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幻想星勇伝  作者: 五三竜
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第11話 回想part5

 カスミ達は1悶着あってから少しして拠点に到着した。班員は拠点に着くなりカスミが言っていたことを着実にこなしていく。当の本人は他の人が見ている場所とは違う場所に行き、何かをしているようだった。


「食料確保は難しそうですわ。近くに動物がいませんわ」


「でも、立地は悪そうじゃないわ。地面がちゃんとしてて戦いやすいもの」


 班員はそれぞれ別れて調査しそんなことを話して確認し合っている。そして、ある程度周りの状況を理解すると、班員で集まって会議を行った。


「まずわたくしから。地上での食料の確保は難しそうですわ。周りに動物が見当たりませんわ。それに、最悪虫か草かと思いまして調べまたのですが、それもダメでしたわ。ただ、近くに川があったのでそこから魚を取ることは出来そうでしたわ」


 シエロはそう言って自慢げな顔をする。


「次は私です。周辺状況を確認したのですが、人以外の外敵に襲われるかどうかで見るとかなり安全そうではあります。なんせ、この近くに動物がいないので夜に動物に荒らされることは無いと思います。ただ、相手が人だとかなり危険かと思われます。何故かこの拠点がある場所だけ開けてて隠れるものがないので、敵が来た時に直ぐにバレるかと思います」


 ミリアはそう言って少し不安げな顔を見せた。


「じゃあ次は私ね。ここら辺の土地は確認させてもらったわ。地盤が緩い場所もあったけど、基本的に地面はちゃんとしてる。普通に固い地面よ。私みたいに近接戦闘する人からしたらかなり好ましい条件だわ」


 ベネットはそう言った。そして何かあったのかと聞きたげな顔をカスミ向ける。


「3人は何してたの?」


 ベネットが聞いた。すると、ユリウスがニコニコとした笑みを浮かべて口を開く。


「僕達は3人で地図を作ってたよ。大体この周辺の地形は理解出来たからね。どこに何があるかとか、ここは大事みたいなのは記録したよ」


 そう言ってユリウスは手に持っていた地図を見せた。そこにはびっしりと情報が書いてあり、なおかつ見やすく工夫されている。


「それで、カスミ様は何をなされておりましたの?」


「大体みんながやってたことの補助だよ。あと、この土地がどれだけいいのかとか、どんなトラップが作れるかとか、他の班はどうなってるかの偵察とかね。ほとんどの班はテント張ってたけどさ」


