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162話★第2王子殿下

王との謁見を終え、王に言われた通りに王子の部屋へと向かう。


今日は授業はせず、顔合わせ兼今後の予定について話す予定だ。いわゆるガイダンスみたいな感じ。


シラバスもちゃんと作ってきた。このシラバスとやらは大学の時にお世話になった、講義の内容などが載っているものである。つまりは指導計画である。これを元に受ける授業を決めて履修登録をするのだ。まぁ、王子は私の授業を受けるより他はないのだけれど。


まさか大学生だった私がシラバスを作る側にまわるとは……。


そんなことを考えながら廊下を歩き、言われた通り王子の自室へと向かう。王子の部屋の前を守っている近衛兵さんに挨拶をすると、近衛兵さんは確認をし、それから部屋へと声をかけた。


「ローレンス殿下、お客様がお見えです。家庭教師のアッカリー様です」


声をかけて数分。返事はない。


「殿下?」


再度声をかける近衛兵。だが、返事はない。


「殿下、開けさせて頂きますよ!」


少し慌てた様子の近衛兵がドアを開ける。だが、開いた先には誰もいなかった。ただ、静かな部屋が広がっているだけ。


そして、目の前の大きな窓が大きく開かれている。カーテンが申し訳なさそうにヒラヒラと風に揺れていた。お目当ての王子殿下はおそらくそこから出ていったのであろう。


「またか……」


近衛兵さんがガックリと肩を落とす。またか、ということは初めてではないようだ。


「あの……」


思わず声をかけると、近衛兵さんはハッとした顔をして、こちらに向き直り、勢いよく頭を下げた。


「申し訳ありません、殿下は少々席を外しているらしく……。ただいま呼んで参りますので、お待ちいただけませんか」


「こういことはよくあるのですか?」


申し訳なさそうな顔で謝る近衛兵さんに、王子の護衛も大変なんだなぁと同情しながらそう問いかける。


すると、近衛兵さんは微妙そうな表情で笑った。苦笑と誤魔化しが混ざりあったような表情。それひとつで分かった。これはよくある事なのね。


「いや……まぁ……あはは……」


「わたくしから会いにいきますわ」


約束をすっぽかされて腹が立たないでもない。約束をしておきながら窓から脱出して逃げる王子殿下の顔を見てみたくなった。


近衛兵さんにそう言い切ると、私は王子殿下をさがすべくクルリと踵を返した。


後ろで近衛兵さんがなにやら言っていたが、全然耳に入らなかった。きっと、この後彼らも王子殿下を探すのだろう。



王宮を歩き回りながら王子殿下と思しき人を探す。詳しくは聞いていないが、きっと国王陛下に似ていらっしゃるだろう。


そう思っていたら、庭の大きな木の木陰。そこに金髪の男性がいた。木の根元に寝転がり、風に揺られている。ふわふわとした金髪が目に眩しい。上がった目と眉が彼を少し好戦的に見せている。


金髪に赤い目。彼がきっと第2王子殿下だ。


なんか、物凄く……怖そう……。

例えるなら、前世で言うヤンキーみたいな?


どうやらこちらには気づいていないようなので、大変失礼なことを思いつつも近づく。恐る恐る近づくと、殿下が気配に気づいたようにこちらを見た。赤い瞳がこちらを射抜く。睨みつけられているような気がしてくる。


目が合ったことに驚き、ビクリと飛び上がった刹那、彼はその怖そうな目を三日月形にして、にぱっと笑顔になる。


途端に霧散する険悪な雰囲気。にへっと笑うその姿はどこか幼さを感じさせる。


「おねーさん、かーいーね!」


言われた言葉にずっこけそうになった。斜め上の方向に裏切られた。


え、なに?!この人、軽いな……!?


驚いたまま立ち尽くす私に、殿下はスっと立ち上がり、私の方へ近づく。それから私の頬へと手を伸ばし、顔を近づけた。その距離10センチもないだろう。


呆気にとられる私に、ウインクをひとつ。


「俺とこの後出かけない?」


ダメだ、この人。前世で言うところのチャラ男ってやつだ。そして、こういう類いの人は十中八九からかっている。ほら、目が楽しそうだもの。流されちゃダメなやつだ。ここは平然と行くしかない。


「では、お部屋の方へ」


当初の予定通り、打ち合わせをさせて貰おう。そう思って言うと、私から手を離した殿下は一瞬驚いた顔をしてからヒューッと口笛をふいた。


「大胆だねぇ。こんな情熱的な乙女は初めてだ。まぁ、俺は全然OKだけど」


えらく勘違いをさせてしまった。申し訳ないことをした。


「ちがいます、お勉強のためです」


「ちぇ、可愛いのに言動は可愛くない」


私の言葉に殿下の表情が曇る。うへぇと顔に書いてある。


「可愛くなくて結構ですので、今日は打ち合わせをしましょう」


チャラ男の扱いはあまりよく知らないが、とりあえず流されないようにしよう。


「ということは、君が新しい家庭教師?」


私が勉強のことを言ったからか、殿下は首を小さく傾けてそう言った。


「はい。ご挨拶が遅れました。私はレベッカ・アッカリーと申します。殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう」


簡易ではあるが、カーテンシーをする。すると、殿下は笑顔で、


「俺はローレンスだよ。こーんな可愛いせんせーに教えてもらえるなんて運がいいね、俺は。よろしく、せんせ!」


そう言ったあと、私の手を取る。それから、ちゃっかり私の腰へと手を回す。流れるような動きだ。


「さぁ、君ご所望の俺の自室へ案内するよ。俺と君の新しい愛の巣だね」


先行きが少々不安です。

第2王子殿下は私の物語の登場人物には、あまりいない性格のキャラです。上手くかけるかなぁ。

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