第12話 回想part6
「立ち回りですか……難しいですわ」
「そ、そうですね」
シエロとミリアはそう言って頭を抱える。ベネットの取り巻き2人も何も思いつかないのか頭を抱えていた。
「ま、正直カスミ1人で制圧できそうなんだけどね」
「そうとも限らないぜ。見て来たけど、やっぱり強い奴もいる。それに、超級魔法を使われたら対処も難しいしな」
カスミはそう言って再び倒木の上に横たわった。そして、肘を着いて枕のようにして皆を見る。
「……あの、超級魔法を使われた場合どう対処するのですか?」
「確かにそうですわ。あんなに大規模な魔法をどう防ぐのです?」
ミリアとシエロは聞いてきた。
「どうって……消すしかないだろ」
「消すって……ジャミングですの?遠すぎて無理ですわ」
シエロは冷静にそう言う。そんなシエロにカスミは首を振って言った。
「ジャミングとかしないよ。あそこまで複雑になると発動式を崩せない」
「じゃあどうしますの?」
「同じ威力がそれ以上の魔法で相殺するしかないだろ」
カスミ口から放たれたその言葉はその場の全員を凍りつかせた。
「同じかそれ以上って……まさか、こっちも超級魔法を使うなんてことは言わないよね?」
ユリウス画像聞いてきた。カスミはそんなユリウスに向かって言う。
「そのまさかだよ。超級魔法には超級魔法で返すしかない。じゃないと負けるだろ?」
当たり前かのようにカスミは話す。しかし、そこにいる誰もがそれは不可能だと思った。そして、ミリアがカスミの前に立ち言った。
「ふざけないでください」
そして、カスミを仰向けにさせてお腹の上にまたがる。
「もっとちゃんと答えてください。馬鹿なことは言わないで」
「馬鹿なことって……至って真面目だが。正直なところ、超級魔法を使われるとこっちにはどうしようもない。だから相殺するしかないんだよ」
カスミは戸惑いながらそう言った。しかし、ミリアはその回答が気に食わない。体を前に倒してカスミ追い込む。
「こんな時もふざけるのですか?」
「いやだからふざけてねぇって。マジで相殺するくらいしか思いつかないんだよ。一応もう1つ方法はあるけど、それこそ成功するか分からんぞ」
カスミは慌てながらそう言った。すると、ミリアはカスミ顔を近づけてくる。まるでキスでもするのではと思えるほど顔を近づけてくる。
「で、どうするのです?」
ミリアはそう言った。
「え……あ……えっとね……」
すごい圧だ。下手なことを言えば何されるかわかったものでは無い。
「えーっとね……」
さらに顔を近づけてくる。
「そ、それはね……」
カスミは何も言えなくなった。守る……としか考えてなかったからだ。たから、そんなことを言えば怒られるのがわかっている。
「……あ、そうそう。魔法には天穴と核っていうのがあるんだよ。で、魔法はその天穴を全て潰されるか、核を壊されたら消滅するんだよ。超級魔法でも例外じゃないからそうすればいいんだよ」
カスミは大慌てでそう言った。そして、ミリアの顔を見つめる。ミリアは未だに疑いの目を向けていた。やはり信じて無さそうだ。
「……う、嘘じゃないって」
「……」
カスミは何とか納得してもらおうとする。しかし、全くどく気配を見せない。この感じだとこのまま一日が終わってしまいそうだ。
「ガチガチ!ほんとだって!難しいけどそれで消せるんだよ!」
カスミは焦りながらそう言った。するとミリアはにんまりと笑って言う。
「嘘ついたら許さないですよ。お仕置しなきゃですよ」
そしてミリアはカスミから離れた。
「……はぁ、全く……やれやれだぜ」
カスミはゆっくり体を起こすとそう言ってため息をついた。
「それで、天穴と核のこと、教えてくれるよね?」
カスミに向かってユリウスがそう言う。そして、その場の全員がカスミの周りに近づいきた。
