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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2022/2022

シルバーフェンリルの事も聞きました

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。


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「おっと、安国が大仰な名称になったなって顔だね?」

「いや、そんなつもりはないけど」

「まぁうん、タクミ君の気持ちもわかるよ。僕も最初聞いたときはそう思ったからね」


 俺の言葉はスルーされるらしい。

 というか、ユートさんが聞いたって事は本人が付けたわけじゃないのか。


「実はね、これには深くて長ーい話があるんだよ。聞くも涙、語るも涙の切ない話がね」

「……」


 なんというか、浸っている感じで眼鏡をクイクイといじりながら、差し棒を振って、こちらの話を聞いてくれる雰囲気じゃないので、黙っておく。

 長い話だと、昼食までに終わるかなぁ? なんて思いつつ。

 いや、国名に関わる事だから、本来は重要なんだろうけど……なんだろう、ユートさんの様子を見るに、割と適当でいい気がしてきた。


「ヴィリウステアラ、これは実はね、元々違う名称だったんだけど問題が発生して、少しだけ変えてそうなったんだよ」

「問題?」

「そうだね……安い国、これが最初に考えられていた国名なんだよ」

「それは国名としてはちょっと……」


 安い国とか、国名としてどうなんだと感じ、何言ってんだ? というような表情になるのを自覚する。


「そう思うよね? でもほら、後ろを見てごらん。ちなみに、二人にもこの話をしたのは初めてだし、歴史とかにも残っていないよ」

「え?」


 言われて後ろ、クレアやエッケンハルトさんがいる方を見ると、二人共特に変わった様子はない。

 いやまぁ、初めて聞かされる国名の元の名称を聞いて、少しは驚いているようではあるけど、安い国が本来の国名だと聞いたからって表情じゃない。


「僕とタクミ君、後ろの二人の違いを考えればわかるんだけど、勝手に翻訳されてるんだよね」

「翻訳……あ、じゃあ」

「そう、本当は安い国って名称じゃない。というか、訳せば安い国となるだけで、もっと違う名称のはずなんだよ」


 成る程、つまり何かしら格好いい名称だったのが翻訳されて、俺やユートさんには「安い国」と聞こえてしまっているってわけか。

 よくよく見れば、安い国と言っているユートさんの口の動きは、日本語で安い国と言うのと違うようだった。

 えっと……イ……ウィさんじゃないヴィ? ヴィリス……テッラ、かな? 読唇術ができると言える程ではないけど、わかりやすくするためなのか、ユートさんの口の動きが大きめでなんとなくわかった。


「まぁ安国という僕の苗字を国名にしようとしたからこそ起こった悲劇、と言えるのかもしれないね」


 確かに、国名を建国者の名前とかにするというのはあり得ると思うから、言う通りなんだろう。

 というか、人物名は翻訳されていないっぽいから、俺やユートさんの名前は正しくこの世界の人達に聞こえて認識されているんだろうけど、どういう事なんだろう?


「タクミ君の疑問もわかるよ。多分だけど、国名として口にした時点で人物名ではなくなるから、なのかもしれないと僕は思ってる。まぁそんなわけで、安い国なんてさすがにと思ったから、ちょっとアレンジしてヴィリウステアラにしたんだよね。深くて切ない話だったでしょ?」

「それはどうだろう」


 自分の苗字から安い国とか言われる可能性があった、と考えると、ユートさん的には確かに切ない気がするのかもしれないけど、俺としては微妙な気分だ。

 あと、別に深くない。

 まぁこの世界の理にも関わっているのかもしれないから、聞けて良かったとは思う。

 全然長くなかったけど。


「タクミ君も僕の切なさをよくよく理解して悲しんでくれたところで、次の話に行くね」


 悲しんではいない、けど、言っても聞いてくれなさそうなので黙っておく。

 それからしばらく、国の成り立ちとか色々教えてもらった。

 眼鏡をクイッとやり、差し棒をフリフリするのは相変わらず集中力が削がれる思いだったけど、内容としては知らない事を知れて面白い。

 割と俺のツッコミなどは無視されるのは遺憾だが、対話形式でわかりやすく教えてくれているので、もう少し色々整えたら教師としてやっていけるかもしれない。


 ユートさんが教師になる気があるのかは知らないけど。

 まぁ誰かにこうして教える機会、っていうのも、長く生きてきて何度かあったのだろう、と思う程度には慣れている様子だった。


「次はえっと、この国の爵位に関してがいいかな。タクミ君が爵位とか貴族って聞くと、凄い権力を持っていると思うだろうし、実際もある程度そうなんだけど、僕が国を作った時にはそうじゃなくてね――」


 ユートさん曰く、爵位は広い国土を分割してそれぞれの領地として与えて治め、発展させるために作ったそうだ。

 周辺国や地球でのあれこれを参考にして、爵位、領地貴族としたけど、最初はそれこそ市役所の役人、くらいの感覚だったとか。

 ただそれも長く時が経つにつれて、権力が少しずつ大きくなってきたのが現状だらしい。

 人類皆平等とは言わずとも、始まりは大きな権力を振るう傲慢な貴族が出る事を嫌った結果らしいけど、それならそもそも王制ではなく共和制にすればと思ったが、建国した時にはユートさんがいればこそという部分が大きく、そうはできなかったみたいだ。


