022●二次面接試験
超大企業、ラブリーエンジェルの入社試験、二次面接まで来たぞ。
集団面接だ。このメンバーで討議だな。お題は「金銭で買えないものは何か」か。
それぞれが、意見を述べる。
時間、健康、愛、友情、信頼、知識、経験。
うーん、もっともだ。次は自分の番だ。
こういう時、同じことを言ってもダメだよな。
高校入試の面接試験、宗教系の私学で、尊敬する人物を尋ねられた時、
友人はその宗教の創始者ではなく、その母親、
つまり聖母の名前を答えて面接官に笑われた、と言っていたな。
変なことは言えないな。
そうだ、これしか思いつかない。
時間、健康、愛、友情、信頼、知識、経験は、
お金の力で手に入れることや、その質を高めることが可能だ。
たとえば、金持ちは高品質家電や高速な交通手段にお金を投じることで、
物理的な時間を短縮できる。
高度な医療技術によって健康寿命を延ばし、
財力や社会的地位を背景に愛情を築き、
困窮した友人を助けることで友情を深めることもあるだろう。
ノブレス・オブリージュな行動は、社会から信頼を勝ち取る結果とにもなる。
良質な教育環境と稀有な経験はお金で買うことができる。
しかし、国民性だけは別次元の話だ。
国民性は、その国の歴史、文化、
そして人々の共通の価値観が長い時間をかけて育む、
集合的なアイデンティティである。
これは国家に匹敵する財力を有していたとしても、
短期間に容易に手に入れるものではない。
金銭で、特定の国の国籍や居住権を買うことはできても、
その国の国民が持つ共通の習慣や、
無意識に共有する心のあり方を買い取って自分に移植することは不可能である。
従って、異なる国民性をもつ者同士が隣接した場合、
争いごとに発展する確率は70%程度である、と言われている。
あー、言ったぞ。思いっきり言ってしまった。
あれっ?集団討議の参加者たちが、考え込んでいる?
えっ、面接官も?やっちゃったのか、わたし?!
笑われなかったのはいいけど。
あっー!やっぱり不採用かあ!
いや、まだ、第一志望の結果待ちだ!
もし、タイムマシーンが実在したら、絶対に買うぞ!
無理かあ!