「天穴っていうのは”魔法式と魔法式の接続部分……いわば節の事”だ。みんなが発動式を描く時、ただ普通に書くわけじゃないだろ?大きくなればなるほどより複雑なものになる。そして、複雑になればなるほど使う式は多くなる。そうなった時、発動式の中に魔法式が複数描かれることになるだろ?そして、それを一つの文章として描くことは出来ない。だから、そういう時に魔法式と魔法式を接続するんだ。その接続した部分が天穴だ。天穴は元々魔法式が書かれてない部分に限りなく近い部分だからそこだけ他の場所より脆い。だから、そこを潰せば魔法は崩れる」
カスミの説明にその場の全員が頭の上に大量のクエスチョンマークをうかべた。そして、お互いの顔を見合って首を傾げる。
「さっぱりわからないですわ」
シエロが笑顔でそう言った。
「……」
カスミは無言になってしまった。
「それで、核のことを教えてくれないか?」
ユリウスが聞いた。カスミは1度ため息をついて再び話し始める。
「……はぁ、核っていうのは魔法の心臓みたいなものだ。人間みたいにちょっと壊れたから死ぬ訳じゃなく、完璧に破壊された時初めて魔法が消滅する。だから、ちょっと壊しても威力が落ちるだけ。そういうのが核だ。それが中心にあるのか、どこにあるのかは分からない。見える人は場所を選べるが、知らなければ勝手に魔法のどこかに核が生成される。そういうのが核だ。どうだ?わかったか?」
「さっぱり分かりません。カスミ様の教え方が下手くそなんじゃないんですか?」
「お?言ってくれるね。じゃあもう何も教えん勝手に頑張ってくれ」
「嘘です!嘘です!世界で1番分かりやすいです!」
ミリアは慌ててそう言った。そして、顔をぶんぶんと横に振りながら泣きそうな顔をしている。
「あれ?嘘ついたら許さないんだろ?お仕置しなきゃだろ?」
「っ!?……そ、そんなこと言いましたっけ……?」
「あぁ、言った。だからお仕置だ。とりあえず俺の椅子となってくれ」
カスミはそう言ってミリアを四つん這いにさせる。そして、その上にどっしりと座り込んだ。
「それで、その核ってのはどうやって見るんだ?」
「まぁ、そこら辺はセンスだと思うよ。実際のところ俺も見えたことがない。多分特殊な何かがいるのだと思う。俺が読んだ文献のどこにもそんなことはかかれてなかったからな」
カスミはそう言って腕と足を組んだ。
「それじゃあどうしようもないじゃないですの?」
「だから難しいって言ったんだ。正直相殺する方が簡単だからな」
「でも、相殺するには同レベル以上の威力が必要になるよ」
「だとしてもだ」
カスミがそう言うと、ユリウスは少し心配しながらも納得した。これも、カスミ実力を信じているからこそなのだろう。
ユリウスが納得する姿を見たシエロ達は、カスミの顔を見て同じように納得した。どうやらカスミの自信を持った顔が信用できたらしい。
「ま、この話はここら辺にしておいて、そろそろ本格的に明日の立ち回りについて話そう。さっきも言ったけど、この班の最大戦力であるカスミを拠点から遠ざける訳にはいかない。だから、なるべく均等にチームに分けたいんだ」
ユリウスはそう言って地図と駒のようなものを再びしようし説明していく。
「最初は色々と考えたんだけどね、やっぱり戦いやすいチームで分けたいんだ。だから、シエロとミリアと僕で1つ。残りの3人で1つってことにしたいと思う。どうかな?」
ユリウスがそう言うと、その場の全員が頷く。
「で、役割分担をしよう。この状態だと戦力が偏ってしまうからね。僕達が中心を攻める。だから、ベネット班の皆にこの近くの敵を迎撃してもらいたい」
「待ってくださいまし。何故真ん中を攻めるのです?端から攻め落す方が楽ではありませんの?」
シエロが聞いた。ユリウスはシエロに向かってにっこりと笑うと言った。
「正直端から攻めるのは無いな。うん。センスないね」
その優しい顔から放たれる毒舌はシエロの心に深く突き刺さる。しかも、優しい顔と相まってただのサイコパスにしか見えなくなる。
