……。






 夕飯を食べ終わり、眠るまでまだ時間があり暇になってきた頃。


 僕が慎太と皆月さんの三人で今夜の計画を相談していた時、衛兵の一人が鍵をもって牢獄にやってきた。


 彼は鍵をジャラジャラ鳴らすなり扉を開いて言った。


「皇帝陛下がお呼びだ。出ろ」


『…………』


 僕らは次々に訝しげな表情を浮かべて言われた通りに牢を出る。

 そのままいつもダンジョンに向かう時のように衛兵に囲まれながらホールに出た。


 ホールにはグライン将軍が赤毛の強気そうな女性と幼さの抜けきっていない藍色の髪の少年と共に待機していた。

 僕らを連行してきた衛兵が一斉に敬礼する。


「お連れ致しました!」


 三人は衛兵を一瞥し、次いで視線をこちらに向けてそれぞれ別の表情を浮かべた。

 一人は歓喜し。一人は興味深げな視線を。一人は無表情を貫いた。

 藍色の髪の少年が笑いながら口を開く。


「へぇー、これが勇者かぁー。あんまり強くなさそうだねぇ。これならオレっちでも簡単に勝てちゃうんじゃねー?」 


 それに紅色の髪の女性が微笑を浮かべる。


「まあ、そう言ってやるな。彼らはまだこちらに来て一週間だそうだ。ひと月もすればアルフィト、お前も追いつかれるんじゃないか?」


「いやー、それはないよー。レベル的にはそうかもしれないけど、オレっちたち三将軍には国宝級の装備があるじゃん。それに、技術的にも負けないねー。追いつかれるのはベルベナ、君なんじゃない?」


「フフフ、言ってくれるな。グライン、彼らが魔宮の第一層を攻略したのは確かなんだな?」


 どうやら将軍らしい二人は寡黙な男に真相を尋ねる。藍色の髪の少年、アルフィトも興味津々といった様子だ。


 グラインは「ああ……」と静かに頷いた。

 それを見たアルフィトが歓声を上げる。


「うおー、スゲー! あんな化け物迷宮何があるか分かったもんじゃないのに! いやー、あいつら弱そうなくせに大したもんだねー。ここで殺りたくなっちゃったよ」


「我慢しろ。それより、全員集まったのなら行くぞ。皇帝陛下がお待ちだ」


 三人が背を向けると同時に連行が再開される。

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