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37 人魂と物理・迷宮主4

今回はいつもより多く書かせてもらいました。


 『主人が作った迷宮を壊すのは心苦しいが、時間がない故仕方がない』


「ぷるぷる!」


『まぁ、そう怒るな。迷宮を壊すと言っても、ほんの一部分だけだ』


「ぷるぷるっ」


『ふむ、分かってくれたか。それでは行くぞ『龍の息吹(ドラゴンブレス)』』


 ハクの口周りに溜まるは、膨大な量の魔力。そう、ここは迷宮内、マスターの力を普通の者より扱うことができる。有利な場所なのである。


『ルカ、少し下がった方が良いと思うぞ』


 溜まった魔力が天井向け放たれた。


『え、何?ハク、あんたまさかーー!』


 最深部から中層最後の部屋まで大きな穴が空いた。


『無事か?』


『無事か?ですって?無事な訳がないでしょー!?防御魔法の魔法盾(マジックシールド)を発動させたわよっ!』


『無駄に魔力を使わせてしまったようだな。悪いことをしたな』


『直で食らえば血肉一つ残らないほどの威力なんだからもっと気をつけてうってよね』


『すまない……』


『それより、早く来て、戦いに参加して!こいつの炎に触れたらヤバイわよ』


『今向かう』


 ハクは体を蛇のようにうねらせ、自分で空けた大穴を通り、ルカと人魂がいる、下層、始まりの部屋に着いた。


『ココノアルジハデムカヌカ……』


『主?マエダはね、あんたのせいで少し頭がおかしくなったのよ!だからこんな選択をしちゃったのよ!もっと他に良い選択肢があったはずなのに……』


『悲しんでいる場合ではないぞ』


『……そうね』


『さぁ、人魂よ……我らの憎悪の攻撃に果たして耐えられるか?』 


『絶対に仇をとってやるんだから!』


 ハクは平然としてるように見えるが、心の中では怒りと悔しさ、そして悲しみの感情でいっぱいだ。だが、それを表に出さないのは、ハクのプライドも勿論あるが、一番はルカがそれにより泣き崩れることを分かっているからだ。


『ドレホドノモノカ……ミサセテモラオウカ』


 最初に動いたのはルカだ。その目にはまだ、光が宿っている。


『隕石を圧縮せよ 万物を凶器に変え 対象の自由を奪え 隕石弾(メテオバレット)


 異空間にある巨大な隕石を、弾丸サイズにまで圧縮したのである。異空間にある隕石は軽く10を越えている。


『キミョウナマホウヲツカウトナ』


 言葉の終わりと同時に、青い炎が10、緑色の炎が30、黄色の炎が30、紫色の炎が3、人魂の周りに現れた。


『早く死になさい!』


 ルカの周りにはメテオバレットが15程浮かんでいる。


『アタラシイモノニハ……トゲガアル』


 10の青い炎が飛んでくるも、一発のメテオバレットにぶつかり、消えた。


 それでも速度は落ちず、人魂の方へと飛んでいく。


『アイショウガ……イマイチトナ……ククク……ツヨキガモノヲイウ』


『炎と土、相性で言えば圧倒的に私の方が上よ。でも、相性なんてある程度、強さに差があると関係なくなるのよ』


 今度は3の紫色の炎がメテオバレットの方へと飛んでいく。

 紫色の炎がメテオバレットに触れた瞬間、メテオバレットに紫色の亀裂が入り、大爆発を起こした。


『え?何が起こったの!?』


『アア……ヤハリツミブカイ』


 爆発時に出た煙の中から怪しげに光る炎達が揺れ動く。それはまるでルカの魔法が無意味と嘲笑うかのごとく。


 煙が晴れた瞬間、3の紫色の炎が一斉にルカの方へと飛んできた。そう、相殺出来ていなかったのである。


『これは不味いわ!万物を増やし 不可視の加護を一時的に付けよ『強制増量(コピー)』』


 ルカの魔法で100を越えるメテオバレットを作り出した。

 その上、不可視の加護により見えなくなっている。


『ミエヌ……コレハヤッカイナ』


 100を越えるメテオバレットが一斉に人魂の方へと飛んでいった。途中、紫色の炎にぶつかったのはその場で爆発して消えたが、当たらなかった90以上のメテオバレットは残っている。


