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英雄に憧れて  作者: 三毛実
第1章 英雄の旅立ち 
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僕の夢

以前投稿したものを書き直して投稿しなおしています。

こんにちは。僕の名前はアルク。15歳。

僕の生まれた村のしきたりでは、15歳で成人と見なされ、その後の人生を独立して生きることを許される。

今日は村をあげての成人式。

村人総出で飾りつけた台座の上に今年で成人を迎えた人達が並んでいる。一人一言、自分の夢と抱負を発表している。

「俺は農家になる。」

「私はパン屋になります。」

「ボクは教師を目指します。」

皆が得意気に自分の夢を発表していき、ついに僕の番が来た。

男としては少し低めな身長に、ピンピンと元気に跳ねている黒い髪。その体はまだ少し幼い見た目を裏切るように引き締まっていて、所々に生傷が目立っている。その肌は日に焼けて浅黒く、そして何より皆の目を引くのはその特徴的な赤い瞳。

そんな僕に少しざわついた皆の視線が集まるが気にしない。少し遠くで両親が緊張しながら見ている。僕は笑顔で、皆を見返して夢を宣言した。

「僕は英雄になります。」


次の日、僕は朝早くに起きて、身支度をした。

「それじゃ、行って来ます。」

「アルク!」

僕が玄関を出ようとすると、母が飛び出してきて僕の手を掴んだ。

「本当に、行くのかい?」

そういって見上げる顔は本当に心配そうだ。

「うん、行くよ。」

僕は迷わずに答える。

「英雄なんて、危ないよ。」

僕の返事を聞いても、母はまだ納得できないようだ。

「まだ言っているのかい。」

見かねた父がやってきた。

「大丈夫。アルクなら立派にやっていけるよ。」

父はそういって母を宥めている。

「だってあなた、アルクは普通の魔法が使えないのよ?」


魔法。この世界の全ては、魔法によって支えられているといっても過言ではない。

人は魔法によって火を起こし、水を得る。人は生まれると成長の過程で言語と魔法を自然に習得していき、6歳になる頃には誰でも基本魔法を使えるようになる。

しかし、僕は6歳の誕生日を迎えても魔法が使えなかった。

人が魔法を行使する過程は大きく2つに分けられる。

1.体の周囲の魔力を体内に吸収すること。

2.吸収した魔力を身体というフィルターを通して放出すること。

人は訓練を重ねる事により、一度に吸収・放出出来る魔力量を増加させることが出来る。

僕は1の過程、つまり魔力を吸収出来ても、2の過程、つまり身体を通して放出する事が出来ない特異体質だった。その為に僕は魔法を使えないのだ。

お医者様によると、僕のような特異体質は極めて稀で、数百年に1人、つまりは現代において僕ひとりだけしかいないということだ。

医学用語では『魔力不放出者ノーリス』と言うらしい。

「アルクを、信じてあげなさい。」

その言葉で、やっと母さんは渋々ながら、僕の手を離してくれた。

「アルク。」

「何?父さん」

「これを持って行きなさい。」

そう言って父は布に包んだ短剣を持たせてくれた。

「これは?」

「この日の為に、知り合いの武器職人に頼んで打ってもらったんだ。お前が扱っても壊れないよう、頑丈に打ってもらった特別製だ。」

「そうなんだ。大事にするね。」

「おう。達者でな。」

母はそれでもやはり心配そうにしていたが、最後には笑って送り出してくれた。

「「気をつけて行ってらっしゃい」」

「父さんも母さんもありがとう。行って来ます。」

そして僕は今、王都を目指して森の中を歩いていた。


英雄と呼ばれるようになる為には戦場にて武勲を立てる事が通例であった。過去形なのは、現在の王が各国間で起きていた戦争の全てに勝利し、世界を統一して以来戦争は起きていない為だ。よって従来の戦場にて武勲を立てるという方法は非現実的なものとなった。そのこと自体には不満はない。戦争の話は村の長老が良く話していた。僕達はその話を聞く度に今の平和な世界に生まれて良かったと心から感謝していた。ちなみにその王自身が僕の読んでいた物語の主人公のモデルになった人物でもあり、彼はその武勲を讃えて統一王と呼ばれている。

