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ボッチ・オブ・ザ・デッド  作者: 骨肉パワー
二章 細川雄二 「選択肢の果てに」
27/32

第27話

「ヤバいヤバい…!!」


 雄二が転がるように物陰へと滑り込みジッと身をかがめる。


「…っ!!」

 

 息を殺しバスの様子を見る雄二。そこには地獄のような光景が広がっていた。


「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」」」


 繰り広げられる地獄の晩餐会。主食は人間。デザートも人間。鮮血が飛び散り肉を千切り骨が砕ける音が雄二の鼓膜を震わせる。


「おえっ…!」


 人間が踊り食いされる光景に吐き気を催しながらも雄二は視線を外さずに観察を続ける。

 

「…っ!…っ!!」


(…もしもだ)


(もしも俺の考えている事が正しいなら、絶対に確認しなければいけない事がある)


 雄二の視線は比較的人間としての原型を留めたとある死体へと固定されていた。次第にバスの中から悲鳴は上がらなくなり、新鮮な肉を咀嚼する音だけが聞こえるようになる。数分が経過。そして、雄二が懸念していたその変化がついに起こる。


「…っ!?」

 

 死んだはずのバスの運転手。顔の半分を失ったその男が突然、動き始めたのだ。青白い顔、フラフラとした動き。それらの要素が疑惑を確信へと変えた。


「ゾンビだ…」


「噛まれたらゾンビになっちまうんだ……」


 視線をバスから外し雄二が思考を始める。


(大変なことになるぞ。こんな山奥の施設にすらもうこれだけの数のゾンビがいるんだ。都市部なんか完全にパンデミック状態になるだろ)


 雄二が無意識の内にスマートフォンを取り出しSNSを起動する。そこには雄二の予想通り不穏なワードが飛び交っていた。


・ゾンビ


・終末


・強盗


「情報が欲しいが、それは後だ、今はそれよりも……」


 雄二がスマートフォンをポケットへと仕舞う。今は呑気に情報の波に触れている場合ではないのだ。目の前に広がる危機。まずはこれに対処しなければいけない。どうすればいいのか。それを雄二が考えていると遠くの施設から大きな爆発音が聞こえた。


「なっ!?なんだ…?」


 何事かと思い慌てて見れば、施設から大きな火柱が上がっていたのだ。


「か、火事!?」


 雄二の顔が真っ青へと変化する。


(冗談じゃねえぞ。山で起きる火事ってのはマジで危険って話だろ?大規模な山火事にでもなったら消防隊が来てくれんのか?)


「はっ…それこそありえないだろ」


 来るわけがないのだ。この騒動が世界規模で起きていると仮定して考えれば答えは直ぐに出てくる。


(落ち着け、落ち着いて考えるんだ。今、やらなければいけない事だけを考えるんだ)


 雄二が必死に生存戦力を練り上げる。だがそれを待ってくれるほどこの世界は甘くなどない。危険はすでに雄二へと迫ってきていた。


「ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「っ!?」


 生気のない顔をしたゾンビが2体、雄二の元へと近づいてくる。


(どうする?殺るか…殺らないか)


 雄二は選ばなければいけない。生きるための選択肢を。

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