『ミエヌトモ……ソンナモノワレニハキカヌ』


 20のメテオバレットが人魂に触れた瞬間、紫色の煙をあげて消えていった。


『なるほどね、これじゃダメージの1つも当てられないわ……なんてね?絶対的ダメージを与える加護を一時的に授けよ『損傷付与(ダメージエンチャット)』』


『ナルホドナ……アソビスギタバツガクダッタノダ』


 一発、二発、三発とメテオバレットが付与によりダメージが入るようになった。メテオバレットが触れる度に、人魂は苦しそうに揺れ動いている。


『ウゴケヌゾ……』


『最初の段階で隠し付与してたのに気づいてなかったの?言葉にしなくても魔法なんてもの、出来ることくらい知ってるでしょ?ちなみにこれは、ダメージを与えた者の自由を一時的に奪うってもんよ』


『マホウノウデハイイガ……ゲンカイガチカク……セイチョウハミコメナイ……』


『うるっさいわねっ!何でそんなことあんたに言われなくちゃいけないのよ!』


『ルカ!そこを退け!『白銀龍の息吹』』


 これは普通の龍の息吹とは全くの別物だ。

 龍と言っても、色々いる。弱い龍から強い龍まで、白銀龍と呼ばれる龍は、魔王ですら手を出さないような龍なのである。気性は荒くなく大人しいのだが、大切なものを奪われると暴走することがよくある種である。


 確定ダメージがあるのでダメージは与えられる。


『グフッ……ソノテイドカ……ツギハコチラノバンダ……』


 人魂の体が、薄い緑色の炎に包まれたその瞬間、さっきとは比べ物にならないほどの魔力がこの下層全体を包み込んだ。


『手加減でもしてたみたいね』


『バツハウケタ………スコシダケダガホンキヲミセテヤロウ』


『ルカ!』


 ルカを安全な範囲に突き飛ばそうとするハク。


『えっ……ハク?』


 そこには変わり果てたハクの姿があった。白銀の美しさを持つ龍の鱗の大半は剥がれ落ち、片目に傷を負い血を流している。


『やはり……生きて帰るのは無理だったか』


『いや、死なないで……ハクまで死んだら私……』


『大丈夫だ、我は死んでも上からシガミと一緒にお前を見守っててやるからな』


『一人ぼっちなんて嫌だよ……』


『ルカ……お前は一人じゃない……主人がいる……だろ?……』


『え……ハク?……ねぇ返事をして!……うぅ……ハクぅ』


『コレハオモシロイモノガミレタ……トクヲシタキブンダナ』


『何笑ってんのよ!何が面白いって言うの?あんた、性格悪すぎよ!!』


『クク……ソロソロオワラセヨウカ』


『いや、来ないで……シガミ……ハク……マエダ様………いいや!マエダ!こんな状況の第二のヒロインをあんた助けに来ないとか男として終わってるわよ!ねぇ聞いてるの!?……暴走してるから何を言っても聞こえないのよね……最後に一言、言わせて?私ね、あんたの事が好き、大好きだったの……本当に……心の底から大好きだった』


