084●連続誘拐未遂事件
「名前がジンという少年たちばかりが攫われている?!」
「はい。皆、無事に帰ってきていますが。」
巡察隊ボレリア本署では、この3日間、
少年の誘拐が4件、立て続けに起きている。
住民からの届けがあり、念のために捜査を始めた。
無事に帰宅していること、身代金などの要求もないこと、
管区内はもとより王国全体に注意喚起を呼びかけたことで、
それ以上の事件は起きていない。
しかし、4人の少年から聞き取ると、
全員が同じ男たちに拉致されているようである。
目隠しをされて名前を尋ねられる、
フルネームを答える、「30数える間は、目隠しを取るな」と言われて、
郊外に置き去りとなり解放される、という同じパターンである。
少年たちは名前を言った後、別室に目隠しをされたまま、
一時的に監禁されており、それ以上の情報は得られてはいない。
ここでもう共通して懸念されたのは、4人ともが’ジン’ということである。
王国にはよくある名前である。
もともとはラベンダー伯爵家の長子の名前であるが、
それが公国内だけでなく、王国にも伝わった。
新たに子どもが産まれた家では、ラベンダー家にあやかって、
男子にジンと命名することが流行になった。
結果的に’スクール’では、
ファーストネームに加えてファミリーネームで呼ぶことや、
まったく違うニックネームで呼び合うことが増えている。
うっかり’ジン!’とだけ言うと、何人もが返事をするからだった。
「だが、これだけでは、ラベンダー伯爵家の御子息が狙われている、ということは言いきれんなあ。」
「そうですね。あまりにも杜撰です。ジン・ラベンダーが目的なら、もっと事前に調べて、ターゲットを絞り込みますよね。王国内ではなく、公国にまず、行ってみるんじゃないですか?」
「あるいは、何かの陽動かもしれません。ともかく、巡回の頻度をあげよう。公国大使館にも、連絡をしておけ。」
「お前らは馬鹿か!なぜ、町中で住民にジンという少年はいないか、と尋ねてまわったんだ!」
「いえ、だって族長、ジンってやつについて、名前と少年だということ以外、なんにもわかってないじゃないですか。オレタチに、ジン・ラベンダーを攫ってこい、って言うだけで、あとは自分たちで探すのって大変なんですから。」
「それでも、ジンと聞いただけですぐにそいつだと思って、即、目隠しと耳栓って、無謀だ!このスカポンタン!」
「だって、急げ!っていったのは族長ですよお。オレタチ、できるだけ早く、って、がんばったんですから。」
「わかった、わかった、もういい。褒美はやる!この事は誰にもいうなよ。」
「わかってまさあ!ありがとうごせえます!おーい、みんなあ、飲みに行くぜ!ジン以外をな!」




