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071●節電が命を救う

テラ星系を出て、艦内時間で1週間。目的地までは、もう少しだ。

「艦長、前方に隕石群があります。」

ドリル・H・クドー、わたしの右腕である。

機動艦隊勤務の時から、よくわたしのお国言葉に耐えてくれている。

感謝だ。

そうそう、体の柔軟性がないわたしが、背中が痒い時にも、手を貸してくれる、

文字通り「我が右手」だ。

「それはいかん。回避しよう。面舵いっぱい!」


闘血鬼を制圧して、わたしたちは機動艦隊から調査艦隊へ転属となった。

調査艦隊はテラ連邦星系の外側の、未知の宙域を探索する任務を負う。

わたしたちはトップシークレットを知ってしまったため、

まあ、機密保持の意味合いから、左遷されたということだ。

せっかく、問題解決に奔走したのに。

奔走しただけで、解決したのはエンジェラム星間連合だったけど。


「あっ!艦長、隕石群が進路を変えて、本艦に向かってきますぞ!」

「慌てるな、クドー。取舵いっぱい!」

自律艦たちも司令艦に従って、進路を変更する。

機動艦隊と違い、全部で10隻なので、小回りが効く。

あれっ?ついてくるの?隕石群?!


「艦長、おかしな隕石群です。これはヘンですよ。」

「そうだな。自律艦より探査機を出そう。指示を頼む。」

「はい!探査機、発進させます!」

おっ、新人、元気がいいぞ。その調子で頼むぞ。


調査艦隊の司令艦、スター・トラック社が組み立てた、

エンターサプライズ号は、これまでより搭乗人員が少ない。

というか、ほとんどいない。

艦橋で艦長1,副長1、操舵手1、その他1、おまけ1。

機動艦隊等のような戦闘用ではないから、司令艦でもこれだけの人数だ。

いや、正直に言うと、これが調査艦隊全10隻での総クルーの人数だ。

’その他’は生命維持や通信、

場合によっては艦の前後あわせて2基しかない砲門を使う砲手ともなる。

いわば、雑用係。

’おまけ’、とは通称で正式には「初任者任用期間従事練習生」だ。

新しく赴任したものだけが名乗れる、名誉ある職種、

つまり雑用係のそのお手伝い、ということになる。

今回の’おまけ’は、小柄だが元気いっぱいのナイス・ガール、ルナ・オオイケ。

若いっていうのは、文句なくいいよな。ブリッジに活気が出る。


ルナが僚艦より発進させた探査機が隕石群に迫る。

映像が送られてくる。ノイズが多い。

「数が多いですね。大きさもほどほどにあります。」とルナ。

「これとぶつかるのって、いやですねえ。」と’操舵手’。

「直撃はマズイなあ。」と’その他’。

「なんで本艦に近づこうとするんでしょうな。」とクドー。

「これ、やっぱり調査の対象ですかねえ?」とルナ。

「うーん、どうします、艦長?」とクドー。

「そうだな。調査せんわけにはイカンだろう。探査機を隕石群の1つに着陸させてくれ。」と私。

「了解です。」とルナ。


調査艦艇は、通常の戦闘艦艇と異なる様々な装備を有している。

探査機もその1つだ。

戦闘には全く不向きだが、多種多様なセンサーが装備されていて、

機体表面に通電させ、大気中を航行する際の

「現地生命体付着避け」機能なんていうのもある。

おっ、探査機から続報が来る。相変わらずノイズが多い。

さっきより多いんじゃないか?


「艦長、分析結果がでました。これは・・・超磁性体です!うわっ、これはいけない!探査機が速度限界を突破、隕石に衝突し・・・してしまいましたあ!」

ルナの報告を聞くまでもなく、艦橋大型モニターには、隕石の上で四散する機体が見える。

「再度、進路修正!10時方向へ転身、最大出力!」

「’操舵手’了解!」

「モニター固定、最大望遠!」

「’その他’了解!」


隕石群の表面を拡大する。

あれは・・・?