 ハクが空けた大穴の最深部から誰かが笑ったような気がした。

 次の瞬間、大穴から巨大な何かが現れた。


『ごめん、待たせたね……ルカ……君の気持ち、確かに受け取ったよ』


「マエダ……全く、あんたってやつは……最後にくるような柄じゃないでしょ……ふふ」


『君の声で意識を取り戻して来たのに、何で僕は笑われてるの……』


 そんなことを言いながら、優しい笑顔をルカに見せている。


「それよりあんた、その姿どうしたの……」


 前田の体は四倍以上、でかくなっており、体の色は赤色に変わっていた。筋肉は膨れ上がり、目の色は青に変わり、爪が鋭くなり、その大口には鋭い牙が並んでいる。


 まさにB級映画に出てくるような化け物である。耐性を持っていない人が見たら、あまりの怖さに叫びながら魂が抜け落ちることだろう。


『あ、この姿……これが言ってたペナルティかな、人間にはもう戻れない……僕はルカが思ってるやつじゃないかもしれないよ、このまま君を拐って食べちゃうかもよ』


「いいや、あんたはマエダよ。姿が変わろうと中身は変わらないわ。私の生みの親であり、私の愛する人。あんたになら拐われて、食べられても良いかもしれない……」


『なな何言ってるんだ!じゃ、じゃあ、本当に食べちゃうからな!』


「でも、今はダメよ?まだ、人魂がいるし、終わったら、ね?」


『は、はぃい!』


 今まで溜めてきた反動のせいか、積極的になっている。まるで

肉食系女子だ。


『ナニヲジャレアッテイル……』


「あ、ごめんなさいね?マエダと幸せな家庭を築くためにも人魂、あんたにはここで終わってもらうわ!」


『サテ……デキルカナ?』


 赤い炎が部屋中を包み込んだ。逃げ場がなくなってしまった。


『アイスルモノトトモニ……シニユクガイイ』


『そうはさせないよ?』


 物凄い速さで人魂の方へと走っていく。時間にして一秒、その短時間で間合いを詰めたのだ。


『ソレデドウスルトイウノダ……』


『え?ただぶん殴るだけだけど?他に何かある?』


『キョウボウナバケモノガ……ハナシガイハイケンナ』


『まず一発目『蹴り落とし』』


 巨大な化け物が大足を上げ、地面へと吸い込まれるように人魂ごと、叩きつけたのだ。


『ガハッ……ナンテイリョク……ナゼワレニキズヲオワセルコトガデキル』


『教える義務なんてねぇよ!二発目『蹴り上げ』』


 右の大足を少し浮かばせ、後ろに下げ、風を断ち切るような速度で人魂を蹴り上げる。大足は人魂にめり込み、天井へと吹き飛ばした。あまりにも攻撃が早すぎるためいまいち反応が出来ていないようである。


『ウガッ……ジユウガアルモノニ……ウラミヲモタズシテイラレルカ』


『元から自由なんてものは保証されてない、自分の手で掴むものなんだ』


『カンタンニイッテクレルナ……ワレニハソノテスラトリアゲラレタノダ』


『取り上げられた?何を言っている?』


『イワヌ……オマエハソレニアタイシナイ』


『失礼なやつだな~!三発目『高速回転回し蹴り』』


 あまりにも早すぎて、ゆっくりに見えてきてしまう。

 そして、その回転の最大までいったその瞬間、大足を前に伸ばし、人魂の元へ目にも止まらぬ速さで近づき、横から蹴りをいれた。土煙をあげながら、地面を滑っていく人魂。


『ククク……アマリニモオカシナコトデワライガデテシマウ……カツテコンナニブツリコウゲキデヤラレタコトハアッタノカ』


『確実に弱っていってるな……もう一発いっとくか……『閃光突き』』


 先程いた場所に前田はおらず、人魂の目の前まで来ていた。

 そして、突きの構えをとり、人魂に向けて放った。


『アァ……ココマデヤラレルト……サイヤクノナニハジテシマウ』


『災厄?何を言ってる?』


『ククク……シリタイカ……ムカシハイマヨリマリョクガコクテナ……ソノヘンノムラビトタチガセンシナミニツヨカッタ……』


『それでそれで?』


『ダガアルトキヲサカイニマリョクハウスクナッテシマッタ……ウワサニヨレバ……ドコカノイマイマシイカミガキケントハンダンシテクウカンニアナヲアケタソウダ……ワレハソレニニタアナヲシッテイル……ムカシカラアルオオアナヲ……』


『その大穴はどこにあるんだ?』


『ソレハイエヌ……ジブンデサガスンダナ』


『教えてはくれないか……最後に、お前はいったい何者なんだ?その普通ではあり得ないような理不尽な程の魔力、獄炎魔法の数々、それもただの獄炎魔法じゃない、即死魔法に似ていてる。付与か?特性か?』


『ゼンブハイエナイガ……コレカラシルコトニナルカモシレナイ……ワレハモトハニンゲンデアッタ……ダガツヨサ……サラナルチカラヲモトメルアマリ……アルキンキヲオカシタ……ソノセイデコノザマダ』


