043●師匠がよかった
最初の訓練だ。よし、やるぞ!この人が教官か。
「はじめまして、マンジさん。武術教官の月風兵庫です。ツキカゼと呼んでください。」
「承知しました。よろしくお願いします。」
このあたりは、前世の入社面接の経験が役に立ってるな。
丁寧に話すのは基本だ。
教えてもらう立場だからな。
そういえば、集団面接で
「金銭で買えないものは何か」って討議したっけ。
俺、「国民性」って答えて、場が微妙な空気になったよな・・・。
まあ、今度は肉体勝負だ。
シナイで訓練か。
前世の剣道に似ているな。防具はだいぶ違うけど。
よし、素振りからだ。
中学の時、剣道部だったんだ。懐かしいな。
自由乱取りか。
ちょっとはいいところ、見せてやる!
「マンジ、筋がいいな。農民だったというが、剣の経験は?」
「いえ、ツキカゼ先生、ありません。」
「そうか。では、お前の戦闘力を客観的に評価してみよう。・・・彼を呼んできてくれ。ちょうど今、将軍、いや、特別顧問と話しているはずだ。」
現れたのは、少年だった。
せいぜい中学一年くらいか。
こいつと勝負するのか?
防具を装着し始めてるぞ。
「始め!」
ツキカゼ先生の声。よし、大人の力を見せてやる!
間合いに入る。
剣先が触れる。
一足一刀の距離。攻めてこない?なら、俺が行くぞ!
振りかぶろうとした瞬間!
俺の剣先が押さえられた。少年の剣先に?!
バランスを崩す。体が流れる。
鋭い一撃が頭に!
痛くはないが、意外すぎる!
くそっ、もう一度!
中段に構える。
俺の剣先が右に払われる。
打ち込まれてたまるか!剣先を戻す。
あれ?少年の剣先が消えた?!
勢い余って左に剣先がぶれる。
あっ、小手に隙が!
少年の剣先が下から弧を描いて、右小手を打たれた!
・・・うーん、敵わんな。
こうなればリーチを活かして、遠い間合いから一撃を放つ!
俺の瞬発力、見せてやる!
間合いは切っている。
よし、飛び込み面だ!
そりゃあ!
バーン!
・・・なんで俺のシナイが弾かれて、面一本取られるんだ?
わからん。でも、わかったことがある。
この少年、タダモノじゃない。
この光景を、
ジンと共に来ていたウィルフレッダが、ヴァルターとこっそり見ていた。
「うーむ、見事だ。相手の動きを読んでいる。儂でも、あの年頃ではできなかったぞ。」
「どうして‘対の先’の奥義、できてしまうの?わたし、会得するのに随分苦労したのに。」
「あの時、儂に放ったヤツだな。天性のものなのだろう。さすが、あなたの子だ。」
「いいえ、ヴァルターさん、あなたがずっと教えてくれたからです。」
「いや、ウィルフレッダ、あなたも教えいたではないか。」
「ということは、私たちって。」
「うむ、とても良い師匠だということだな。ウワッ、ハッ、ハッ!」
満足げに笑うふたりだった。