見たこともない艦や機体が見える。

テラのものではないな。

きっと、これまでに隕石に吸いつけられた連中だな。

「う〜ん、艦長、えらいものを見つけてしまいましたね。」

’操舵手’の言う通りだった。

これは闘血鬼にファーストコンタクトしたわたしが、

異星人の文化に再度、ファーストコンタクトする可能性が大だ。

これ、セカンドコンタクトと、自分では言ってもいいのかな?

’その他’が叫ぶ。

「転身コースに隕石群も接近する模様!」

「補助推進機を作動させろ!」

「艦長、あれは手動なので、だれかが艦尾まで行かなければ!」

「そうやな、クドー。’おまけ’、すまんがボタンを押してきてくれ!」

「’おまけ’了解!行きま〜す!」

カタパルトから発進する機体のような勢いで、ルナが艦橋を出る。間に合うかな?


強烈な磁場の影響で、様々な計器がおかしくなってくる。

「出力全開!側面よりも噴射!何がなんでも逃げろ!」

「了解!ああん、だめです、艦長!こっちが引っ張られてます!」

「弱音を吐くな!らしくないで!故郷で、優しい夫と3人の子どもが待ってるんやろ!」

「4人に増えてますう!・・・そうですね。すみません。’操舵手’、操舵がんばります!」

そうだ、その意気や!

♬われら勇猛、調査艦!空をこえて、ルルル、星の彼方!♬

おっ、補助推進機、動き出した音、するで!

「動力伝達、補助推進機出力全開!’その他’より’操舵手’に繋ぎます!」

「’操舵手’、受け取りました!メイン推進機と併用中!」


ルナが帰ってきた。

「お疲れえ!」「ありがと!」「ごくろうさん!」「ようやった!」

みんなで声を掛け合う。ピンチの時には、こういうことが大事なんや。

「艦長!ダメです、やっぱり、回避できませ〜ん!」

うーん、こりゃ、えらいこっちゃ。・・・そうや!向こうが磁性体っちゅうことは!

「’その他’、探査機みたいに、艦の外殻に電流は流せるんか?」

「はい、艦長、惑星内を飛行した時に、生物の付着を防ぐために調査艦には装備されています。」

「ほんなら、それ使お!めっちゃ電流ながしてや!」

「なんかわかりませんが、やります!とうりゃあ!」


少しづつ、効果でてきたで!

向こうが磁石やったら、こっちは電磁石や!

S極かN極かわからへんかったけど、電流の向きを変えたら反応があった!

「艦長、これは?」

「磁力の反発や!学校で習うたやろ。フラミンゴの右手の法則!」

「意見具申!それはフレミングの左手の法則だと思います!」

さすが、’我が右手’のクドー、左手まで気が回るとは、えらいやっちゃ!


「’おまけ’より報告!電力が持ちません!」

「なんやて!艦橋の照明、消そ!節電や!自分の部屋も消灯しとるやろな?!」

「すいません、’その他’つけっぱなしです。僕、暗いと怖いんです。」

「あほっ!今直ぐ消してこい!」

「トイレの温水洗浄便座も切りますか?」

「そや、そこ忘れたらあかん!何回もスマン、’おまけ’行ってきて!」

「了解!’おまけ’、艦内のムダづかい電力を全て切りに行きます!」

「こんなことで、電力、回復しますかね?」

「そやかてクドー、やらなしゃあないやん。チリも積もれば山となるんや。」


大したもんや。やったらできる子やねん、わし。

徐々に隕石群から離れていくで!

「もう、安心ですね、艦長!見事な作戦でした!」とルナ。

みんな、ありがとう!

いや、そんなに褒めてくれなくてもいい。

けど、喉かわいたなあ!

「全員、交代で休息を取れ!アルコールはいかんが、喉を潤せ。エアコンも切ったから、暑いな。わたしにも、何か飲み物を頼めるか?」

ルナがサイダーを持ってきてくれた。

パカン!ええなあ、この開く音!

あれっ?全然冷えてないぞ?

「すみません、艦長。冷蔵庫もコード、抜いたので生ぬるいんです。」

あっ、そうか!しまったあ!

でも、命のためにはしょうがなかったよなあ。


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