28 ボスドロップ
一昨日休んじゃったんで連日投稿です。
その後はあまりにも圧倒的だった。
残った『コボルト・ソルジャー』は僅か二体。残党を処理するのに大した時間は掛からなかった。
「グルァァ……」
情けない断末魔を上げて最後の『コボルト・ソルジャー』が白目を剥いて倒れる。
その最期を見届けた瞬間、辺りに鯨波が木霊した。
『うおおおおぉぉおおぉぉぉぉぉ!!』
ボスを倒した感動は凄まじく、互いに手を取り合い喜んでいる。死人が0だったことも喜びに拍車をかけているに違いない。
それにしても、現実でボスモンスターを倒す日が来るとは思わなかった。
この達成感、異世界に来た人たちがハッスルしてしまうのもよく分かる。とは言っても、あのクソ神官長や皇帝は絶対に許さないけど。
「恭平、やったな! 勝ったぜ、俺達!」
「ああ、これも偏にみんなのおかげだよ。トドメを刺したのも慎太だしね」
「柊くんの指揮あってこそだよ! 四条くんがトドメを刺せたのも柊くんが隙をつくったからだし、柊くんも殲滅に参加してたしそもそも作戦立てたのも柊くんだし――」
「皆月、お前恭平を崇める宗教にでも入ったの?」
「え? 柊くんは凄いんだから褒められて当然なんだよ!」
「皆月さんが怖くなってきたよ」
さて、おしゃべりもここまでにして……。
ボスと言えばやっぱりアレでしょ。
「ボスドロップ。一体誰がドロップしてるのかな?」
「四条くんじゃないかな? 四条くんが一番ダメージ与えてたし……」
「おぉー、あったぜ。『司令官の軍靴』だってよ」
ポンっと音を立てて慎太の手元に現れたのは、奇妙なマークが刻まれた黒い靴だった。魔法で鍛えられているのか、軽いのに硬度は鉄以上だった。
「いいんじゃない。裸足だったから丁度いいと思うよ」
「戦士職向けみたいだから、四条くんが装備するのが一番だね!」
「お、おう。なんか悪いな……」
「気にすることないよ。経験値が沢山入ってきたおかげでレベルが20になったからね」
「おっ、ということはいよいよアレが……」
ここに来て初日。僕がこの『隷属の首輪』を鑑定したところ『聖呪』のレベルは20だった。牢屋の扉も調べたが、掛かっていたのは鍵だけ。その点に関しては慎太が必要な魔法・スキルを取得しているので問題ない。
つまり、
「今夜の、初めての脱獄の準備が整ったわけだね」
慎太が鷹揚に頷く。その様子は少し緊張しているようだった。
それも仕方の無いことだ。なにせ脱獄がバレれば僕たちは如何な処罰を受けさせるのか分かったものではない。
だから、最初は慎重に行動するつもりだ。
「って、ちょっと待ってよ! 何、二人共何考えてるの!?」
そこに皆月さんが割り込んできた。
そういえば、彼女には何も話してなかったっけ。
僕は彼女に脱獄に関してのあらましを話した。
「二人共……初日から脱獄すること考えてたんだね」
話し終わるなり彼女は呆れた表情で僕らを見上げた。
いや、だって当然だろう?
「ここ、エアコンもないから夏場とか大変でしょ」
「衛生環境もクソ悪いしな」
「四条くん、初日に私をそれでからかってなかったっけ?」
皆月さんが遠巻きからこちらを見つめる姫を見て言った。
慎太はニヒルに笑い、
「俺は過去を振り返らない、未来だけを見つめて生きる男なんだよ」
「キメ顔で言ってるとこ悪いけど、それって現実逃避だよね?」
「皆月さん、人間誰しもそんなものだよ」
「そういえば柊くんも四条くんと一緒に私をからか――」
「よし、帰ろうか!」
皆月さんが変なことを言い出す前に僕は帰還することを決定した。