話を戻そう。

では現在、英雄になる為にはどうすればいいのか。

その答えが冒険者である。


この世界は魔力というもので満たされている。

魔力とは力の根源だ。この世の生物は大気中の魔力を取り込むことにより少なからず体内に一定量の魔力を持っており、それは生命エネルギーとしての働きを持つ。

人は魔法を使うことによってこの魔力を物質的事象へと変化させ、それによって火を起こしたり水を得たりと生活の様々な場面で活用している。この世界において、魔法を使う為の魔力は生きていく上で決して欠かせないものだ。

しかし同時に、魔力はある危険性を秘めている。

魔力は、一つ所にとどまり続けるとやがて形をなし、ある生き物を生み出す。

それが魔物だ。

魔物は動物と異なる姿形、そして特異な形質を持って生まれてくる。なんでも溶かす酸を吐いたり、頭を落としても生き続けたりと様々だ。

しかし、魔物は滅多に生まれることなど無く、生まれてもその命は脆弱で、魔物によっては子供の振るう木刀でも十分に対処出来た。故に過去の世界では魔物は恐れるものでは無く、寧ろ珍獣の扱いを受けていた。


そんな、本来なら無害であったはずの魔物の被害が、戦争が終わってから暫くして増え始めた。

その被害は辺境の地で顕著に見られ、時間が経っても被害が収まることは無かった。

これらの原因は全て、戦争の終結にある。

なぜか?

魔物は一定量の魔力が集まれば生まれるが、その下限はあっても上限は無い。

そしてその魔力量が多ければ多いほど、より強い魔物として生まれることが調査の結果分かったのである。

戦時下に置いては戦争の為に世界の各地で魔法が昼も夜も問わずに使われ続けていた為に魔力が飽和することはあり得ず、その為に魔物は生まれても人の命を脅かすなどあり得なかった。

戦争が終わって始めて魔物は強大化した訳だ。戦争のおかげで魔物の被害が少なかったとは何とも皮肉である。


さて、その魔物の被害を抑える為に生まれた存在が冒険者である。

魔物は人の住まない辺境の地、所謂魔境にて生まれる。

それはつまり、人の中心地である都市から離れるということ。

辺境の村を守る為に王都から騎士が派遣されてはいるが、出来るのは村の防衛までである。もっと沢山の騎士を派遣すれば魔物の親玉を打てるかもしれないが、この世界は広く、人は少ない。一つの村に戦力を集中しては、他の多くの村が危険に晒される。何より、名誉を求めて騎士になった者の多くは辺境の地に自ら進んで行きたいと思わない。村の防衛は騎士の義務となっているが、若いうちの数年であり、その期間を過ぎると次の者と交代で王都に帰っていく。

そこで冒険者の出番である。

冒険者とはギルドに所属している魔物討伐の専門家の事を指す。

ギルドとは数名の高名な者たちによって国の支援を受けて設立された機関であり、その活動資金は国や辺境の村から支払われている。クエストと呼ばれる依頼を受けて各地の魔境へと派遣される。そこのターゲットを倒す事によりクエストは成功となり、その報酬で生計を立てる。

冒険者は過酷な職業だ。その死亡率は高く、冒険者になって数年で死を迎える者も多い。

しかしその報酬は危険に見合うものであり、何より冒険者は名誉を得られる。


(英雄になる為にはまずは冒険者にならないと。)


冒険者になる為には冒険者ギルドに登録する必要がある為、ギルドのある王都を目指しているわけだ。


「ああ、焦れったい!」

僕は村を出て早くも我慢できずにそわそわしていた。



王都まで、徒歩で約一年。

「そんなに待っていられないよ!」

僕はある呪文を唱えて走り出した。


次の投稿は明日です。

感想お待ちしています。

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