「ひ、酷いですわ!」
シエロは泣きながらそう言った。
「ごめんごめん。冗談だよ。まぁ、正直本当に端から攻めるのはないかなって思ったよ。端から攻めると追い込まれやすいからね。真ん中だと狙われても混戦になりやすいから、逃げる時も逃げやすい」
「なるほどですわ」
ユリウスの説明にシエロはウンウンと頷く。
「てことで、みんなよろしくね。今日は武器の手入れとか発動式の確認とかしててね」
ユリウスはそう言って立ち上がると、どこかに向かって歩き出した。シエロ達はそんなユリウスを見送って直ぐに武器の手入れなどを始める。
カスミはそんなシエロ達を見ながらユリウスを追いかけた。
「……どこに行く?」
「君のトラップを確認しにさ」
「へぇ、完璧だろ?」
「はは、本当にそうかな?」
ユリウスはそんなことを言いながら笑った。そして、カスミの作ったトラップを確認する”ふりをする”。
「……」
「……」
「……」
「……」
しばらくその場に静寂が訪れた。2人とも何も喋らない。カスミはユリウスを見つめ、ユリウスはカスミに目を合わせないようにする。
「……君はさ、なぜ嘘をつくのかい?」
ユリウスがその静寂を壊した。唐突な質問をなげかけられカスミは少し驚く。そして、その質問の内容にさらに言葉につまる。
「さっきさ、超級魔法は相殺するのがいいって言ったでしょ?」
「……言ったな」
「てことはさ、それが出来る自信があるんでしょ?」
「……」
ユリウスのその質問には答えなかった。カスミはユリウスに向かって沈黙で返す。
「……それに、天穴に核の話の時、君は見えないと言った。でも、本当は見えてるんだろ?」
「さぁな」
「……」
カスミはユリウスの質問に対して耐えを濁して返す。すると、ユリウスは黙り込んでカスミを睨んだ。
「君は見えてるはずなのに見えないと嘘をついた。そして、今も嘘をついている」
「……」
「君は何かバレたらまずいことを隠してるんだろ?何を隠しているのかはまだ分からない。だけど、君がまだ本当の力を見せてないことだけは分かるよ」
ユリウスはカスミ向かってそう言った。
「……なぁ、カスミ。僕達は本当に友達と呼び会えるのか?嘘というペルソナをお互い被り、それを続けていこうと言うのか?その事実が知れ渡れば、望まない未来が訪れるかもしれない。だけど、永遠に仮面を被り続ける未来とどっちがいい?」
ユリウスのその言葉はカスミの心に深く突き刺さった。
「……」
カスミはユリウスの重たい言葉に何も言えなくなる。そして、少しだけ俯いて考え事をすると、顔を上げて言った。
「今はまだ……ペルソナが必要なんだ。仮面はいつか外す時が来る。だけど、まだ、その時じゃないって、俺は、そう思う……」
カスミは暗い表情でそう告げた。ユリウスもそのことに関してはもう深堀することは無かった。カスミのくらい顔を見てなにか察した。ただ、それだけだった。
「最後にさ、もし超級魔法を使われたらどうするの?それだけ教えてよ」
「……その時は……」
その時、風が二人の間をすり抜けた。そのせいで周りの木や草たちが大きな声で歌い出す。サワサワと音を立てながら過ぎ去っていく風はカスミの言葉を完璧にかき消してしまった。
しかし、ユリウスは聞き返すことはなかった。まるで、全てわかっていると言わんばかりの顔でカスミを見る。
「……」
「……」
「……」
「……」
二人の間に再び静寂が訪れた。風も止み全ての音が無くなる。2人はそんな中ただ見つめ合うだけだった。
「戻ろっか」
ユリウスがそう言うとカスミも頷いた。そして、少しだけ笑って2人はシエロ達の元に戻っていく。
それまでカスミ達がいたあの場所には、ユリウスに聞き届けられなかったカスミの言葉と、完璧に仕上げられたトラップだけが残っていた。
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