他種族の話を聞きました
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「とりあえず、シルバーフェンリルに関してはわからない事も多いんだけど、とにかくすごくているだけで国どころか世界に何かしら影響を与えるだろうって事は覚えていて。それから、レオちゃんもそうだけど、シルバーフェンリルが動くという事は国が一つ二つ吹き飛んでもおかしくないし、やろうと思えば人類滅亡とか、文明破壊とかもできるだろうからね」
「……」
さすがに言い過ぎではないかな? と一瞬思ったけど、実際にレオとフェンリルの模擬戦を見たり、ユートさん達の話を聞くに、不可能ではないのかもしれないと思うようになった。
まぁ、人懐っこくて子供好きなレオが、そんな事をするとは思えないけど。
ただこのタイミングでユートさんがこういう話をしたという事は、俺に何かがあればレオが起こったりする可能性が高いから念の為という意味合いが強いのだと気付いた。
一応、今後セイクラム聖王国を始めとして、国でも個人でも変なちょっかいをかけて来る相手はユートさんやこの国、ヴィリウステアラだっけか、それが牽制して関わらないようにはしてくれると約束はしてくれている。
だから本当に念の為って事なんだろう。
どうしてもそれらをすり抜けて来るとか、そういう事もあり得ないとは言えないしな。
「さて、国内の事やシルバーフェンリルの事は教えたし、細かい事は追々ね。何かあればその都度、僕やハルト達が教えられるだろうし。と……次は周辺国かな。細かい事は追々ね」
そう言って、ヴィリウステアラと隣接している国々に関して教えてくれる。
情報量が多くて全部覚えられるか心配だけど、とりあえず今回で全て知識として備えるようにとかではなく、まず詰め込んでおこうという事らしい。
詰め込み教育は良くないよ、とか反発心が出る事もなく、俺にとって今後必要になるだろうから、そうしてくれているんだろうし、どうなのかなと思う事はあれどユートさんの事は信頼しているから講義を続けてもらう。
もちろん、エッケンハルトさんやクレアといった公爵家の人達も、強く信頼している。
「まず、我がヴィリウステアラ王国が隣接している国は――」
周辺国に関して、ヴィリウステアラ王国が隣接しているのは全部で五か国。
セイクラム聖王国とは既にある程度話を聞いていたので、簡単に済ませて、残り四か国の話を聞く。
とはいっても、隣接する国全てと昔はともかく現在は友好的な関係を気付けており、交流も盛んで人や物資の行き来も活発だとか。
目の上のタンコブというか、ちょっかいをかけてきて水面下では険悪気味だったのがセイクラム聖王国だけだったという。
あと、獣人の国ビステライカの事もある程度聞いたけど、リーザに関する事はともかく鉄の掟を重要視して場合によっては法より優先する事があるため、それを軽視しないようにという注意が主だった。
鉄の掟の内容はまぁ、以前も考えたように子供のお使いでの注意かな? と思う部分はあったりもしたけど、とりあえずいくら親しく接するようになったからといって、尻尾や耳を迂闊に触ろうとしないという事だ……過去にそれで戦争に発展しているくらいだからな。
リーザやデリアさんのように、本人の許可があれば問題ないらしいけど、他の獣人と出会った時は気を付けよう。
……まぁ、ユートさん曰く、レオと一緒にいる俺は獣人にとってあらゆる例外が適応されるとかなんとか、ちょっと気になる事も聞いたけども。
「さて、周辺国の事はここまでとして、次は種族とその国家に関してだね」
「種族……リーザみたいな獣人とか、フェヤリネッテのような妖精がいるけど、やっぱり他にも?」
人間以外の種族、獣人とか妖精がいるんなら他の種族がいたっておかしくない。
そこに関しては、割と興味が強いな。
「もちろん。人間もそうだけど、一部が世界的に見て圧倒的に数が多い種族は国家を築いてるよ。妖精は隠れ住むようにしているから、国というより小さな村だし、数もあんまり多くないみたいだけどね。タクミ君が興味を持ちそうな、ドワーフとかエルフもいるよ」
「ドワーフとエルフ……」
日本で生まれ育ったなら多くの人が考えるだろう、ドワーフとエルフ。
ファンタジーとしての種族で特に有名と言える二つの種族だな。
もちろん地球にはいなかったが、多くの物語に出て来る種族であり、特徴も多少の差異はあれど近い事が多い。
「まずドワーフだけど、国と種族の特徴は――」
ドワーフはヴィリウステアラとは隣接しておらず、国の南西、別の国を三つ挟んだ先の山脈に国を構えているらしい。
特徴としては鍛冶を得意とし、国民総鍛冶職人と言える程だとか。