 とはいえ無礼討ちというか、切捨御免みたいな事はないし、建国以来正しく貴族制というか……封建制度のようになった理由などを理解して受け継いでいる貴族は、それなりにいるようだ。

 エッケンハルトさんのリーベルト公爵家や、バルロメスさんとヴェラリエーレさん兄妹のアルヒオルン侯爵家などもそれらしい。

 そういう人達は、相手側が傅く事はあるかもしれないが、基本的に一般の人達との距離が近いとか。

 つまりそれが、以前バルロメスさん達がこちらに来る事を知った時に言われた、まともな方の貴族という意味も含まれているんだろうと思う。


「でね、爵位は本来貴族間での優劣、権力の大小を決めるものじゃなくて、領地の広さ、国への功績なんかを示したものなんだよ」

「つまり、爵位が高い程領地が広い、または功績を上げているって事?」

「そう。ハルト達公爵家の領地は、フェンリルの森とかここから北にある森、ラクトスの北の山などなどもあって、街や村の数は多いと言える程じゃないけど、とにかく領地が広い。あと、初代公爵になったジョセフィーヌちゃんの功績が大きくてね、例え領地が小さくても公爵しかあり得ないくらいだったんだよ」

「成る程……」


 内容もそうだけど、ジョセフィーヌさんの話とか、ユートさんが建国だとかがあるから、この場には俺以外にクレアとエッケンハルトさんしかいないのか。

 歴史や国についての勉強をするだけなら、使用人さんがいてもおかしくないし、大体誰かがいる事が多いから。


「でまぁ、ジョセフィーヌちゃんの話をしたからついでだけど、レオちゃん……というよりシルバーフェンリルの事も話しておこうかな」

「シルバーフェンリルの?」


 ついで、と言いながら目に力が入って話し方も少し真剣な雰囲気を醸しているので、もしかしたらユートさんとしてはこちらが本題だったのかもしれない。


「何度かタクミ君に話はしたし、レオちゃんの事を見てはいるけど、シルバーフェンリルの凄さはレオちゃんと少し違うような感覚を持っているように見えるからね」

「うーん、違うというかなんというか……」


 マルチーズだった頃のレオは当然よく知っているし、同じような仕草とか雰囲気、表情とかもかな? 姿形は全然違うし、それこそ体の大きさなんて数倍どころじゃなく変わっているけど、やっぱりレオはレオだなって思う事が多い。

 だからだろうか、ユートさんの言うようにシルバーフェンリルの凄さと、レオとが重なるような、でもやっぱり違うような、そんな感覚がある。

 言葉にするのはちょっと難しいんだけど、どこかでレオとシルバーフェンリルは別と考えている部分があって、それがユートさん達にはわかっているのかもしれない。

 とはいえ、シルバーフェンリルというこの世界で最強と言われる存在になったんだっていうのは、理解しているつもりなんだけど。


 頭ではわかっていても、長年一緒にいたマルチーズのレオの事があるからか、繋がってはいてもまた違うと言うか……やっぱり言葉にするのは難しいな。

 ともかく、そういった部分を矯正ではないだろうけど、シルバーフェンリルがどういう存在なのかを、ユートさんは教えようという事だろう。

 クレアやエッケンハルトさんも交えて、伝承などに残っている話や、実際にあったらしい歴史、シルバーフェンリルがどれだけの事ができるかなど、色々と聞いた。

 それでもやっぱり、という部分は消えなかったけど、でも今までよりシルバーフェンリルの事をよく知れたとは思う。


 翻って、レオの事を知れたとも感じて、話を聞いてよかったと思う。

 さらについでに、話はジョセフィーヌさんと一緒にいたらしいシルバーフェンリルの方へと移る。


「初代当主様が亡くなった後、シルバーフェンリルは人前に姿を現さなくなった、と伝わっていますが……」


 やはりシルバーフェンリルやジョセフィーヌさんの事には興味があるのか、クレアが少し前のめりになりながらユートさんに尋ねた。


「そうだね、本当に忽然とという言葉が正しいくらい、出て来なくなったね」

「閣下は、初代当主様の事も知っておられますが、その後にシルバーフェンリルがどうなったのかは……?」

「んー、僕もわからないんだよね。クレアちゃんが言ったように、ジョセフィーヌちゃんが息を引き取った直後にいなくなった……らしいんだよ」

「らしい?」

「僕だって、色々忙しい身だからね。あの頃は特に色々あった時期でもあるし、ジョセフィーヌちゃんを看取る事はできなかったんだ。だから、その辺りの事は伝聞になるんだけど」


