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第9話 死の代行者

「どうだい? リィド。何か分かったのかい?」


 隣でライカが気にする様子を見せるが、僕は落ち着いて答えた。


「いや…… とりあえず、読んでみないと分からないな」


 僕は、少女の左腕に手をかざした。そして、小説家のスキルを発動させる。


「ちょっと失礼するよ。お嬢さん。読解リーディング!」


 僕がスキルを発動させると、少女の左腕に刻まれた文字が赤く輝いた。そして、その文字は空中に浮かんで羅列されていく。赤くルビーのように輝く文字が文章となって、空中に並んだ。


「どれどれ…… ほうほう。宿主の生気を奪うタイプの呪いのようだな……」


 僕は、空中に浮かんだ文字を眺めながらつぶやいた。今、空中に浮かんでいるのは少女にかけられた呪いの術式である。これを読み解くことで、呪いの性質や特徴が分かるのだが。その時だった。


 バシィッ!


 突然、地面に火花が散る。いつの間にか、青く輝く魔法陣が地面に描かれていた。ライカが驚いて声を上げる。


「な、何だい!? リィド! この魔法陣は?」


「ちッ…… マズイな。これはトラップだ!」


 突然、地面に現れた青く輝く魔法陣。そして、その中央に光輝く何かが現れる。それは、人間の骸骨だった。ボロ布をまとって、死神のような大きな鎌を持っている。


「くそッ! こいつは『死の代行者』だ! ジムとご両親は危ないから避難してくれ!」


 僕は、慌てて振り返ってジムとジムの両親に叫ぶ。彼らは、急いで別の部屋へと避難して行った。


「グオオオオオォォォォー!」


 地の底から響くような、おぞましい唸り声を死の代行者は上げる。思わず鳥肌が立ちそうだ。ライカが剣を抜いてかまえた。


「リィド! こいつは、いったい何なんだい!?」


「死の代行者っていう召喚モンスターだ。トラップだよ! この呪いをかけたやつは、罠を仕掛けてやがったんだ。呪いの術式を解読しようとするとモンスターが襲ってくる罠だ!」


 このタイプの罠は、あまり見た事がない。呪いをかけた人間は、よほど高度な技術を持っているに違いない。そして、性格はかなり悪いに違いない。


「グオオオォォォーッ!!」


 死の代行者が、僕目がけて大鎌を振る。ものすごいスピードだ。しかし、ライカが咄嗟に剣を振って、その攻撃を弾いた。


「サンキュー! ライカ! そのまま時間を稼いでくれ。僕は、こいつを元の魔法陣に封じ込める!」


「そんなことできるのか? 分かった。なんなら倒してしまってもいいか?」


 ライカは自信たっぷりだが、僕は首を横に振った。


「無理だ! 死の代行者は、魔法生命体なんだよ。物理攻撃は一切、効かない! 魔法か魔力を帯びた攻撃でないと倒せないぜ!」


「そうかい。そりゃあ残念だ!」


 そう言いながら、ライカは死の代行者と激しく打ち合った。大鎌と剣がぶつかり合って火花が飛び散る。


 死の代行者は、見た目は死神みたいなアンデットモンスターだが。実際には、ゴーレムと同じ魔法生命体に属する。さらに、実体がなく物理攻撃ではダメージは与えられない厄介なモンスターだ。


 僕は、死の代行者が現れた魔法陣に手をかざす。そして、魔法陣の術式をスキルで読み込んでいった。


「やっぱり…… 呪いの解読が、モンスター召喚のトリガーになってる。ならば、再封印することも可能なはずだ!」


 僕は、小説家の次なるスキル『編集ライティング』を発動した。これは、以前にライカの呪いを書き換えた時のように。魔術の術式を書き換えるスキルだ。


 空中に浮かんだ文字の羅列の間に、僕は新たな文章を書き込んでいく。


「まだか? リィド! こっちは、もう限界だ!」


 ライカが苦痛な叫びを上げる。激しい死の代行者の攻撃を何とか1人で防いでいた。しかし、徐々に押されつつある。


 相手は、疲れ知らずの魔法生命体だ。しかし、生身のライカは疲労で徐々に動きが鈍っている。


「もうちょっと待ってくれ! あと少し…… よし! これでどうだ!」


 僕は、空中に文字を書き込んだ。すると、魔法陣は一瞬強く輝くと光のうずとなって消えていく。そして、その渦に死の代行者も吸い込まれるようにして消えていった。


 目の前から脅威が去り、僕とライカは安堵のため息をついた。


「はあー。助かった。しかし、まさかこんな罠が仕掛けれているとはな……」


「それで、リィド。呪いの内容は何か分かったのかい?」


「いや、この罠のせいで完全には分からなかった」


 僕は、両手を広げて首をひねった。ライカは、眉をひそめて言った。


「それじゃあ、どうするんだい? もう一度、呪いの術式を読んでみるかい?」


「いや。それはやめた方がいい。また、さっきの『死の代行者』が現れるだけだ」


 さっきのモンスターは、倒した訳ではない。最初に出て来た魔法陣に閉じ込めただけだ。呪いの術式を読もうとすれば、また魔法陣が発動して死の代行者が現れるだろう。


「お手上げか…… これから、どうする? リィド」


「そうだな…… とにかく情報を集めよう。この呪いは人為的にかけられた可能性が高い。ということは呪いをかけた術者がいるはずだ。そいつを見つけ出した方が、話は早いな」


「なるほどね。呪いをかけた術者か……」


 僕とライカは、少女の呪いを読み解くのをいったんあきらめて。呪いをかけた術者に関する情報を集めることにした。



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