 カスミはそう言った。


「あぁ、あと食べれる草を探してたよ。少し多かったから助かったね」


 カスミはそう言っていくつかの草を袋の中に入れていた。皆はそれを見て少し顔を青ざめさせる。


「これは……食べたくないですわ」


 シエロのその一言がその場に響く。そして、カスミ顔を見た。すると、カスミはとてつもなく落ち込んでいた。


「も、も、も、申し訳ありませんわ!た、ただ、食欲がわかないと言うだけで……」


 シエロが何か言うとカスミはさらに落ち込む。そして、ボソボソと何か言っていた。


「え?なになに?毎日のように食べてるから、なんかショック?ですって」


 ミリアがカスミ口元に耳を近づくそう言った。その言葉でその場の全員はよりいっそう嫌な気分になった。


「こ、これを毎日……?」


 ベネットはそう言って草を握る。


「お、お腹が……!」


 シエロはギュルギュルと音を立ててお腹を抑えた。その他の皆は無言になってカスミから遠ざかる。カスミはそんな皆を見てため息を着くと言った。


「俺、この班辞めるわ」


 その刹那、シエロが草を食べた。


ひふはほははひひ(みんなのかわりに)……!」


 ギュルギュルと音を立てながらその草をむしゃむしゃと頬張る。カスミはそれを見てにっこ笑うと言った。


「前言撤回するわ。じゃ、続きをやろうぜ」


 そう言って歩き出す。その先には謎の石版があった。


「何するのですか?」


「これの起動だよ。これやらないと拠点として確立しないからさ。ほら、さっきから青い光の柱が立ってたろ?」


 カスミはそう言って周りを指さす。すると、運良く光の柱が立った。


「あれは拠点として確立した証。あれをすると色々とバフが着くようになるんだ」


 そう言ってリュックの中から謎の石を取りだした。


「各々貰っただろ?その石をこの石版にはめ込んだら良いんだよ」


「なるほどですわ……!」


「分かったよ。だけど、なんでそんなに知ってるの?」


 ユリウスは不思議に思いそう聞いた。


「そりゃあ、教科書に載ってるからな。後ろのあまり見ない場所に」


「そうだったんだ」


「ま、知らなくても別にいいんだけどな。教科書好きなやつは知ってるだけだ。これやらなかったから負けるわけでも失格になる訳でもない。ただ、バフが貰えないってだけだからな」


「そうなのですね」


「そのバフってどんなのが着くの?着いたとして、それが利益になるとは分からないわよ」


 ベネットが聞いてきた。もっともな質問である。確かに、近接戦闘を得意とするものに、遠距離戦闘のバフがかけられても意味が無い。


「基本的には、発動式の起動速度上昇、身体強化の2つだよ。それ以外のバフは自分でかけないといけない」


「ふぅん、まあまあね。全員同じバフだとしたら、あまり戦力差にはなりそうにないわ」


 ベネットはそう言って腕を組む。


「ま、返って好都合だよな」


 カスミはそう言う。そして、持っている石の向きを確認して石版にはめ込んだ。他の皆もカスミがやった通りに石版にはめ込む。


 その刹那、光の柱が立った。それと同時に強い魔力の波がカスミ達を襲う。そのせいで何人かは飛ばされた。


 カスミは石版にかなり近い場所にいたが、動ずることなく髪をなびかせる。


「……」


 皆はその魔力の波が収まるまで無言になる。そして、飛ばされまいと全力で踏ん張った。


「……」


 それから少しして魔力の波は止まった。さっきまでの緊迫した空気は一瞬にして無くなった。カスミ以外の全員は安心しきってその場に腰を落とす。


「何だったの?今の」


「突然すぎますわ……」


「焦りました……」


 各々そんなことを言って息をつく。


「こんな機能があるなんて……カスミは知ってたのかい?」


「いや、知らなかった。こんなんなるんだな」


 カスミは石版を指さしながらユリウスの方に顔を向けてそう言った。ユリウスはそんなカスミ見て苦笑いをうかべる。そして、ゆっくりと立ち上がってカスミに近づく。


「ま、次からは気をつけよう」


「そだな」


「それより、色々とやるべきことは終わったから明日に備えて拠点を作ろう」


 ユリウスはそう言って発動式を描く。そして、空間の扉のようなものを開き中から木の枝やツタを取りだした。


「そうですわ。明日からは各班での戦闘が許可されますわ。そうなれば、拠点に攻めてくる班も存在しますわ」


 シエロはそう言った。


「役割を決めなくちゃいけなくなるわよ」


 ベネットがそう言った。そして、ユリウスを見る。


「正直なところ、特攻するなら全部カスミに任せていいと思うんだけど、それだと僕達は何もしてないことになるからね。それぞれに役割を持たせよう」


 ユリウスはそう言って地図と駒を取り出した。


「カスミが調べてきてくれたからね。大体の敵の位置は分かっている。だから、どこに誰が攻めるかをきちんと確認しておくよ」


 ユリウスはそう言った。


「俺は色々とトラップを作っておくよ。一旦俺抜きで作戦を考えておいてくれ」


「そうだね」


 カスミの提案にユリウスは頷く。すると、シエロがユリウスに聞いた。


「なぜですの?カスミ様も入れて考えた方が良いと思いますわ」


「そうかもしれないね。ただ、今回カスミはこの班の最大戦力。だから、相手の力量がわかってない状態で最大戦力を投入する訳には行かない。それに、カスミ場合どんな状況でも対応できるからね。先に作戦を立てて、無理そうなところか戦力が足りないところを補強してもらう」


