一日目 水曜日
毎日更新のつもりで書きます。タイトル通り一週間書き続けます。よろしくお願いします。さらに言えば感想ください。
「和宮高校から来ました。漆島朝輝と言います。よろしくお願いします」
朝輝は、自分の名前を黒板に書き終え言った。
「じゃあ、漆島。お前の席は月代の隣だ」
先生が差した先には、窓儀は最後列の空いた席がひとつあり、隣の席には月代有華が座っていた。有華と目が合い、朝輝は笑顔を作る。有華は戸惑った表情をした後、視線をそらす。朝輝は気にすることなく机の間を通り抜け、自分の席に座る。
「よろしくね。月代さん」
机の脇に鞄を掛けながら朝輝はそう言った。しかし、有華は緊張しているのか、浮足立った様子で頷くだけだった。
休み時間になると、朝輝はクラスメイト達から質問の山を受けることになった。内容としては、「彼女いる?」とか、「前の学校どんな感じ?」とか、よくある質問ばかりだった。朝輝はふと気付いた。隣の席に座っていたはずの有華の姿が無かったのだ。朝輝を取り巻くクラスメイト達を見渡しても、いなかった。有華は、教室の何処にもいなかった。
「どうかしたの?」
朝輝が周りを見渡す様子に気づいた一人が、怪訝そうな顔で朝輝に訊ねた。
「いや、何でもないよ」
朝輝は笑って誤魔化し、何でもないように装った。
キ―ンコ―ンカ―ン……
と、そこで休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り、朝輝の周りに集まっていた生徒たちはあっという間に自分の席に着く。ガタン、という音が横でしたので見ると有華はいつの間にか教室に戻っていて、次の授業の準備をしていた。
「あれ、月代さん。何処に行ってたの?」
朝輝も教科書やノートを鞄から出しながら有華に訊ねた。
「え…。あ、その、トイレに…」
有華は恥ずかしがっているのか小さな声で答える。しかし、有華の眼は何も捉えていないように見えた。
「そう。なら、いいんだ」
「…?」
有華は、朝輝の言葉の意味が分からなかった。
昼休みになると、みんな学食や購買を食べに教室を出て行く。
「ねぇ、購買って何処にあるか知ってる?」
朝輝は、有華に購買の場所を訊ねる。
「え? あ、えっと…」
「月代さん、ちょっといいかしら?」
不意に、髪の長い女子生徒が有華を呼び止めた。
「ご、ごめんなさい…」
有華は小さく頭を下げると、女子生徒の後ろについて教室を出て行ってしまった。
「あの子は確か…。三坂さん、だっけ?」
三坂葛葉。長くてきれいな黒髪と切れ長の目を持つ少女。そして、何かを企むようなあの笑顔。
「あいつが……」
朝輝はさっきまでとは違う、じっと凝視するような剣幕で教室のドアを見つめた。
「漆島、昼飯食いに行こうぜ」
不意に声を掛けられ、朝輝はいつもの表情に戻って振り返る。声の主は、前の席の春日井霧杜だった。
「春日井か…」
「ん? どうした?」
「いや、何でもないよ。それよりさっさと昼飯行こう」
「そうだな。早くしないと美味い奴が売り切れちまうぜ」
朝輝は霧杜と共に購買へと向かった。
午後の授業が全て終わり、放課後になった。朝輝は教科書やノートを鞄にしまい終えると、横目で有華の様子を伺っていた。
「月代さん、ちょっとお話があるのだけれど…」
不意に、有華を呼んだのは葛葉だった。
「えっ…。あ、うん…」
有華は何かをためらうように言葉を濁すが、そのまま葛葉の後ろについてドアの向こうへと消えて行った。しかし朝輝は見逃さなかった。有華の瞳の奥に「怯え」の色が映ったのを。朝輝は、二人に気づかれないようにあとをつけて行くことにした。廊下を抜け、階段を上り続ける。そして、二人が来たのは屋上へ出るドアの前の空間だった。朝輝は、階段の影に隠れ声だけを聞くことにした。
「これ、どういうことかしら?」
葛葉は、有華に何か袋に入ったものを突き出す。
「え…?」
しかし、有華は状況が飲み込めないといった風に戸惑いの声を漏らす。
