010●斬れない剣の謎を求めて
なぜ、あの’賢者の剣’は斬れないのか?
その謎を解くためソレイユは実体空間に転移し、なだらかな高みにやって来た。
ローレンスが手にした賢者の剣「英雄」。
通常はエンジェル・ナイト級以上でしか扱えない。
普通のヒトでは持つ者の感情によって、時に爆発的な威力を発揮してしまう。
いつ破裂するかわからない爆弾のようなものだ。制御できない。
この世界線のこの時間軸には、爆弾はまだ、ないが。
ソレイユは近づく。
剣はある。しばしば、誰かが持ち去るが、必ず戻って来る。
彼女はヒトであった時の残滓を懐かしむように、剣に近づく。触れる。
そうか、なるほど。斬撃モードではなく、殴打モードになっていたのか。
でも、いつ?
マイロードがウィルの邸宅で見た時も、
あの戦いでウィルが帯剣していた時も、確かに斬るための剣だった。
だが、実際にヴァルターの兜は斬れなかった。
体ごと真っ二つになって当然であったのに・・・。
彼女は剣の残留思念を探る。
そうか・・・ローレンスの意思か。
ウィルフレッドとしてのウィルフレッダに、
ローレンスがその残留思念で力を貸した、あの時。
ローレンスは妹に、人を斬らせたくなかったのだな。
ソレイユは小さなため息をついた。
ローレンス、あなたも本当は斬りたくなかったのね。
優しい文官だったものね。
剣から手を離し、ソレイユは空を見上げる。
青い。
ローレンス、あなたは世界という大海を知らぬまま逝った。
しかし、空の青さをよく理解していたのね。
彼女はもう1度ため息をついた。
それは彼女の、ローレンスへの手向けであった。