『禁忌、いったいお前は』


『コレガワレカラオマエニサイゴニコタエテヤレルコトダ………ワレハサイヤクナリ…………カミガミノイシニハンシタモノナリ』


『神々の意思に反した者?それはいったーー』


「後ろに下がってマエダ!『封印(シール)』」


『ルカまて!こいつにはまだ聞きたいことが!』


『コレイジョウハコタエラレヌ……セイゼイガンバルノダナ…』


 揺れ動いていた人魂の炎は今は動いていない。まるで一部分だけ時を止めたようだ。


『まぁ良いか。取りあえずダンジョンの修復と番人の配置と……やることが多すぎるよ』


『私が美味しい紅茶とクッキーを作ってあげるから頑張ってね?』


『ありがとう、嬉しいよ。ん?誰か忘れているような……』


「ぷる!ぷる!」


 ハクの後ろからひょっこり顔を出したのはスライム、そうスラムである。


『ハク……スラム、そうかお前は生きてたのか』


「ぷる!」


『忘れてなんかいないよ!覚えてたさ!あはは……』


「ぷるー?」


『そ、そうだ!新しい僕たちの快適な部屋を1つ作ろう!』


「良いわね!」


 スラムはハクに頬擦りをし、前田の元に向かった。

 ハクは二人を守って死んだ。勇敢な龍だ。


『なぁ、そこの巨人、お前さっきから念話駄々漏れだぞ?それにお前の言葉、日本語に近いような気がしてならない』


『日本語?懐かしいねその言葉……って誰だ!?』


 あまりにも自然に入ってきたので気づくのが遅れたようだ。

 前田は突然の念話を使う侵入者に驚きを隠せなかった。何故なら、この世界では聞くことなんてそうない言葉が出たからだ。日本語、そう彼の元の世界で使っていた言葉だ。


『お前は……最初に来た招かれざる客か……ちょっと紅茶でも飲んで、話をしよう』


『ゴレ、ダチョモド、大丈夫だ。やっぱりこいつは地球から来た転生者だ』


『転生なのかな?でも、一応死んでるから転生なのか……』


『初めまして、ゴレと言います』


「クワァ(どうも)」


『前田亮太です、それにしても珍しい魔物だ……インテレとは珍しい……ゲール……って、ええ!?何で部屋の番人である君がここに?……そうか、逃げ出したのか』


『部屋の番人?やっぱりそうか、野生にしては知的すぎるし、強すぎるし、何かおかしいなって思ってたんだ』


『皆、ルカの肩に手を置いてほしい』


『こうか?』


 そう言い夜空は、ルカの肩に手を乗せた。それに続くようにゴレが乗せ、ダチョモドはクチバシの先を乗せた。


『行くわよ?『瞬間移動(テレポート)』』



『…………ここは、いったい何処だ?』


『うぅ……ご主人様?』


「クワァ!(目がチカチカする)」


 周りを見渡すが誰もいないようだ。明かりも少なく暗い。

 目の前には怪しげに光る何かがある。それはまるで命の灯火のようだった。


『綺麗だな、魔石なのかこれ?にしてはでかいよな』


 怪しげに光る巨大な魔石に手を伸ばそうとしたその時ーー


『ようこそ、オラ様の我が家へ!存分と楽しんでいくが良ぃ!!』


 暗闇に怪しげに動く光が二つあられた。


 ……………………

 ……………

 ………


『さて、紅茶でも出そうか……な?あれ、客人はどうしたんだい?』


『マエダ、瞬間移動が妨害されたみたい……』


『妨害だって?誰にだ?』


『よく分からないけど、マエダの魔力に少しだけ似てたわ』


『同じ運営者?僕ら、ダンジョンマスターの魔力は独特らしいからね』


『ダンジョンは一つだけじゃないわ。ダンジョンの数だけ、そのダンジョンの運営をしている者がいるのよ』


『他のダンジョンマスターからちょっかいを出されるなんて僕達のダンジョンも凄くなったもんだね』


『何のんきなこといってんのよ!あの三人から色々話を聞くんじゃなかったの!?』


『そうだった……もう死んじゃってるかもなぁ……ここのダンジョンより強いダンジョン何てまだたくさんあるからね……せっかくの手がかりが……』


『諦めるのはまだ早いわよ?もし、妨害した本人を倒し、生き残ってさえいれば、自動でここに飛ばされるはずだから、あの三人の力を信じて、待つしかないわ』


『そうだね、今の僕らには信じて待つしか方法はないもんね』


『そうね』


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