「私が頼んだものと違うのだけれど…」
「ご、ごめんなさい…」
「じゃあ、次のお願いはこれね」
「…っ」
葛葉は何かをありかに手渡し、くすくすと笑う。
「それじゃあ、また明日ね。月代さん」
上機嫌に声を弾ませ、葛葉は朝輝の存在に気付くことなく階段を下りていった。
「ふぅ…」
有華は小さくため息を漏らし、ゆっくりと階段を下り始める。
「あ、月代さん。どうしたの? こんなところで」
朝輝は偶然を装い、廊下から飛び出す。
「う、漆島くん!? どうしてこんなところに!?」
よほど意外だったのか、有華は目を大きく見開くほど驚いている。
「いや…。それは僕のセリフなんだけどね」
流石に、偶然を装った朝輝も苦笑せざる終えなかった。
「そうだ。月代さんって、家はどの辺なの?」
朝輝は自然な流れで話題を転換し、話しを逸らす。
「え!? えっと、新居原のほうだけど…」
「じゃあ、途中まで一緒だね。一緒に帰ろうよ」
朝輝は少々強引気味な口調で有華に訊ねる。有華は目を丸くして視線を暫く漂わせた後、少し頬赤く染めて首肯した。
朝輝は有華と二人で斜光の照らす道を並んで歩いていた。有華の方をチラリと見ると、有華と目があった。その事に気づくと、有華は目をぱっと逸らす。
「月代さん。今週の日曜日って、空いてる?」
「え…?」
朝輝の質問に、有華は激しく動揺した。朝輝の質問は、恋愛ものでよくある『好きな子をデートに誘う質問の仕方』だったからだ。
「えっと、その…」
有華は、朝輝の間接的なお誘いを受けるかどうかですごく迷った。
(どどど、どうしよう…。私、デートなんてしたことないし。でも、断るのもなんか嫌だし…。私、どうしよう…)
そんな勝手な妄想を張り巡らせてまで悩みまくっていた。
「やっぱり、勉強とかで時間ないよね…」
朝輝は少し残念そうな表情で、俯く。
「そそそ、そんなことないよ! 大丈夫、日曜日は空いてるよ! うん」
有華は慌てて口から出任せるように勢いで言いきってしまう。しかし、それは朝輝にとって計算通りの展開だった。
「そう、良かった。実は僕、街に来たばかりだからさ。街を案内してもらおうと思ったんだ」
朝輝が笑顔でそう言うと、有華は少し複雑そうな顔をする。
「そうだね。えっと、この街には意外といろいろあるんだよ」
「ふぅん」
朝輝は相槌を打ちつつ、有華の手首を見る。白い手首には傷跡のようなものはない。
「どうしたの? 漆島くん」
「え、いや、ちょっと考え事を…」
ハッと我に返ると、有華が心配そうに朝輝の顔を覗き込んでいた。朝輝はいきなりの展開にどぎまぎする。
「そう、なら良かった」
有華は安堵の笑みを浮かべ、朝輝から顔を遠ざける。
「あのさ、月代さん」
不意に、朝輝の表情からさっきまでの穏やかさが消える。
「どうしたの?」
朝輝の豹変に戸惑いながらも、平然を装って笑顔で返す。
「月代さんって、三坂さんと仲がいいの?」
「え…?」
朝輝の問いかけに、有華は酷く胸を締め付けられた。有華は下唇を噛みしめ、胸に拳を押し付ける。
「そ、そうだよ? でも、それがどうかし――――」
「本当は、苛められてるんだよね?」
一瞬、有華は心臓を握り潰されたかと思った。全身から嫌な汗が吹き出し、手が震える。
「どうして、そんなことが…」
分かるの? そう問いかけようとしたが、有華は怖くなってそれ以上口を動かせなかった。
「勿論知っているよ。君がいじめられている事だけは。だって僕は――――」
朝輝は、まるで全ての真実を見透かすように笑って言った。
「君を助ける為にいるんだから」
この作品は、僕が以前書いて挫折した作品の一つのリメイクです。本当は昨日載せるはずだったのですが…。とにかく、これから一週間毎日授業そっちのけで書きますので、なにとぞよろしくお願いします。さらに言えば感想をください。
追伸:体力的に毎日更新が無理なので、次の更新は土曜の夜です。すみません。これ書くたびに寝不足で、最近は午前中の授業ほとんど居眠りになってヤバいので…。




