27 ボス戦
昨日は更新できなくてすいませんでした。
五日目でマップは大体埋まった。遭遇したモンスターの種類は5種類ほど。いずれも人海戦術の前では塵芥に等しかった。
六日目に大型モンスターの潜む部屋を発見。これをボスと呼称することに。一応念の為に再びレベリングをしてその日は引きあげた。僕と慎太、皆月さんのレベルは19になっていた。
そして今日、異世界に来てから一週間目にして漸く第一層のボス戦が始まる。
今日の時点でクラスの平均レベルは17ほど。これは一般的な34レベルに匹敵する。それが25人(姫は7レベル)、勝算はある。
慎太がクラスを代表して鉄製の観音扉を開く。
扉の軋む音とクラスメイトの息を呑む音は折しも重なった。
同時に、扉が開かれた瞬間に火球が襲ってきた。
「なっ――!?」
身構える暇もなくボール大の火球が班の中心に炸裂。何人かが負傷するも、それより深刻だったのは動揺だった。
それは波紋のように急速的に伝播していく。
「慌てるな! 一班後衛隊回復魔法の詠唱に入れ! 一班前衛隊は部屋の中に突撃! 押されるな、押し込め!」
僕は声を張り上げて立て直しを計る。
慎太が追従するように叫ぶ。
「二班後衛隊は攻撃魔法の詠唱を開始しろ! 二班前衛隊は俺に続け! 一班を援護する! 決して後ろに通すんじゃねぇ!」
慎太が雄叫びを上げて吶喊していく。それに呼応するように鬨の声が鳴り響く。
敵の数は11体。
鑑定を使ったところ、『コボルト・ソルジャー』が五体、『コボルト・マジシャン』が五体、そして『コボルト・コマンダー』が一体いることを確認した。配下の十体はいずれもレベル40~45。『コボルト・コマンダー』だけがレベル48だった。
これは……予想以上だね。
一番レベルの高い僕と慎太、皆月さんでさえレベルは38相当くらいなのだ。
更に、敵将は指揮官。効率良く配下を使うだろう。となると、勝敗を分けるのは互いの部隊の指揮となる。
今日の姫の監視役は皆月さんなので、僕は気兼ねせずに振る舞える。負ける気がしない。
さて、どうしようか……。
場所は結構開けた玄室。体育館くらいの広さだ。以前レベリングした時は人員を横に一列並べ包囲することができたが、今回はそうはいかない。
隊なんて言ってるものの、13人で構成された隊を前衛と後衛に二分割してしまうと6、7人ほどになってしまう。ひとりひとりのレベルが低い現状、これほど広い場所での戦闘は不利だ。消耗が激しい。
故に、常に兵を補完しつつ戦う。
「一班前衛隊後退しろ! 二班前衛隊、側面から攻撃して注意を引き交代!」
一班分の前衛でコボルトソルジャーを相手して、消耗したら交代する。この戦法だと継続的にダメージを与えにくいが、それでいい。
目的は飽く迄も時間稼ぎなのだから。
「『風巻』!」
僕の広範囲中級風魔法が敵の後衛を襲う。魔力に特化した僕の一撃とこちらの後衛隊の継続的なダメージの積み重ねにより敵の後衛は壊滅。小まめに回復の指示を与えられていたようだが、火力が違う。
回復役を真っ先に狙うのは当然のことだ。
前衛の時間稼ぎはこのためにあった。
これで、後衛が敵の前衛に攻撃できるようになる。
『コボルト・マジシャン』の全滅に怒りを見せた『コボルト・コマンダー』がこちらの前衛に攻撃しようとする。だが、慎太がさせない。
「テメーの相手は俺だ!」
「二班後衛隊は攻撃魔法を停止、慎太の援護をしろ!」
二班の指揮権も僕にある。
僕は魔法の詠唱に入りつつ慎太の戦いぶりを観戦する。
『コボルト・コマンダー』は司令官の割に戦闘能力は高い。武器は厚めの大剣で『コボルト・ソルジャー』より頭一つ分背が高く、リーチも長い。一撃一撃は重いが、鈍重に見える。現に、慎太はまだ一度たりとも攻撃を喰らっていない。
「ほら、どうした!?」
いきり立った『コボルト・コマンダー』は膂力に任せて獲物を振りかぶり、爆発的な瞬発力でスウィング。大剣が正確な位置に薙いだ一撃は空気を振動させ慎太に迫る。
慎太は臆することなく駆け出すと少し腰を屈めて鞘の剣に手を宛てた。その刹那に『コボルト・コマンダー』の一撃が僅かに慎太の髪を切り、紙一重で空を駆け抜け地を粉砕した。
飛び散った礫を躱しつつ『コボルト・コマンダー』の懐に接近。視線と視線が絡み殺意が交錯する。
「――ッ!」
懐に潜り込んだ勢いをそのままに慎太は跳躍。同時に、灰色の刃が鞘走り無数の軌跡を刻んでいく。
夜空の星を連想させるような刹那の煌きが終わり、コボルトの司令官の肩を通り越して空中を舞った慎太は着地ざまに剣を鞘に収めた。
短く一言。
「『閃光』」
そう呟いた瞬間、『コボルト・コマンダー』の身体中いたるところから血が噴き出した。
「抜刀術か。刀じゃないのになんでできるんだろうね」
スキルの恩恵だろうか。
勇者の専用スキルのひとつらしい。
詠唱を完了した僕は脇の皆月さんに目を向ける。
「『フレア』をボスの脇にお願い」
「詠唱は完了済みだよ。行くよ!」
直後、拳大の火球が『コボルト・コマンダー』の脇を通り抜け爆散した。その音に気をとられた『コボルト・コマンダー』はこちらから一瞬顔を背ける。
この隙だ――!
「『影縛り』!」
数瞬の間隙から咲いた魔手が『コボルト・コマンダー』を覆っていく。『コボルト・コマンダー』が激しく動揺し力任せに振りほどこうとし、そのフィードバックが全て僕に跳ね返る。
「慎太、あまり長くはもたない。決めてくれ!」
「ああ!」
後衛隊の援護を受けつつ慎太は駆け出した。
灰色の直剣を掲げ、全力で振り下ろす。
「『一閃』!」
音をも斬り裂く刹那の光は『コボルト・コマンダー』の首元から肩に掛けて放たれた。
蒼い軌跡をなぞるように鮮血が空を染める。
『コボルト・コマンダー』は僅かに目を細め――その身を静かに地に横たえた。