身長などは人間よりほんの少し小さいくらいで、イメージとは少し違うが、鍛冶に関しては想像通りみたいだ。
かなり距離があるし、一度会ってみたいとは思うけど難しそうだな……と思っていたら、なんとこの国にもドワーフがいるらしい。
しかも刀の制作に関わっていて、ユートさんの所領にいるとか。
まぁ鍛冶場にこもって、外に出ないから領外どころか近くの街や村で見る事もほぼないらしいけど。
それから、酒好きのイメージがあるけどそんな事は一切なく、個人としてある程度お酒が好きとかはあっても、種族として特別に好きだとかはないらしい。
そこはイメージとは違うけど、ユートさん曰く、ギフトがお酒と関わりがある事から何か世界的な理とか、そういうのが関わっているのかもしれない、と言っていた。
正直、世界の理とかよくわからないし、そんあ大きな事は考えられないので、とりあえずドワーフは近いイメージだけど違う部分もある、という事だけ考えておこうと思う。
もし会おうと思うならユートさんが紹介してくれるらしいので、機会があれば頼みたいと思う。
「それで次にエルフは……これは何て言ったらいいのかなぁ」
「ん? 何か、困る事でもあるの?」
「いや、困るわけじゃないし、むしろエルフの事を伝えるために今回のこの機会を作ったと言ってもいいくらいなんだけどね。はぁ、とりあえず順番に話していこうかな」
そう言って、エルフの事を話し始めるユートさん。
というか、それが一番の本題だったんだ……国の事とか、結構遠回りしてるなと思うけど、口実とは言わないまでも、ある程度繋がりはあるんだろう。
知っておかないといけない、というよりは知っておいた方が周辺国と合わせてわかりやすい、と言ったところかな。
あと、エルフに何があるのか? という疑問はあるけど、ちゃんと説明してくれるらしいのでおとなしく聞いておこう。
「エルフはまず、タクミ君も想像しているだろうけど、男女ともに細身で容姿端麗、さらに長寿。もちろん、特徴的な耳が長いのもあるよ。ただし、耳長とか馬鹿にしたりすると、全エルフを敵に回すから気を付けて」
耳が長い事を揶揄するのは、種族全体を侮辱した事になるとかなんだろう。
もちろん俺は、エルフと言えば耳が長いというのはわかるし差別的な意識なんか一切ない……もし会う事になったら注意はしておくけど。
「それから、自然や世界を信仰していて、ちょっとセイクラムに似ている部分はあるけど、あれとは違って外部からの変革も受け入れる肝要さも持ち合わせてるね。植物に関する知識とか親和性とでも言うのかな? そういうのはやっぱりエルフが一番だよ」
「セイクラム聖王国とは違う……と。植物の知識が豊富っていうのはイメージ通りだし、興味があるなぁ」
「……まぁ、タクミ君ならそう言うと思ったよ」
何故そこで、疲れたような表情をするのだろうか? 俺自身、ギフトのおかげもあって植物の中で特に薬草を扱った仕事を始めているので、興味があるのはおかしい事じゃないと思うけど。
元々、エルフとかドワーフとかには興味があるし、排他的じゃなくて交流もしているなら、いつかは会ってみたいと思う。
というか、日本人ならそう考える人は多いんじゃないかな? 架空ではあるけど、日本ではエルフやドワーフが出て来る物語はそれこそ物凄い数があったし、それはユートさんもわかっていると思うけど。
「はぁ……まぁ、エルフの国は木々とか草花による景観とかもこだわっていて、自然との調和した街並みとかが綺麗で、見るだけでも楽しめると思うよ。本当、あれがなければ……」
「自然豊かで風光明媚、ってところかな? でも、そんな嫌そうな顔になるって他に何が……?」
ここまで話を聞く限り、嫌がる要素がないように思える。
セイクラム聖王国と同じく、俺やユートさんのような異世界から来た人を表向きは嫌ったりとか、嫌がらせをしてくるとかそんな感じじゃないようだし。
「んとね、エルフには一つだけ大きな特徴があってね。これが凄い問題というか、まともに相手をすると疲れるしか感想が出て来ない事なんだけど。簡単に言うと、観察する事がエルフとしての一番重大な事と捉えているんだよ。それこそ、観察のためなら他の全てを捨てる事すら厭わないくらいに」
「観察……? それは調べて研究して発展させようとかそういう?」
「そうじゃなくてね、ただ観察する。それ自体が目的なんだよね。まぁ一応、観察した事は記録して知識として蓄えるという名目とかもあるし、実際そうしているうえに、木々や草花、植物との調和はその副産物でもあるんだけど。ほんと、生活や景観を豊かにするためじゃなくて、観察のためにそうしていると言えるくらいに」
えっと……つまり観察する事に喜びを感じるとか、そういう話かな?
