望月輝夜は地球にさよならを言う 前編
カップラーメンを食べながら、リモコンでテレビをつけた。チャンネルを何度か変えて、濃い化粧をした女の人がマイクを持ってインタビューをしている番組で手を止めた。
カップラーメンを啜りながら、画面に映る女の人をボーッと見つめる。バッサバサした睫毛に、何度も染められたであろうパサついた髪。
もったいなあ。女は顔が命やろ? あ、自分では可愛いと思ってるかもしれんけど。
結構失礼なことを思いながら、のびすぎるチーズを箸でちぎる。こうやって何もせずにいて、いいのだろうか。いや、逆に何をすれば良い?
私は窓の外の夜空に目を向ける。地球の光に照らされて、星が見えにくい。ただ広がる真っ暗闇。でもそこには、一際明るく輝く美しい星がある。
あんなに美しい星に、本当に行けるのなら、私は嬉しい。そこでの生活がどのようになるのかは知らないけど。
でも、「姫」ってつけられるくらいなんやからそれなりにいい待遇やんな?
もうすぐで満月になる、少し不恰好な形をした衛星。私は立ち上がってベランダに出た。
まるで暗闇に差し込んだ一筋の光のような、そんな美しさがある。いつも見ているのに何だか今日は、いつもと違うものを見ているような感覚だった。
「別に、行ってもええか……ほんまに行けるんやったら、やけどな」
私はぽつりと言葉をこぼした。その時、玄関の方からガチャリと音がして、誰かが入ってくる音がした。この瞬間が、大好きだ。
「ただいま〜!」
「おかえり、母さん。今日は早いんやな」
「そ! 仕事早く終わってんよ」
母さんはビニール袋を持ち上げて、ニヤリと口に弧を描いた。悪いことを企んでいる時の顔だ。そう思った矢先に、母が「悪いことしよっか」と、さらに笑顔を深めた。
「悪いことって、これ?」
「ええやろ、たまには」
母さんが右手に持っていた袋からお菓子をたくさん取り出しては机に並べ始めた。
懐かし……最後にやったんは確か、私がまだ小学生やった頃やな、知らんけど。
「あ、これ懐かしいなあ」
「そうやろ? 昔よく食べたっけ」
私は熊のキャラクターが笑っているパッケージのお菓子を指差した。中身はたまごボーロだ。いかにも子供が好きそうで、でも私も昔から大好きだった。
私がお菓子の袋を開けていると、母さんは台所の冷蔵庫の中から缶ビールと缶ジュースを持ってきた。
プシュッと缶が開く音が二本分響くと、泡が溢れ出してきた。私は慌てて机に置くと、その様子を見た母さんが腹を抱えて笑った。
「母さん、振ったやろ!?」
「いやでも二回も引っかかるとは思わんやろ!」
そうだった。前の「悪いこと」も溢れさせたのだ。いや、溢れさせられた、が正しい。
「ほんま悪趣味やな」
「じゃあ輝夜は母さんに似たんやな」
「どういう意味やねん」
「そのまんまの意味やで」
仲の良い親子、ですね。
楽しそうだなあ。
私もお菓子、食べてえ。




