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158話✲隠した心(ルカ視点)

最近、レベッカ様の元気がないな、と思ってしいた。だから、様子を見に行くことにした。仕事を片付け、時間を作り、神殿の方へと向かった。


神殿は森の中にあるが、悪意がなければたどり着くと聞いたので、多分大丈夫なはずだ。悪意があれば森の外に追い出されるらしい。


森を歩いていくと神殿の庭の大きな木の下に座り込んでいるレベッカ様を見つけた。風に揺れる花々とレベッカ様の髪。その髪を耳にかけるようにして抑え、どこか物憂げな瞳をしたレベッカ様はハッとするような美しさで、思わず息を飲む。


触れてはいけないような、神聖な雰囲気に圧倒される。


だが、目的を思い出し、声をかける。なんでもないように、自然に聞こえるような声は出せただろうか。


「よっ!」


「ルカさん!?どうしてここに?」


声をかけると、ビクッと驚いたように身体を震わせて、それから振り向いた。その瞳には驚愕が浮かんでいる。パチリと合う視線。こぼれ落ちそうな大きな瞳がこちらを見ている。


さっきの神聖な雰囲気とは違うけれど、その綺麗な瞳に見られると少し緊張するというか照れるというか……。


だが、今日はレベッカ様の話を聞きに来たんだ、そう思い、俺はレベッカ様の隣に座りながら言葉を続けた。


「ちょっとこの辺に用事があってな」


「この辺に来る用事はないと思うけど?」


レベッカ様はクエスチョンマークをたくさん頭に浮かべながらそう言った。確かに森の奥地に用事があることは少ないか……。


「はは、バレたか!ちょっと様子を見に来たんだよ。……それで、大丈夫か?」


俺は思わず吹き出すように笑ってしまった。レベッカ様は鋭いな。大仰に心配されると嫌かなと思ったが、誤魔化しても仕方ないので、本来の目的を話すことにする。


大丈夫か、と問いかけた後にこの問いかけはまずかったかなと思う。「大丈夫か?」に「大丈夫」って応えて無理してしまう人だから。


「うん、大丈夫だよ」


レベッカ様は瞳をさ迷わせてから、事も無げに笑って見せた。だが、その笑顔はどこかぎこちない。全然大丈夫じゃない顔だ。


「大丈夫って顔、してねぇーぞ」


「ルカさんには何でもお見通しだね」


どこか物憂げに笑うレベッカ様に歯がゆくなる。もっと自然に笑って欲しい。その笑顔を作るのが俺なら嬉しい。それが無理でもその手伝いくらいはさせて欲しい。


「お前には笑ってて欲しい。笑顔のお前の隣に立っていたい」


俺はお前に頼られたい。

俺では頼りにならないか?


そりゃ、アンディ様ほど力はねぇかもしれない。それでも、お前が幸せそうに笑う笑顔が好きだ。ずっと笑顔でいて欲しい。


この人がとても好きなんだ。だから、支えたい。


そう言うと、レベッカ様は驚いた顔をした後、スっと眉を寄せた。


「それって……」


ああ、心を出しすぎちまった。少しの反省。1番近くじゃなくてもいい。そのひとつ後ろでいいから。


好きという気持ちには、あんたの1番になりたいって気持ちには、蹴りをつけると決めている。


好きという心は隠すと決めている。


俺は言葉の途中で話すのをやめ、クスっと笑った。


「そんな顔すんなよ。俺はあんたのことなんか、別に好きじゃねぇよ」


それでもちょっとだけ、俺の事意識してくんねぇかな。俺の好きは報われなくていいから、今の一瞬だけでも。


俺はレベッカ様の手を掴み、自らの方へ引っ張った。


レベッカ様は俺の行動にあわあわと慌てている。そんな姿さえ可愛い。近すぎる距離に反射的に目を閉じるレベッカ様。ふるふると小刻みに震えるレベッカ様に心臓が重くなる。


このままこの人が自分のものになれば、なんて。蹴りをつけたなんて、言えねぇ。心がガタガタだ。全然決意なんて出来ちゃいねぇ。決意が聞いて呆れる。


そもそもこんな可愛いことをするレベッカ様が悪い。


このまま俺だけ見てくれたらいいのにな。そこまで考えて、フッと笑う。


何考えてんだ、俺は。


そんなことをして、奪えたとして嬉しくはねぇよな。だが、ここにいるのが、俺じゃなきゃ奪われてかもな。


ギュッと目を閉じたその額を軽く指で弾く。パチンといい音が鳴った。


「……たっ?!」


額を両方の手でおさえ、目を白黒させながらこちらを見るレベッカ様。


「引っかかったな」


「意地悪……」


「まぁ、なんだ、俺は、ただ、あんたを支えたかっただけだ」


善人ぶってるよな、多分。

柄じゃねぇよな、多分。

でも、これでいいんだよな、多分。


「それで、何に悩んでるんだ?」


心を隠して、問いかける。それから2人で話し合った。もちろん答えてやれればいいのだろうが、何が正しいのか、どうしたら魔法が使えるようになるのか、なんてのはわからない。そもそも俺の範疇じゃねぇ。


でも、話を聞くくらいなら出来んだろ。それで少しでも心が軽くなったらいい。


俺が悩んでいた時、こいつがしてくれたように。


「ありがとう、ルカさん!私、元気出た!」


話を終えたあと、レベッカ様はそう言って笑った。満面の笑顔。俺が大好きな笑顔で。笑顔が眩しい。


やっぱり好きだなぁ。


そう思い、その顔に少し近づいた。


驚きながらも、目を開いてこちらを見るレベッカ様。さっきので意地になっているのだろう、目をそらすまいとしている。そんなところも可愛くて。


思わず笑みがもれる。なんで、こんなに好きなんだろうな。


愛おしい気持ちが込み上げてきて、その額に唇を寄せた。ちゅっと小さく音が鳴る。


これくらい、許してくれや。


「え、今……」


「うん?更に元気の出るおまじないってやつだ」


好きなんだって気持ち、言葉の裏に隠して。善人装ってなにがしてぇんだろな。


それから、わざとらしく、今気がついたように「あ」っと声を上げた。そして、ニヤッと意地悪そうに笑ってみせる。その欲しかったそれに手を伸ばすように指をそっと向ける。


「ここにはあんたの好きな人にしてもらえよ?それの方が元気出るだろ」


途端に真っ赤になるレベッカ様の顔。朱に染るそれに可愛いな、なんて。


「な、な、何言ってんのよ!!」


「そうそう、それそれ!あんたはそうやってわーわー言ってる方がいい」


眉を釣りあげるレベッカ様の方へと手を伸ばした。そして、その髪を撫でる。


「あんま無理すんなよ。じゃあな」


そう言って、立ち上がる。


多分、大丈夫だよ、あんたならなんでも成し遂げられる。

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