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第13話 死の代行者、再び

「グオオオォォォーッ!」


 地の底から響くような、亡者のごとき唸り声。魔法陣の中央から、死神のような姿をした『死の代行者』が現れる。ボロのローブを身に纏い、大きな鎌を携えている。


 見た目は、アンデッドモンスターそのものだが。死の代行者は、ゴーレムなどと同じ魔法生命体である。しかし、物理攻撃は一切効かないという嫌な特性を持っていた。


「どうするんだい? リィド! こいつに剣は効かないんだろ?」


「ああ。任せとけって!」


 不安そうな声を上げるライカに答えると。僕は、シエラの方を振り向いた。


「よし! お前の出番だぞ! シエラ! 魔術の力を見せてくれ!」


「うむ! 任せるのだ! わしの『セッ〇スしないと出られない結界』の力を今こそ……」


「いや、それじゃなくて! この魔導書に書かれた魔術を使ってくれ!」


 僕は、1枚の魔導書をシエラに手渡した。若干、不服そうな顔をしながらもシエラは、その魔導書を読み上げた。


「炎の精霊よ! この者の剣に火の力を与えよ! ファイア・ウェポン!」


 シエラが呪文を唱えると、ライカの持っている剣の刀身が炎に包まれていく。


「うわッ! 何だこれ? 剣が…… 燃えている?」


 突然の出来事に、驚くライカ。僕は、落ち着いた声でライカに言った。


「これは、ファイア・ウェポンという魔法の炎で武器を強化する魔術さ。ライカ! お前の剣は今、魔法の炎で包まれている。この剣なら死の代行者にダメージを与えられるぜ!」


 そう。物理攻撃の一切効かない死の代行者。倒すには、魔法で攻撃するか、魔力を帯びた武器で攻撃するしかない。そのために、ライカの剣をシエラの魔法で強化したのだ。


「そういうことかい! それなら任せときな! 今度は、バラバラにしてやるよ! この骸骨野郎ッ!」


 炎を帯びた剣を振りかざし、ライカは死の代行者に向かって行った。そして、剣を振る。死の代行者も大鎌を振るい、剣と激しくぶつかり合った。


 死の代行者のスピードはかなりのものだ。素早い動きで鎌を振って攻撃してくる。しかし、ライカのスピードがわずかにそれを上回っていた。


「おらぁッ! これで、どうだぁーッ!」


 ライカが叫びながら激しく剣を振るう。死の代行者の大鎌を弾いた。そして、がら空きになった死の代行者の胴体に剣で斬りつける。


 一閃! 炎が舞い上がり、死の代行者の体は激しい炎に包まれた。


「グオオオォォォォォォーッ!」


 断末魔のような叫びを上げる死の代行者。やがて、崩れ落ちるように膝をつき。炎と共に消えていく。


「やったぜ! 倒したぞ!」


 ライカは、ガッツポーズする。死の代行者は、高レベルの魔法生命体だ。魔術の加護を受けたとはいえ、1人で倒すとは大したものである。


「よし! これで邪魔者はいなくなったな。呪いの術式をゆっくり読ませてもらうとしよう……」


 僕は、空中に羅列された文章を読み解いていく。前回は、死の代行者に邪魔されて全部読むことはできなかったのだ。


「どうだい? リィド。何か分かったかい?」


 横から僕の顔を覗き込むライカ。僕は、小さく頷いた。


「ああ。全て分かったよ……」


 空中に浮かんだ古代ベラリス文字の文章が、全てを物語っていたのだ。



 ☆  ☆  ☆



 村のはずれに一軒の家があった。村にある家より立派で豪華な家だ。まあ、屋敷と呼べるほどではないが。


 ジムが、玄関の扉をノックする。しばらくすると、扉が開いて中から身なりの良い初老の紳士が現れた。ナイスミドルといった感じの50代くらいの男性だ。


「やあ。ジムじゃないか。どうしたんだい? こんな時間に……」


「こんばんは。ベネットさん。夜分にすみません。ベネットさんに会っていただきたい人がいるんです」


 周囲は夜なので真っ暗だ。ジムがそう答えて、道を開けると。僕たちは、前に歩み出た。


「ん? こちらの方々は……?」


 ベネット氏は、不審そうな目で僕たちを見る。まあ、無理もない。初対面だからな。


「初めまして、ベネットさん。僕の名前は、リィド。リィド・ライベール。こっちは女戦士のライカ。こっちは魔術師のシエラです」


 僕は丁寧に自己紹介をして、両隣りにいるライカとシエラも紹介した。それを聞いてベネットも丁寧にお辞儀をする。


「ああ、これはどうも。私は、モーガン・ベネットといいます。街で商人をしておりまして、この村には娘の療養のために訪れています」


「娘さんですか? 確か、ドロシーさんでしたよね?」


 僕は、ベネットに尋ねた。娘のドロシーは、昼間に出会っている。品の良いお嬢様みたいな娘だった。ベネット氏は、小さく頷いた。


「ええ。そうです。ドロシーは、私の娘です。小さい頃から病弱でして、こうして環境の良い場所で静養させているのです」


「環境の良い場所ですか…… なるほどね。全部、娘さんのためだったんですね。この村の少女たちを呪いで病気にしたのも」


 僕がそう言うと、ベネット氏は目を丸くした。動揺した様子を見せる。


「ジムの妹にかけられた呪いの術式を解読しました。他の少女たちのもです。呪いは、少女たちから生気を吸い取るためのものだった。そして、ベネットさん。少女たちから吸い取った生命のエネルギーは、全てこの家に流れ込むようになっているんです! つまり、少女たちに呪いをかけたのは…… ベネットさん! あなただ!」


 僕は、ベネット氏を指さした。ベネット氏は「ぐぐぐ……」と口元を歪ませている。額には、ダラダラと汗を流していた。もはや決定的な状況だ。



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