麗しの王妃様
「来てくださってありがとう。
わたくし、ずっと貴女にお会いしたかったの。」
私の目の前には、儚げな雰囲気を醸し出す、絶世の美女が微笑んで出迎えていた。
そして、驚いた。銀色の髪に赤い瞳…って、アルビノってやつ?あの金髪碧眼、典型的な王子様のような容姿のディーのお母様がまさか、こんな容姿だなんて思わなかった。
私が凝視している視線に気付いた王妃様は、伏せ目がちに苦笑を溢した。
「…びっくりさせてしまったでしょう?
こんな容姿で。
…わたくしとディーは、あまり似ていないから…むしろ似ていなくて、よかっ……」
「あっ!!!
し、失礼致しました!あまりに綺麗で見惚れてしまって言葉が出てこなかったもので…。無作法者で申し訳ありません。
それに、ディーに…あっ、いえ。ディースレイド殿下によく似ていらっしゃいます。」
「え。わたくしが……綺麗…?
それに似ているって……」
その言葉に意表をつかれたのか、キョトンとした顔で見返してきた。
あぁ、そういう顔も似てるなぁ。
私は思わず笑みが零れ、緊張も忘れて王妃様に話し掛ける。
「えぇ!!驚かれる表情もそっくりです。
勿論、瞳や髪の色は似ていませんが、お二人の雰囲気と言うのでしょうか?
纏う気配が一緒です。…お優しいところも。」
私は、ここに来るまで王妃様のことを恐い人だと勝手に思っていたことを恥じた。
よく考えたら、あのディーのお母様なのだから、そんな人であるはずがない。
彼女が用意したお茶会の場は、他の貴族の方々がなかなか行くことがない、極々私的な空間で、ここに来るまでも、人目がない道をわざと歩いているのだとわかった。
何故なら、ライアン様とここを訪れた時はかなり沢山の人に注目されたというのに、今日はほとんど人とすれ違わない。例え、すれ違ったとしても、皆私のことは知っているのかみて見ぬふり、
もしくは軽い会釈のみで終わってるからだ。
この部屋に入って、すぐに王妃様直々に出迎えて下さったことも、王妃様の人柄と優しさを感じた理由の1つだ。
私が笑って見つめていると、王妃様はそっと私の両手を握り締め、頬を染めて目元を潤ませながら言葉を紡いだ。
「…本当に、ディーに聞いていた通りの人だわ…」
「…へっ!??」
ちょっ、ディーてば王妃様に何を言ったの!?
私は泣きそうな瞳を向けてくる王妃様相手にどう言葉を返せばいいのかわからなくてオロオロしてしまった。
「……ありがとう。
貴女のお陰で、わたくしたち親子は今こうしていられるのよ」
「…ど、どういうことでしょう…??」
訳がわからなくて、私は大混乱だ!!
その様子を見て、立ち話もなんだから…と、王妃様は気を取り直して、お茶菓子を用意してあるテーブルに私を案内してくれる。
「わたくしはね、元は陛下に仕える侍女で、側妃の1人だったのよ。」
いきなりの爆弾発言に私は食べていたクッキーを吹き出しそうになった。…勿論必死で耐えたけど。
そこから語られる衝撃の事実に私は終始驚きっぱなしだった。
曰く、ディーは【異端者】と言われ忌み嫌われていた。
曰く、王妃様は元正妃に何度も殺され掛けた。
曰く、ディーが無表情の暴君の仮面を被り続けた。
その中には子供の頃、ディーが言ってたことも含まれていたけれど、こうやって改めて第3者から聞かされると、当時どれだけ辛い境遇の中で生きてきたのかがよく分かる。そりゃ、ひねくれたくもなるよねぇ。
でも、無表情とか暴君とか、とてもじゃないけど想像できない。
私にとってはちょっと感情豊か過ぎるくらい喜怒哀楽がハッキリしている人だと思ってたから。
「あの子はね、その能力と、わたくしのせいでずっと感情を圧し殺していたの。
……貴女と会うまでは。」
「…私、ですか?」
だから、私は王妃様の語るディーと私の知るディーが別人のような気さえしていた。
私と会ったからって、王妃様は仰るけど!!
私は俄には信じられなかった。
疑いの眼差しがわかりやすかったのだろう。
私の知る反応を見て、王妃様はクスクスと笑いながらこちらを見つめる。
また感情が顔に出ていたらしい。私は恥ずかしくなって目線を下に移動すると、ふと気付いた。
王妃様がしているブレスレットって、もしかして…?
私の視線に気付いた王妃様が見えるように腕を少し前にかざす。
「言葉で説明するより、見せた方が早いわね。
わたくしが身に付けているこれこそ、貴女がディーを変えた何よりの証拠なのよ。」
そう言って、王妃様はにこやかに笑みを浮かべた。
というわけで、王妃様の登場です!
思ってた方向とは少し違う形になりましたが、やっと、ディーの過去をマリーが知る機会がやってきました。
これを聞いて、マリーはどう思い、どう動くのか。王妃様のお茶会はもうちょっと続きます。
もう少しだけお付き合い下さいませ(^_^)




