(67) 心残り
迷宮群<ニヴルヘイム>攻略完了。
攻略者 ルオ=ノレス(偽)、メルセリス
攻略日数 約一か月(迷宮内) 現世では約5カ月
「……、俺ってマギアバースト後ヘルにさらわれて何日か意識不明だったってことですか?」
「そだね。」「そうじゃの。」
低レベルの喧嘩ばっかの天使と悪魔は息ピッタリにコクコクとうなづく。
「だったら一か月ほどかかったのも分かるけど、もう五ヶ月だったの!? 一か月なら四ヶ月くらいなのに?」
「魔法が規則的に働くわけはないのじゃ。ヘルとの戦い中に時空乖離がより強くなっておったから、その影響じゃろ。ま、一年以内に無事に帰ってこれただけでも十分じゃろ?」
「……、そだね。……ところで、メリーは?」
ルオはレストラン内を見回す。あのゴスロリガーターソックス悪魔は見当たらない。(※ルオの好みではありません)
「今着替え中なんじゃない? あの服もうボロボロで乙女があの格好で歩くのは流石に悪魔としての品位が疑われてしまうしね。」
「あ、なるほど。」
乙女らしからぬ挙動も多いが、ちゃんと自覚しているようだ。
———— 夕方、帝都五つ星レストラン<ビックジュエル>
1か月にわたるダンジョン攻略を制した二人は、ウィンデとラジエルの奢り(10割ウィンデの負担)で五つ星レストランに来ていた。
ウィンデが言っていた通り、メリーは単品平均金貨1枚(一万円)ほどの高級料理を何十品も頼んで、未だに満腹になっていないという暴食っぷりだ。ルオも何品か頼んだが、メリーほどではない。
「本日はご馳走になりありがとうございました。」
「いやいや、メリーを無事に帰還させてもらった礼だよ。それに、マギアバースト時の君を助けられなかったせめてでもあるけど……。」
「ウィンデさん……。」
「気にするな!」
ウィンデはルオの背中をバシンっと叩く。お子様ランチをゆっくり味わっていたラジエルはそれに気づいて、ウィンデにフォークやらスプーンやらを投げ飛ばすが、片手で振り落としていく。(※良い子は危ないのでマネしないでね。)
「今こうして私のお金でゆっくりとご飯を楽しめてる!終わり良ければ全てよし!! 君は本当によくやったよ!!」
「ありがとうございます……。」
「さ、さ! 私の手持ちはまだ温かいからどんどん食べるといい!」
「いや、流石にこれ以上は無理ですよ。」
「ステーキお願いしますです!!」
「ちょっ、メリーはダメ!!!」
お手洗いから戻ってきたメリーは、また直ぐにウィンデの財布を攻撃する。
「全く、ベルゼブブが見たらドン引きしそうじゃのぅ……。」
「いつか会わせてみようと思ってるさ……。」
「その時は我も呼ぶのじゃよ。」
「ルオ君のついででね。」
「おい、こら。」
「あぁ~! このケーキおいしい!! 私のお金で食べてるんだけど。」
涙を流しながら、ウィンデはケーキをおいしく食べる。
「……お主は後片付けはちゃんとするじゃろうな?」
ラジエルはフォークをカチャリと置き、ナプキンで口元の汚れを吹く。
「七鍵王の1人としての責任は果たすよ。それがどうしたんだ?」
ウィンデはルオとメリーには聞こえないように、声のボリュームを下げる。
「ルオ君もあの鍵王の正体には検討が付き始めておる。」
「……ほう、流石は一等星魔術師にして解呪師、鋭いね。」
「問題はそこではない。どうして1年という期限なのかじゃ。まだ確信ではないが、理由が『時空乖離が起こる』。だけではない気がするのじゃ……。」
「それは、どういう……。」
「じゃから確信がまだ無いって言うたじゃろ? ……ルシファー、他の七鍵王に用心しろよ、メリーが迷宮にいたことを知っていながら選んだのじゃからな……。」
ウィンデはゴクリと唾を飲み込んだ。
テーブルに置かれた食器が照明で6つの影をつくり、4人の影を喰らいつくそうとしていた……。
いつも夜遅くに読んでいただきありがとうございます!




