立体折り紙のモンスター
階段を降りた先。
草の香りの柔らかい風が通る。昼間のように明るいそこは、朴訥とした牧草地だった。見れば点々と、普通の羊より十倍は大きな羊が穏やかに牧草を食んでいる。
ただ、その羊というのが、また不思議なもので。
「やっば!! すっごい! あの羊、立体折り紙で出来てる! 顔とかリアルだね」
「なるほど、グランサーシープというそうです。知能も高く、人語を解するようですね。突進とそれに伴う角攻撃が厄介なのだとか」
「へー、詳しいね。あ、生物学取ったの?」
「はい、必要になるかと思いまして。攻撃自体は厄介ですが、見ている分には特に襲ってこな」
「あ、羊じゃないっすかー! 紙のくせに草食ってるの愉快っすね」
「「「あ」」」
ナイアの声が響いた瞬間。草を食んでいたグランサーシープの中の一つの群れが顔を上げた。うち一頭がそのままゆっくりとナイア……つまりスクナたち一行を、感情のわからない目で見るなり。二回ほど足の具合を確かめるように動かすと、突進してきた。
土煙を上げ「ンンンメェェェェェェェェェェ!!」と激しく鳴きながら。その声につられたのか、他のグランサーシープたちもその後に続いて走ってくる。
「見てる分には襲ってこないんじゃなかったんすか!?」
「人語を解すってヨグ言ってたじゃん。馬鹿にされたと思ったんじゃない?」
「は!? ただの事実じゃないっすか!?」
「お前がそう言われたらどう思う?」
「殺すに決まってるじゃないっすか」
「ほらみろ」
軽蔑の目でナイアを見て、スクナはため息をつく。ヨグは呆れた視線でシュブは小さくあくびをしている。
ものすごい轟音を響かせ地面を揺らし、怒涛の勢いで迫ってくるグランサーシープにはお構いなしだ。実際、どうとでも出来るゆえの余裕である。
「とりあえず一人で相手してみたら? なんの技能取ったか知らないけど、組み合わせればなんとかなるんじゃ」
「変装(99)、登攀(99)、修理(99)、写真術(74)っす!」
「他には?」
「ないっすよ?」
「はい馬鹿、死んでこい」
「ひどいっす!」
「なにも酷くないよ馬鹿! こういうのは満遍なく割り振るものなんだよ! でも写真も変装も修理もいらないから」
変装、登攀、写真、修理じゃ向かってくる巨大羊(立体折り紙)の群れなんて、どうにもならない。
なんでこんな変なのばっかり取ったんだこいつ……と蔑視を隠さないスクナ。
とりあえず、スクナたちはナイア一人を置いて遠ざかる。
それでもすでに仲間判定されていたのか、一匹のグランサーシープがスクナめがけて突進してきた。紙一重でするりと躱し。
「危ないだろ」
手の甲で軽くはたくと、グランサーシープは巨人に殴られたように吹っ飛んで……行く途中でドロップアイテムに変わった。羊毛と魔石と……宝箱だ。
はたいた手を握ったり開いたりしながら、目を丸くしてじっと見つめるスクナ。
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