第15話 呪いの代償
2体の死の代行者と懸命に打ち合うライカ。しかし、2対1のハンデは思ったより大きく。じわじわと押されていた。
「何とか援護しないと…… しかし、僕はファイア・ウェポンの魔導書しか持っていないし」
相手が死の代行者を召喚することは予想できたので、ファイア・ウェポンの魔導書は準備していたが。一度に2体も召喚してくるのは予想外だったのだ。
僕は、シエラの方を向いて呼びかける。
「シエラ! 何か使える魔導書を持っていないか?」
「うむ。わしが持っているのは『セッ〇スしないと出られない結界』の魔導書だけなのだ!」
「ちッ! 今、そんな結界を張っても役に立た…… いや、待てよ。シエラ! その魔導書を寄こせ! 早く!」
僕は、シエラから『セッ〇スしないと出られない結界』の魔導書を奪い取った。そして、小説家のスキル読解を発動させる。
空中に『セッ〇スしないと出られない結界』の術式が羅列された。この術式は以前にも見た事があるが、出来のいい術式とはいえない。
「時間がない…… 早くしないと! 編集!」
僕は、次に小説家のスキル編集を使『セッ〇スしないと出られない結界』の魔導書の術式を書き換えていく。
魔導書の術式を書き換えるのは、僕の得意技だった。魔術の威力や効果をある程度変化させることができるのだ。もっとも内容によるので、限界はあるが。
シエラの作った『セッ〇スしないと出られない結界』の魔導書は、『セッ〇スしないと出られない』部分は作り込んであるが、それ以外の部分はほぼ未完成に近い。それを僕は、編集のスキルで書き込んでいった。
今回は、内容を書き換えるというより、加筆して完成させる作業に近かった。
「よし! できたぞ! ライカ! 一瞬でいい。死の代行者から距離を取ってくれ!」
僕は、戦っている最中のライカに後ろから呼びかける。ライカは、余裕の返事を返した。
「無茶言ってくれるね! ちょっと、待ってな! えい! そりゃあ!」
ライカは、死の代行者に斬りつけて一瞬できた隙に後ろへバックステップする。僕の指示通り、死の代行者たちから距離を取った。今がチャンスである。
「よし! シエラ! この魔導書で魔術を発動させろ! お前の好きな『セッ〇スしないと出られない結界』だ!」
「分かったのだ!」
シエラは、僕から魔導書を受け取ると魔術を発動させた。ターゲットは既に設定してある。
「グオオオォォォォォォーッ!」「グオオオォォォォォォーッ!」
小さな結界に2体の死の代行者を閉じ込めた。そう。死の代行者を対象として『セッ〇スしないと出られない結界』を張ったのだ。
「よし! どうだ? そこから出たかったらセッ〇スでもしてみろ! まあ、無理だろうがな!」
僕は、ガッツポーズを決める。もちろん、魔法生命体である死の代行者にセッ〇スなどという概念は存在しない。彼らは、永久に結界から出ることはないだろう。
「助かったよ! リィド。さすがに2体同時に相手にするのはキツかったわ」
額の汗を拭い、安堵の息をつくライカ。さて、残る敵は呪術使いのドロシーだけである。僕は、ドロシーを指さして言い放った。
「さあ、ドロシー! 無駄な抵抗はやめて、少女たちにかけた呪いを解くんだ! 今なら、まだお前の命は助かるぜ?」
しかし、ドロシーは不敵な笑みを浮かべる。
「はぁ? 馬鹿言ってんじゃないよ! こっちは、まだ魔導書もあるし魔力もたっぷり残ってるのさ!」
そう言いながら、懐から魔導書を何枚か取り出した。おそらく、死の代行者を召喚する魔導書だろう。まだ予備を持っていたようだ。
僕は、慌ててドロシーに呼びかける。
「やめろッ! 今なら、まだ間に合うんだッ! 呪いを解け! そうすれば助かる!」
「あはははは! 嫌だね! さあ、出でよ死の代行…… うッ!?」
死の代行者を呼び出そうとしたドロシーの動きが止まる。胸を押さえて前かがみになり、そのまま動かなくなった。ドロシーの顔から汗が滴り落ちる。
「な、何だ!? こ、これは…… 力が…… 力が吸い取られる…… ごほッ!」
ドロシーは苦悶の表情を浮かべながら僕を見た。僕は、冷たい声で言った。
「だから言ったろう? さっき呪いを解けば、まだ助かるってな。まあ、人を呪わば穴二つって言うしな。あんたは、もう終わりだよ。ドロシーさん」
ドロシーは、悔しそうに歯を食いしばる。
「き、貴様ッ! いったい何をした!? なぜ、私の力が……」
僕は「やれやれ」といった感じに両手を広げて答えた。
「村の少女たちにかけられた呪いの術式をね。ちょっと書き換えたのさ。呪いの内容は、少女たちから生気を吸い取るものだった。それを逆流させたのさ。一定時間が経つとエネルギーは逆流する。お前から少女たちへとね……」
「そ、そんな馬鹿な……」
ドロシーの顔や手がしわだらけになっていく。急速に老化現象が進んでいた。村の少女たちから奪った生命エネルギーが体から抜けているのが分かる。
結果、白髪でよぼよぼの老婆となったドロシーが残された。いや、これが彼女の本来の姿なのだろう。他人から生気を奪い取って若さを保っていたのだ。
ドロシーは、力なく地面へとゆっくり倒れる。もはや息をしているだけでも苦しそうだ。
僕は、ドロシーの前へと立つと彼女を見下ろして言った。
「さあ、聞かせてもらうぜ! ドロシー! 古代ベラリス文字を左腕に刻む呪術についてな……」
呪いをかけられた少女たちの左腕には、呪文がタトゥーのように刻まれていた。そして、ライカの左腕にも同じように呪文が刻まれている。
今こそ、その謎を解き明かす時だ。




