22/22
(変わらない世界)
ぼくは三年生になった。あれから一年が過ぎたのだ。
放っておいても、時間というのは勝手に進んでいく。ぼくが適当に学校に通って、適当に勉強をして、適当に試験なんかを受けている間も、時間は我慢強いランナーのように一定の速度で走り続けていた。
そうして誰もが、否応なく同じ一年という時間を過ごしたのだ。
けれどその中で、彼女だけがあの時のままだった。
「魔女は歳をとらないのよ」
彼女はそんなことを言っていた。
「そして永遠に生き続けるの――」
正直なところ、ぼくは彼女がいなくなったことを、今でも正しく理解できていないような気がする。
彼女がいなくなったことで、世界からは何が失われたのか。
彼女がいなくなったことで、世界は何が変わったのか。
空はやっぱり、青いままだ。
これからも、ぼくは生きていくのだろうし――
これからも、世界はこんなふうに続いてくのだろう。
「…………」
ぼくはそっと、空に手をのばしてみた。
そこにはやっぱり、泣きだしたくなるような青空が広がっていた。




