英雄の魔法
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「ディガウト!!!」
そう叫んだ瞬間、僕の体から虹色の光が溢れ出て、全身を包み込む。
その光が消えたとき、僕の手足は銀色のガントレットに包まれていた。
夕陽を照り返してそれは赤く輝き、まるで夕陽をその身にまとったかのようだった。
「・・・・・・・英雄の・・・魔法・・・。」
僕を見たティアが、その名を呟いた。
ディガウト。魔法を使えない僕が、世界から唯一使うことを許された魔法。
使用者の心の在り方、意思の力を魔力を用いて具現化し、使用者専用の武具を生み出す魔法である。ディガウトは一般の魔法と違い、魔力ではなく心の力を消費する。心の力とは意志の力。心の奥底から湧き出る自分の信念や願いへの想いの強さを示す。
そしてその特性として周囲から吸収した魔力を身体ではなく心を通して放出する。故に他の魔法を使えないアルクでもディガウトだけは使えるのだ。魔力の貴重な戦時下において英雄が好んで使った事から、英雄の魔法とも呼ばれている。
「行くよ。」
そう言うやいなや、アルクはギリザドへと駆け出した。
アルクがその射程に入った途端に、ギリザドはその爪を振り下ろした。
「アルク!!」
土砂が弾け飛び、彼がいた辺りは土煙が舞い上がって何も見えなくなる。
土煙が晴れると地面はえぐれて、ギリザドの爪痕がまざまざと残っていた。
そこにはアルクの姿は無かった。
「そんな・・・。アルク・・・。」
目の前の光景にティアの白い顔が青くなる。
だが、
「こっちだ。」
その更に向こう側。声が聞こえたのは、丁度ギリザドの真後ろから。
「!?」
(いつの間にあんなところへ!?)
空振ったことに苛立ったのか、ギリザドはその声を聞いた瞬間に振り返り再び爪を振り下ろす。
すると再びその爪は空を切り、アルクはギリザドの真横に立っている。
「遅いね。」
その顔には獰猛な笑みが張り付いている。
「速い!!」
注意して見ていたお陰で、ティアは何とかアルクを捉えることができた。
(あれは瞬間移動?)
地面をよく見ると、所々が小さく抉れて焦げている。まるでそこで小さな爆発が起きたようにも見える。
業を煮やしたギリザドは、今度は尻尾を使ってアルクの周囲ごとなぎ払った。
「っ!!」
アルクは空へと飛び退いてそれを避ける。
その動きを予想していたギリザドは空中に居るアルクに向かって酸を吐き出した。
「危ない!!」
空に浮いた状態では、アルクに避けるすべは無い。
「大丈夫さ。」
そう言うとアルクは両手を横にかざした。そして次の瞬間には手の先で爆発が起き、アルクの体は弾かれたように横へと移動して酸を避けた。
「あれは・・・爆発の反動を利用して・・・?」
(・・いける。ギリザドは僕の速さに対応できてない。)
上手くいくか不安だったが、数度の攻防を通じて僕は手応えを感じていた。
ディガウトによって生み出した武具は本人の心の在り方を反映した特殊機能を持つ。
僕のディガウトの武具の銘は『尽きぬ憧憬』、その特殊機能の一つはこれだ。
特殊機能 超爆機動
両手足のガントレットから生じる爆発の反動を利用し、天地を自在に駆け回る事が出来る。
アルクは、一年前にこの魔法を習得して以来、ずっとこの超高速移動の修行を続けてきた。
まだまだ動きはぎこちないが、十分実用の範囲内だ。
敵の動きを超爆機動によって避け続けていると、次第にガントレットが赤熱し、その周囲が高熱で歪んできた。
(準備は出来た。)
これがもう一つの特殊機能、蓄積情熱。超爆機動を繰り返すことにより、『尽きぬ憧憬』にその熱を蓄え続ける事が出来る。
「今度はこっちの番だ。」
ギリザドの爪を掻い潜り、一息でその腹へと接近する。
両足を地につけ、その手を爆発とともに一層強く打ち込む。
赤熱したガントレットは周囲の魔力と反応して炎を纏い、踏み抜いた両足の下にあった地面は爆発の反動でひび割れて、その衝撃は全て余すことなくギリザドへと打ち込まれる。
「爆炎掌!!」
ズシン!
大地は揺れ、その掌から衝撃を打ち込まれたギリザドの巨体は弾き飛ばされた。
しかし・・・。
「ダメ!!」
弾き飛ばされたギリザドは、少しも怯むことなく、アルクを噛み千切ろうとその顎を開いて飛びかかって来た。
「効いて、いない!?」
驚きで反応が遅れたアルクは回避が遅れ、足の先を牙にかすってバランスを崩し近くの木に体を叩きつけた。
「がっは」
受身を取りそこね、そのまま地面へと横たわる。
「アルク!!」
ギリザドはアルクを目の端で捉えるとすぐさま尻尾でなぎ払い、追い討ちをかける。
「畜生!」
アルクは叫び、両手を地につけて無理やり空へと飛んでそれを避けた。
「これなら、どうだ!!」
アルクはギリザドの死角へと回り込み、一息に更に空へと飛び上がった。
そこから脳天目掛けて、超爆機動で加速しながら落下し反動を生かした回転回し蹴りを叩き込む。
「爆炎脚!!」
ズガン!
炎を纏った蹴りを受けたギリザドは地面へとその頭をめり込ませるが、すぐに爪で頭の上のアルクを狙ってきた。アルクは振り下ろした足先で爆発を起こして回避し、バク宙しながら地面へと着地する。
「こいつには衝撃が効かないのか!?」
「ギリザドの体は、その衝撃をすべて吸収してしまう。打撃技は効かないの。」
「・・・それなら!!」
アルクはすれ違いざまに、父からもらった短剣でギリザドの背中に切りつけた。
ギャリリン!!
激しい火花が散るが、ギリザドの鱗には傷一つ付かず、短剣の刃は弾かれただけだった。
「・・・硬い!!」
状況は、厳しかった。
次の投稿は明日です。感想お待ちしています。




