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「ぎゃあおおおおおおおおおお!?」
ブラックブックドラゴンが悲鳴を上げた。
大きな巨体を下から見ているためわからないが、なにか焦っている様子である。無意味に足を動かし、野太い尾で背中を叩こうとしている。
近くにいても、いつ足に踏み潰されるかわからないため回避を駆使しつつ距離を取る。心配なのはヨグで、何度かかすっていたため腕に傷を負っていたが、応急手当でロール。(33)で成功し、スクナの持っていた包帯をきつく巻いた。
遠目に見ると、背中から猛烈な勢いで炎が広がっていた。シュブとナイアが成功したのだ。
焦って暴れているブラックブックドラゴンの壁の横からナイアとシュブ……シュブを背負ったナイアが、いっそ気持ち悪いくらいのスピードで壁を這ってくる。シュブを背負っているから技能は半減しているだろうに、見事だ。
やがてスクナたちのところにたどり着くと、壁から降りて。
「我らが父よ! やってやったっすよ!」
「成功したわぁ。あら、旦那様、大丈夫……みたいね」
「ええ、我らが父に応急手当してもらいました」
「うらやましいっす!」
「やかましい。にしてもふたりとも、よくやってくれたね」
「聞いて下さいよ! シュブのやつ火炎瓶失敗して瓶に罅いれたんすよ!」
「あらぁ? ナイアの無駄技能を使ってあげるためよ?」
「はぁー!?」
「まあまあ、作戦大成功! まずはそこを喜ぼうよ」
翼は焼け落ち、鱗の炎を消そうとのたうち回っているブラックブックドラゴン。しかし、油の入った火炎瓶に火は収まるどころかただ燃え広がるばかり。
そんなブラックブックドラゴンを指しながら、スクナが言えば、それもそうか。と雰囲気が笑いに変わりそうだったとき。
「ぐるがあああああああああああ!!」
すわ最期の断末魔か。スクナたちがブラックブックドラゴンの方を見る。それにしては気合の入った声だった、と思いながら見ていると。びりびり揺れる洞窟に木霊する声。
ブラックブックドラゴンの燃えた鱗(本)の隙間から、黒い靄が出てきた。
その靄はブラックブックドラゴンの身体を徐々に侵食……いや、入れ替えるように、身体に黒い本の表紙が隙間なく浮かび上がってくる。
ナイアの言っていた下腹も鱗に覆われて、ゆっくりと地面を揺らしながら立ち上がった。本の隙間で落ち窪んだ黒い目は、赤い光を宿している。
スクナは、ブラックブックドラゴンが四足歩行しているのは、こちらをなめているからだと思っていた。だが実際には違う。
鱗で覆われていない腹を守るためにそうせざるを得なかっただけだ。
その弱点が克服された今、翼を使うことにためらいはないようだった。
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