深まる謎
『わたくしが身に付けているこれこそ、貴女がディーを変えた何よりの証拠なのよ。』
そう言って、王妃様は私にブレスレットを見せてきた。
そういえば…。精霊石のアクセサリーって、王妃様が流行らせたって噂あったけど…まさか、ほんとだったの…!?
「あ、…の、精霊石のアクセサリーって、本当に王妃様が流行のきっかけ…なのですか?」
もし、それが事実だったとしても、それがどうしてディーを変えたことに繋がるのか私にはさっぱりわからなった。
「そう…とも言えるし、そうではないとも言えるわね。」
「…はぁ。」
王妃様はくすりと微笑み、私はといえば、さらに謎は深まるばかり。
私は思わず眉間に皺を寄せてしまった。
「気を悪くされたらごめんなさい。
貴女を困らせるつもりではなかったの。
ほんとにね、言葉通りなの。
確かに広めたのはわたくしよ。けれど、それを提案してきたのはディーなのです。」
「…え…」
どういう、こと…?
「この国では、【異端者】と呼ばれる存在がいたと、お話致しましたわね?
先祖帰りとでもいうのか、稀に魔力の強い者が、現れることがあるのです。過去の歴史から、それを厭う者が多くおり、魔力持ちは虐げられてきました。
…魔力に関わる、あらゆる物を嫌悪していたのです。特に、高位貴族になればなるほど、その扱いは顕著でした。
そんな時、あの子の…ディーの10歳の誕生日に事件は起こりました。ディーが行方不明だった10日間、私達はディーの生死は絶望的だと感じていました。
それが、無事に帰って来たと思えば、あの子は人が変わったのかと驚くほどに見違えた表情をしていたのです。
そして、わたくしたちにこう告げたのです。」
そこで、一区切り入れると、王妃様は私に向き直り、じっと見つめてきた。
「『大切な人が出来たんだ。その人の為に、この国を変えたい。協力して頂けませんか、父上。母上。』
…と。その瞳には、今まで見たことがなかった強い生気が宿っていたわ。
ディーはね、貴女と出会って、生きる希望を貰ったのよ。」
「……っな…んで…」
なんで、そんなにも私のこと……?
本当に、当時私がしたことなんて、大したことじゃない。
ディーの本気が伝われば伝わるほど、私は困惑してしまった。
(…ディー?私、そんな御大層な人間じゃないよ?それに、何も貴方に返してあげられない。)
精霊石のアクセサリーが、魔力持ちの職に繋がるように。魔法への偏見と差別がなくなるように、貴族のご婦人にそのアクセサリーを勧めて広めたのだと聞いても、どこか遠い過去のことのように頭に入ってこなかった。
私は、自分の気持ちを持て余してしまって王妃様のお話に集中出来なくなっていた。自然と視線が落ちていく。失礼な態度を取っているのだと頭は理解しても、心が追い付いていなかった。
その様子に気付かれたのか、王妃様は話を切り上げた。
「なんだか、わたくしばかり話してしまってごめんなさい。
色々と言われても混乱してしまうわよね。
…でもね、1つだけ、お願いがあるのです。」
「……?」
パンクしそうな頭で、王妃様に視線を投げる。
「ディーのこと、ちゃんと見て欲しいの。
その上で好きか嫌いか判断して欲しいのです。
わたくしからは何も強制はしないわ。
…本当は、このまま婚約者になって欲しいけれど…これは親のエゴね。
苦労を掛けたあの子には幸せになって欲しいけれど、それで貴女を苦しめるのは本末転倒だわ。
だから、貴女が決めて頂戴。」
それが、お願い。
私は是も否も言えず、曖昧に笑ってその場を辞した。
何度も失礼な態度を取ったと思うけれど、王妃様は怒ることもなく、静かに笑っていらっしゃった。
…私は一体どうすれば良いんだろう。
途方に暮れてしまった。
だからだろうか。
この後、あんなことに、巻き込まれるなんて。
━━このときの私は想像もしていなかった━━
お待たせしました!
続きの物語です。
今までノー天気なくらい明るかったマリーがじわじわと悩みを持ち始めます。
ディーとの関係はどうなるのか、今後の展開をお待ち下さいませ(*^_^*)
格好いいところも見せられるように頑張ります!!




