旅の途中で学ぶこと
この商人キャラバンは実に不思議だ。
子供というものは、本来ならばうるさい。
特に自分より格下のものに対しては、傲慢さが現れる。
前世でも集団いじめとかよくあった。集団いじめという言葉の無視も一つのいじめだ。そこにいないものとされるのは、どんなに辛いことか。子供はある意味残酷な生き物で、大人によっていきなり豹変する。
キャラバンの男の子たちは、いつも勉強しているか、ウィルに剣の稽古をつけてもらうか、おとなしく読書をしているか。話しかけては来なくても、マミの事情を知っているらしく、会話の中には混ぜてくれる。それがたわいのない話であっても、勉強のことであっても変わらない。一緒にいても嫌がらないし、いつも紳士的に接してくれる。とても居心地がよかった。
村ではしゃべらないマミを子供たちは嫌っていた。大人たちはマミに対して、気をつかっていたと思うが、子供たちはそれが気に食わないのか、いつも無視するか、しゃべれないのをいいことに悪口を散々投げつけてきた。罵詈雑言を浴びせられても、マミには誰にも言うことができない。それで憂さ晴らしされてもなあと毎回思っていたのだが。
今世のマミは実はしゃべることができない。ウィルによるとしゃべれないのではなくて、魔法か何かで話せないように封じられているらしい。その時は何それチート属性あるんかいと思わず突っ込みたくなったが、それはマミ自身が大きくなり、自分の中の何かの力をコントロールできるようになれば、自然に解除される類のものらしい。つまり、チート属性が使えるようになるまではごくごく普通の村人Aのままなのだ。異世界転生お約束のチート属性がマミにもあったというのうれしいが、使えなければ意味がない。なので、しゃべれないゆえに誰もがベルという。彼女は未だにベルという名前になじみがない。
今度、きちんと言葉を覚えたら、真っ先にウィルに訂正しようと思っている。話すことはできなくても書くことができれば、意思の疎通は測れるはずだ。
それにしても、自分の中の何かの力って、これは異世界転生のお約束のチート属性かと喜んだものの、今はまだ相変わらずしゃべることができないし、それが何なのかもわからなければ宝の持ち腐れというものだ。非常に残念すぎる設定である。
とりあえず、せっかく勉強の機会を得られたのだからとマミはいつも黙々と一人勉強に励んでいた。
不思議だなあと思うのは、なぜ男の子たちがウィルから剣の修業を受けているのだろうかと思う時だ。ウィルはかなり強い。ドラゴンだから当たり前だと思うが、冒険者としてのレベルもかなり高位らしいから、それもありなのかもしれない。戦う商人というと両親が夢中でやっていた往年の有名な某ゲームのあの太った商人を思い出す。商人も多少戦うことができるのはこの世界では当たり前のことなのかもしれない。なんといっても、某ファンタジーゲームと同じく、魔法と剣の世界にドラゴンまでいるのだから。
私もついでに剣を覚えたいと思ってみたが、今は村人Aにすぎないマミには重い剣を持つ手が震え、これは無理だと早々に諦めた。人にはできることとできないことがある。そもそも、幼少時の育ち盛りだった頃に食料が少なすぎて、いつもおなかを空かせていたのだから、ウィルと過ごし三食ごはんがきちんと食べらえるようになっていても相変わらず体力がない上に、筋力すらつかない。
「まずは太れ」
ウィルにそれを言われたときは恐怖で顔が引きつったものだ。元は生贄なんだぞ。つまり、今のマミは鶏ガラのスープくらいの価値しかないが、太って丸々となったらおいしくウィルに食べられるということだろうかと怖気づいた。脳裏に浮かんだのは有名なおとぎ話の「お○子の家」の話だったことは無理がないと言えよう。あれも、魔女が捕まえた子供を食べるには、細すぎるので美味しくなるまで太らせて食べようとした話だった。魔女は目が見えなかったから、頭の良い兄はいつも食べた鳥の骨を差し出し、自分が太ったと気付かせないようにし、最後に魔女をやっつけて兄妹は無事に逃げることができたが、マミには無理だ。ウィルには絶対に勝てない。
そんなマミの気持ちと裏腹に、ウィルはマミの頭が撫でながら、ぽつんと呟いた。
「やはり、女はある程度太っていた方がいいよな。出るところはきちんと出ている体型の方が好みだ」
その呟きに呆然とした気持ちになったのも仕方がないと言えよう。その時は「源○物語か?」とまた突っ込みたくなった。この時は平安時代のプレイボーイの元祖が自分好みの女に育てて、無理やり妻にした少女の話と前世の母親がはまっていた「プリ○セスメ○カー」という往年の人気のゲームで自分好みの娘を育て最終目標は自分の妻にする話だったとそこまで思い出したよ。
とりあえずは生贄にされても食べる気はなかったことにホッとはしたが、ここでまた問題が起きた。つまり、ウィルはマミをペットいや愛人にするつもりなのだと。食べられずにすむことにはホッとしたが、将来がドラゴンの愛人になる運命なんてやめてほしい。できれば、前世では結婚できずに亡くなったから、せめて愛する人と幸福な結婚がしたかったのに。
決めた。いつか、ウィルの元から逃げ出そう。それには知識とお金が必要だ。ドラゴンから逃げるためにはどうすればいいのかとこのところマミはいつも考えている。
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つたない文章ですみません