 ユリウスはニヤリと笑いながら得意げに話した。


「なるほどですわ」


 シエロはその話を聞いて納得し頷く。


「ちょっと待ってよ。相手の戦力が分からないって、クラスメイトよ。分かるでしょ?」


「いや、そう言いきれないよ。だって、僕達はまだカスミ本気を見たことがないだろ?それに、全員本当の実力を見た事がない。多分どの班でも同じことが起こってるはずだよ。なんせ、いつも2、3人で話している人たちばっかりだから、7人の班で作ったとき必ずよく知らない人と同じ班になるからね」


 ユリウスの言葉にベネットは納得する。そして、カスミを一瞥して再びユリウスを見た。


「カスミも底が知れないけど、貴方も同じみたいね。貴方のことが全く読めないわ」


「僕も読まれたくないからね」


 ベネットの言葉にユリウスはニヤついて答える。ベネットはその笑みの中に黒い何かを感じ取り恐怖の念を抱いた。


「……」


 そんなベネットをユリウスは一瞥する。そして、誰にもバレないようにニヤリと恐怖心を煽るような笑みを浮かべた。


「そうだ、それでなんだけど皆に相談があるんだよ。今僕達の班は7人いる。そして、今回はカスミを抜いた6人で作戦を立てるから、2組に分けようと思うんだ」


「何故ですか?」


「1人になるのは危険だからだよ。それに、2人組(ツーマンセル)だと戦力を分担しすぎて十分な戦力にならない。だから、3人組(スリーマンセル)が1番なんだよ」


「そうなのですね。分かりました」


 ミリアは頷いた。


「あとはメンバーの割り振りなんだけど……僕とシエロとミリア、ベネット達3人組で分けて大丈夫かい?」


「問題ないですわ」


「いいわよ」


「いいですよ」


 3人はそう答えた。ベネットの取り巻き2人組もベネットの意見に賛同しているらしい。ユリウスは小さく頷くと地図を切り株の上に広げてその上に駒を置いた。


「今僕達がいるのはここだ。そして、近くの敵はここ」


 ユリウスはそう言いながら指をさしたり駒を置いたりする。


「僕達の班はかなり狙われやすい」


「なぜですの?」


「僕達の体力が少ない可能性があるからだよ。僕達の班が1番距離が遠いし、ここまで移動するのが大変だったろ?」


「そ、そうですね」


「だからだよ。戦うなら体力万全の時に戦いたちからね。何もせずに寝るだけなら良いけど、拠点に着いたらテント張ったり罠作ったりですることも多いだろ?そしたら、その分だけ体力を失う。実戦と同じようにやるのであれば、確実に潰せる班から潰していくのは普通な事だ」


 ユリウスの説明にその場の全員が頷く。そんな時ベネットがユリウスに質問を投げかけた。


「でも、もし仮に集団で襲ってきた時、襲ってきた班で争い会うこともあるんじゃないの?」


 その質問を聞いたシエロがなにか思いついたのか、表情を明るくさせて言った。


「だとしたら、あえて拠点を開放的にすることで、襲ってきた班同士で争わせるのはどうですの?」


「それいい案ね。そしたら体力も温存できるわ」


 ベネットがシエロの意見に賛成する。


「ま、待ってください。それだとこの場が混乱してしまって余計に戦いにくくなりますよ……!」


 ミリアは少し慌てながら言う。どうやらシエロとベネットの意見で決定されそうになっているの を見て焦っていたようだ。


「どうしてよ?混戦させた方が戦いやすいわ。敵味方区別付けなくて済むもの」


「そういう訳じゃないですぅ……!」


 ミリアが慌てながら2人を止めようとする。すると、ユリウスが言った。


「まぁ、混戦は避けるべきところだよね。相手の力量も分からない状態で混戦になれば、足元を救われる可能性がある」


「どうしてですの?一見、混戦になった方が良さそうに見えますわ。体力も温存できて、敵どうしで争い会うのですのよ」


「それは、敵どうしの場合だけだよ。敵どうしで連合を作って大きな班として活動している場合もある。そうなれば、混戦すると思って待っている方が不利になるだろ?それに、超級魔法を使ってくる場合もある。そうなれば、広範囲に広がる一撃で全員やられる」


