一話 序章:再起
二〇一二年 七月——
「……うわ——!」
叫び声とともに目が覚めた。
周りを見回して、ここが自分の部屋だと確かめると、
「また、この夢か……」
進藤 友也はベッドの上で呟いた。
冷や汗とともに、激しい動悸が突き上げていた。
今から三年八ヶ月前
進藤は、栄和出版社の編集部宛に送られてきた手記を元に記事を書くため、裏取りを進めていた。そして、話を聞くために、ある男の部屋を訪ねた。
その日、男の部屋で見た光景が、進藤の目に焼きついて離れなかった……。
それが悪夢となって、今でも進藤を苦しめ続けている。
進藤はベッドから立ち上がると、キッチンに向かった。
水道の水をコップに入れ、渇き切った喉に流し込んだ。
リビングのソファに座ると、携帯を開いた。
[体調は大丈夫か?]
昨日、早退した進藤を気遣う編集長の坂口 一也からのメールだった。
昨日、編集部の進藤宛てに手紙が一通届いた。その中に同封されていた一冊のノートに目を通してから、進藤の脳裏にあの日の記憶が蘇ってきた。
呼吸が荒くなり、ひどい頭痛までしてきて、仕事に集中できなくなった。
その後、坂口に促されるまま早退したのだった。
進藤は、[もう大丈夫です。]と坂口に返信をすると、携帯を閉じテーブルに置いた。
そして、テーブルに置かれた一枚の写真を手に取った。
この写真も、昨日届いた手紙と一緒に同封されていたものだった。
そこには、友達と並んだ一人の少女が写っていた。
以前の彼女からは想像できない笑顔だった。
新たな人生を歩み始めた少女の姿を見て、進藤は思わず微笑んだ。
この写真に写っている少女の過去に関わったことで、進藤は、真実を追うことに迷いのなかった、かつての自分を思い出した。
三年八ヶ月前、あの部屋での出来事を経験して以来、進藤は人の過去に関わることを恐れていた。そんな進藤の背中を、少女との出会いが再び押してくれたのだった。
進藤は写真をテーブルに置き、深く息を吐いた。
そして、昨日ざっと目を通したノートを、もう一度開いた。