ユートさんが嫌そうな顔になっているというのは相当だし、多少の事ならむしろ悦……じゃない、喜ぶくらいなのに、辟易としている様子からは、相当な事が予想される。
しばらくエルフの観察について話を聞いていると、確かに度が過ぎていると言える程のようで、対象にはなりたくないな、という感想が出て来る。
エルフと会ってみたいとか、景観が素晴らしい街並みを見てみたい、というのはちょっと考えなおした方がいいかもと思うくらいに。
それ以外にもエルフの話を聞いていると……。
「え、クズィーリさんがエルフの国の使者?」
「使者というか、様子見というか、ともかくそのために動いていたみたいだね。――ハルト」
「はい。――タクミ殿、これを」
「これは……」
ユートさんの呼びかけで、エッケンハルトさんが懐から取り出したメッセージカードのような物を渡された。
いや、ような物ではなく、そのままメッセージカードだな。
クズィーリさんのメッセージが入っているし。
「少し前にカレスからそれが届いてな。カレスとやり取りをさせていたのだが、ある日姿を消して、宿にそれが置かれていたらしい」
「そこに書かれているマークがあるでしょ? それは、エルフが観察のために動いている時に使うマークなんだよ。国章とかとは違うんだけどね」
「クズィーリさんが……」
葉っぱと眼鏡が描かれている特徴的なマーク、それは観察している様子を示しているようにも見える。
つまり、ユートさんの言う通りクズィーリさんはエルフの国から派遣されてきた人で間違いないんだろう。
行商人として、これから香料の取引ができると思っていたから、ちょっとショックだ。
「あぁ安心して。エルフ側は騙して放っておくなんて事はしないから。観察対象に接触して騙しただけなんて、印象に悪い事はしないんだよ」
「しばらくの間は、タクミ殿とクズィーリが取引でお互いやり取りをする香料などが、残されているようだ」
「ハルトの言うように、フォローじゃないけど、一定期間は定期的に取引をしたのと変わらない状況が続くように手配しているはずだよ。なんにせよ、これから先もちゃんと取引できるように、近くエルフの国から接触があるだろうしね。エルフは、観察対象を逃さないから……」
「それはなんというか、騙されたけど騙されていない……いや、結局騙されていると思えばそうなんだろうけど、なんとも複雑だなぁ」
騙されているけど、取引的には今後も続けられるのだから、騙していないとも言える、のかな?
うーん、クズィーリさんがそうだったというのはショックではあるけど、この先もカレーや香料が取引できると考えれば、悪い事ばかりとも思えないし……複雑だ。
「あとそれから――」
他にも、クズィーリさんのフォローをするわけじゃないだろうけど、カナンビスの情報提供も接触した目的の一つだと聞かされて、さらに複雑な気分になった。
クズィーリさんの情報がなければ、カナンビスがどこから流れているのかとか、男爵やセイクラム聖王国の繋がりなんかも気付くのが遅れた可能性がある。
暗部の侵入はフェンリル達が活躍してくれたけど、トレンツァさんが接触してきた時に対処ができず、もっと大きな被害に繋がっていたかもしれないしな。
恩があるというのは間違いない。
「んで、そういった事を足掛かりに、まずは国を通してタクミ君とレオちゃんに申請が来るはずなんだ」
「申請?」
「うん。観察させてくれっていう申請だね。これはエルフの国が行っている正式な手続きなんだけど、その申請を通すためにクズィーリみたいな絡め手を使う事が多いんだよ。特に、慎重に見定めなければいけない対象の場合はね」
今回の場合、俺はともかくレオというシルバーフェンリルがいるため、下手な刺激をしたら危険があるかも、という事でクズィーリさんを使ったと考えられるらしい。
エルフは世界信仰で、シルバーフェンリルを頂点と定めている――要は神様のように考えているらしく、だからこそ慎重になった部分もあると。
ただまぁ、その信仰の対象とも言えるシルバーフェンリルは、ほとんど人前に姿を現さないため、機会が少ないが、そのチャンスがあるのであれば観察をしないと失礼だ、とどうしてその方向に行くのかな? と思うような考え方が強いみたいだ。
観察しないと失礼って、むしろ俺からすると観察する方が失礼なんじゃ? と思ったりするが、これは文化というか種族や考え方の違いなのか。
「それでね、えーっとこう……」
何やら言いにくそうにするユートさん。
急にどうしたんだろう?
「レオちゃんが観察対象になっていると思うんだけど、もし申請を受けたらレオちゃんが困惑しちゃうんじゃないかと思ってね? タクミ君だって、昼夜問わず延々と見つめられて観察されるのは嫌だろうし……できれば断って欲しいなぁ、なんて?」
自信なさそう、というかこちらを窺うようなユートさんだけど、クレアとかリーザ以外に上目遣いされてもなぁ……。
「閣下、タクミ殿にはエルフの事を話し、断るかどうかは任せるのではありませんでしたか?」
「いやまぁうん、そうなんだけどね? やっぱりこう、エルフの観察を思い出しちゃってね。できれば断って欲しいなぁって」
エルフの観察、ユートさんにはよっぽどトラウマを植え付けたみたいだ。
ユートさんの特殊な趣味をもってしても、許容範囲を越えたらしいから、よっぽどだったのかもしれない。
「それでその、どうかなタクミ君?」
「……実際に観察の申請? があるかはわからないけど、断る必要ってあるのかな?」
「へ……?」
首を傾げる俺に、ユートさんがポカンと口を開けた――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
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