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一魂一体  作者: Kioh
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第1話 一魂一体

一魂一体――いっこんいったい。

ひとつの魂に、ひとつの身体。

知っているだろうか。


この地上に生まれた魂には、たった一つの身体しか与えられない。

そして、“生きる”という経験に使える時間も、たった一度きりだ。

そのすべては、運命という見えない鎖に縛られている。


けれど、“生”を知りたがっているのは、この世界に生きる者たちだけじゃない。

肉体を持たない魂でさえ、生きるという感覚を求めている。


特に――欲深い魂ほど、な。


……あ、やべ。

自己紹介を忘れてた。


俺の名前は、玖条如月くうじょう・きさらぎ


簡単に言えば、高校三年生。

今は祖母と二人で暮らしている。


裕福というほどじゃない。

けれど、金に困るほどでもない。


俺を産んで亡くなった母さんが、ばあちゃんに残してくれた金を、少しずつ使いながら暮らしている。


親父?

知らない。何も。


ばあちゃんが教えてくれたのは、たった一つだけだ。

俺がまだ母さんの腹の中にいた頃、親父は母さんを捨てて出ていった。


それだけ。


ばあちゃんは、親父の話をされるのがあまり好きじゃない。

だから俺も、それ以上は聞かなかった。


まあ、そんなわけで。

俺はバイトをする必要もなく、学校に行く以外はわりと自由な時間がある。


その時間に何をしているのかって?


唯一の友達、神崎蓮也かんざき・れんやとつるんでいる。

蓮也が忙しい時は――


夜の街に出て、悪魔を何体か狩る。


だいたい、そんな毎日だ。


「如月、お弁当できてるよ。学校に行く前に、朝ごはんもちゃんと食べなさいね」


ばあちゃんの声に、如月は布団の中からのろのろと身体を起こした。

まだ半分眠った頭のまま、枕元のスマホを探る。


画面をつけると、未読メッセージが一件。

送り主は、神崎蓮也だった。


『よ、キサ。朝の掃除、代わりにやっといて。


理由?

後輩ちゃんから「一緒に学校行きたいです」って言われた。


これはもう事件だろ。

俺の青春がかかってる。


頼んだぞ、相棒。


お前にもいつか、こういう朝が来るといいな。

まあ、まず彼女だけど。


じゃ、学校で』


如月は小さくため息をつき、まだ寝起きの低い声でつぶやいた。


「……いや、彼女の名前が毎週変わる奴に言われてもな」


洗面所で顔を洗い、制服に着替える。

鏡の前でネクタイを適当に締めながら、如月は大きくあくびをした。


昨日の夜、悪魔を何体か狩ったせいで寝るのが遅くなった。

問題があるとすれば、悪魔の方ではない。


朝が早いことだ。


弁当だけを鞄に突っ込み、朝ごはんは見なかったことにした。

ばあちゃんには、たぶんバレる。


まあ、その時はその時だ。


如月は何食わぬ顔で家を出た。


午後のホームルームが始まる直前、教室はまだ少しざわついていた。


如月の隣の席に腰を下ろした蓮也が、妙に楽しそうな顔で話しかけてくる。


「なあ、キサ。今日、うちのクラスに転校生が来るって知ってたか?」


「知らん」


「しかも女子らしい」


「へえ」


「これはまずいな。俺の青春スケジュール、更新しないと」


如月は、もう何かを諦めたように息を吐いた。


「……勝手にしろよ」


その会話が終わるのと、ほとんど同時だった。

二人は気づいた。


教室中の視線が、いつの間にか入口へ向いている。


そこに立っていたのは、一人の少女だった。


透き通るような白い肌。

柔らかく揺れる金色の髪。

そして、自然と目を引く整った立ち姿。


まるで、“理想の少女”なんて曖昧な言葉を、そのまま人の形にしたみたいだった。


担任が教卓の前に立ち、軽く咳払いをする。


「今日からこのクラスの一員になる、四宮美月しのみや・みつきさんだ。みんな、仲良くするように」


四宮美月は小さく頭を下げた。

その仕草だけで、教室の空気が少し変わった気がした。


自己紹介が終わると、美月は如月の前の席に座った。


「……マジかよ」


蓮也が小さくつぶやく。


「お前、前の席じゃん。運命じゃん」


「お前の運命は毎週更新されるだろ」


「ひどくない?」


そんなやり取りをしていると、担任がふと思い出したように手を叩いた。


「ああ、そうだ。玖条くん」


「はい?」


「四宮さんの執事の方が、君に会いたいそうだ。今、校長室で校長先生と話している」


「……俺に?」


如月は思わず聞き返した。

だが担任は、それが当然のことのようにうなずくだけだった。


理由もわからないまま、如月は校長室へ向かうことになった。


廊下を歩きながら、頭の中には疑問ばかりが浮かんでいた。


四宮美月。

転校生。

執事。

そして、なぜか自分に会いたがっているという話。


意味がわからない。


その答えは、校長室の扉の向こうにある――はずだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


次話では、校長室で如月の運命が大きく動き始めます。


少しでも気になっていただけたら、次話もよろしくお願いします。

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