 ユリウスは紙に絵を描きながら説明をした。


「ちょっと待って。超級魔法って何?」


 ベネットが聞いてきた。


「超級魔法というのは、”本来1人で行うはずの発動式の構築を、3人や4人など2人以上の人数で構築する大規模広範囲魔法”の事だよ」


「っ!?そんなものがあったのか……。剣ばっかり扱ってきたから知らなかった……」


「ですが、そのような魔法を使える人がいるとは思えませんわ」


 横からシエロが言ってきた。そして、更に続ける。


「一応、クラスメイト全員の実力は知ってましたが……それでも、超級魔法を放てるような人は気ないと思いますわ」


「1人ならね。1人で超級魔法を使える人は、各国に1人か2人くらいだからね」


 ユリウスはそう答えた。


「それでは答えになってませんわ!1人で撃てないのは承知の上で話してますわ!たとえ班全員で超級魔法を使うとしても、2日目が始まってしまえばその日に撃つのは不可能に近いですわ!増して、朝に使うなんて無謀ですわ!」


 シエロは大声でそう叫ぶ。


「だったら、2日目が始まるより前から構築すればいい。俺達が混戦するのに合わせて完成するように、何人かで分けて構築すればいい。なんせ、7人もいるからな。魔力の配分の仕方によっては時間の調節なんて簡単だ。実践で使われるのも多い」


 カスミが横からそう言った。すると、シエロは少し後ずさり顔を青ざめさせる。


「あ……あ……」


「どうしたんだい?」


「い……いえ、な、何も……」


 シエロは深呼吸をして気持ちを整えようとする。しかし、深呼吸をすればするほど過呼吸になっていく。


「はぁ……!はぁ……!はぁ……!」


 シエロは胸を押えてうずくまった。そして、目を見開きヨダレを垂らす。その様子にその場の全員が慌てだす。


「落ち着け」


 カスミはそう言った。そして、シエロの背中に手を置きさする。


「……はぁ……はぁ」


 シエロの呼吸が少しづつ落ち着いてきた。そして、目を閉じ深呼吸をして心をおちつける。


「もう大丈夫か?」


「はい……大丈夫ですわ……」


 そう言ってシエロはゆっくりと立ち上がった。


「申し訳ありませんわ。ちょっと、嫌なことを思い出しまして……」


「別に構わないよ。僕も嫌なことを思い出させてしまって悪かったね」


「いえ、そんな謝らないでくださいまし」


 シエロは慌ててそう言った。


「それで、カスミがこっちに来たってことは、やるべき事が全て終わったってことでいいかな?」


「まぁな。正直なところ、資材が少ないからな。だから、魔法のトラップを多めにしている。ただ、大規模な魔法を使われると全てが無意味になる。それこそ超級魔法とかみたいなな」


 カスミはそう言って近くにあった倒木の上に座った。そして、大きく伸びをして倒木の上に横たわる。


「あら?そんなことで疲れてるの?」


 ベネットがカスミに向かってそう言った。


「仕方ないだろ。どんだけトラップ作ったと思っている?」


「ふーん、言い訳するんだ?」


 ベネットはにんまりと笑みを浮かべてそう言った。その顔はまさにメスガキのようだった。


「……」


 カスミはそんなベネットを見ながら無言になった。そして、ゆっくりと起き上がると指をさして言う。


「へぇ、じゃあ俺の代わりに飯集めてきてくれよ。昼と夜な」


「いいわよ!やってやるわよ!」


 ベネットはそう言ってご飯を集めに駆け出した。カスミ達はそんなベネットを見送る。


「……さて、とりあえず明日の立ち回りを考えよう」


 ユリウスはそう言った。

読んで頂きありがとうございます。

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