031●先ず隗より始めよ
毎日暑い。特にこの夏は暑い。毎日のように、熱中症注意の知らせがある。
ニュースも、最高気温を更新した、と連日の報道。
彼はバイク通勤だ。朝はまだ、マシな方である。
それでも汗をかきながら、出勤する。
悪いな、化石燃料を使って。心の中で地球沸騰化の現状を、
誰に詫びるのかわからないまま、取り敢えず謝罪する。
区役所の彼の職場の端にある席に着く。エアコン、ありがとう。
パソコンを開く。通知に目を通す。
その中に、彼の働く自治体から「二酸化炭素削減についての方針」があった。
一読する。ふむ、ふむ。なるほど、そうだよな。
このままでは、エライことになる。
データもついている。これまで開催されてきた国際会議の概略がある。
自治体として、期限を設けて取り組むのか。
そうだな、自分たちも意識しなければ。
昼休みに同僚たちが議論している。
地球のため、次の世代のため、いまこそ行動を起こさなければ!
だが、通知にあった具体的行動指針について、不満の声があがる。
「こまめな消灯?」「印刷物の削減?」
「自分の水筒を持ってくる?」「レジ袋は使わない?」
「いや、そうだけど。目標のわりに、やるべきことって小さくないか?」
「もう、やってることばかりだぞ!」
「・・・うーん、消灯はそれほどしてないけど。」
その会話を聞いて、彼は思う。
Think globally, act locally. 地球規模で考え個人の身近なことから実践に移す。
もし、国レベルで国民が本気を出すとすれば、対応策は2つしかない。
クリーンエネルギーの増産か、エネルギー消費の抑制である。
前者ならが、自然エネルギー源の設置数を増やすか、
原子力発電所の増設しかない。
後者は言うまでもなく、節電。
極論を言えば、夜9時には消灯する。24時間営業などもっての他だ。
快適な自動ドアや温水器付き便座の利用は、もちろん不可。
移動は電動補助なしの自転車で、基本は歩くこと。
これらの覚悟がなければ、大きなことはできない。
安全なところで勇敢なことを言っても、意味はないのではないだろうか?
しかし、彼はそれを主張しない。背の高いポピーは刈られる。
沈黙の少数者であることを選択している彼は、
ただ、自分でできる、ごくわずかな行動しか取れない。
足元から始めよう。
帰路は朝より暑い。