 ユートさんを見ていると、暇なのかな? と思う事は多々あるけど、まぁ実際は色々とやる事があるんだろう。

 ルグレッタさんに連れていかれて何かをやっている――おそらく仕事をしている様子もあるし。

 しかもユートさんも言っているように、色々あった時期との事なので、ジョセフィーヌさんにつきっきりでいるわけにもいかなかったんだろうな。

 ユートさんは、その頃の事を思い出すように少し遠い目をしながら語る。


「シルバーフェンリルは、ジョセフィーヌちゃんが息を引き取るその瞬間まで、片時も離れず寄り添っていたらしいよ。タクミ君とレオちゃんとは少し違う関係だけど、仲が良かったからね」

「そう、ですか……」

「……」


 仲の良かったシルバーフェンリルに看取られる……か。

 俺としては、レオはマルチーズで、当然ながら寿命は人間よりも短いし、いずれそういう事になるという覚悟はしてきたつもりだ。

 けど今はこうしてこの世界に来て、シルバーフェンリルになったのなら、間違いなく俺より寿命は長くなっているんだろう。

 看取るつもりが、看取られる側になったのだと思うと、俺自身はまだ先の事ながら息を引き取る間近のジョセフィーヌさんの気持ちが、ほんの少しくらいはわかる気がした。


「ちょっとしんみりしちゃう話になったけど、ジョセフィーヌちゃんが息を引き取った直後、シルバーフェンリルは大きく空に向かって吠えたそうだよ。その鳴き声は、泣いて悲しんでいるような、そんな風に聞いていた人は感じたみたい」


 俺も、クレアもエッケンハルトさんもだろう、その場面を想像して少し部屋の空気が重くなった気がした。


「それで、吠えた後は忽然と姿を消して、その後にそのシルバーフェンリルを見た人は誰もいないんだ」

「……え、吠えた後? どこかに走り去ったとかそういう事じゃなくて?」

「うん。僕も伝聞だから何とも言えないけど、その場にいた全員がそう証言してるんだよ。まぁでもシルバーフェンリルだからね。それくらいはできると思うよ。なんせ、空間転移というか瞬間移動というか、そういうのもできるみたいだったから」

「瞬間移動……」


 漫画とかアニメで時々そんな能力が出て来るけど、確かにそんな事ができるなら、忽然と姿を消すなんて事もできるのだろう。

 というか、シルバーフェンリルはそんな事もできるのか……ならレオにも……?


「あぁ、レオちゃんはいずれはわからないけど、多分今はできないと思うよ。ある程度年齢を重ねて成長したシルバーフェンリルができるようになるって事みたいだから。ちなみにそのある程度っていうのが実際どのくらいの年数なのかは僕にもわからない。数年かもしれないし、それこそ数百年かもしれない」


 まぁ、マルチーズとしてはともかく、レオが今も実は成長中らしいというのはなんとなく知っていた。

 この世界に来た直後くらいに、レオに一度どんな魔法が使えるか聞いた事があるが、その時は曖昧な部分もあったけど、それが徐々にはっきりしてきているようで、さらにまた別の魔法も使えるようになってきているらしいからな。

 とはいえ、どれだけ、どんな魔法が使えるようになったとしても、それを使う機会とかはほぼないから気にしないけど。

 ……今は使えなくとも瞬間移動とかは、ちょっと体験してみたいかも? いやでも、レオは俺達を乗せて走るのが好きだから、あまり使いたがらないかな。


「ちょっと話は逸れたけど、瞬間移動以外にも姿とか気配を消すとかもできるし……言っちゃうと、シルバーフェンリルだから何らかの方法で、忽然と姿を消すような事くらいはできるってわけだね。んで、そうしていなくなったシルバーフェンリルは、その後僕も含めて誰も見た事がないんだ。元々、ジョセフィーヌちゃんと一緒にいた森の奥とかも探してみたけど、いなかったね。まぁ、どこかに隠れているとかだと思うけど、姿を隠そうとしているなら僕でも見つからないと思う。それこそ、すぐそばにいたとしても見つからないとかもできそうだし」

「フェンリルの森にも、いなかったのですか……」


 ユートさんの話に、少し残念そうにつぶやくクレア。


「そもそもね、シルバーフェンリルが姿を見せる事って少ないんだよ。で、実際に姿を見せた時にそれが同一個体なのか別個体なのかも判然としなかったりもする。あぁ、子供と一緒にいるシルバーフェンリルっていう、ものすごく貴重な場面を目撃した人もいるけど、それくらいかな。ま、レオちゃんはジョセフィーヌちゃんと一緒にいたシルバーフェンリルとは別個体なのは間違いないだろうけど」

「まぁ、それは確かに」


 マルチーズだったのは間違いないし、すり替わっている可能性はない。

 こちらに来てから、レオの言う事がわかるようになって確認したけど、日本で一緒にいた頃の事をほとんど覚えていた。

 都合の悪いイタズラした時の事なんかは、とぼけているのか忘れている風だったけど、それくらいだ。


 俺が仕事で日に日にやつれていくのを心配していた、と言われた時には、ちょっと泣きそうになったけど。

 ともあれ、共有している記憶が正しいのだから、レオはマルチーズからシルバーフェンリルになったのであって、こちらの世界に元々いたシルバーフェンリルとは別の個体だって事だ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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