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開き直りました。




そんなドタバタな王都入りを果たした翌日の朝。

とても清々しい気分で目覚めました。


流石は公爵家!

ゲストルームとはいえ、最高級の寝心地のベッドに朝までぐっすり安眠してしまったよ。

人様のおうちだっていうのに、なにやってんだろ、私は。


しかも、シュヴァルトにある我が家と違い、ここにはたくさんの使用人や侍女が控えている。

別宅には使用人兼家族がいるけれど、どちらかというと後者の認識で接しているから、こんな風にお世話されるのに慣れていない。


昨夜から、お風呂に入れるだの、お着替えを手伝うだの、あれやこれやと私付きの侍女達が数名がかりで貴賓扱いしてくるのだ。

私としては、間借りさせて頂いているただの居候という立ち位置のつもりでいるから、正直困ってしまう。


しかも、その貴賓扱いの原因は、あのエロ王子、もとい、ディーのせいなんだから尚更だ。


私は婚約者になるつもりも、ましてや王家に嫁ぐつもりも全くない。


ただの『マリエリア』という1庶民として、魔法を堪能しながら楽しく過ごしたいだけなんだから。


そんな風に昨夜全ての身支度を1人で済ませたら、朝やってきた私付きの侍女に泣きつかれた。


曰く、お世話させて頂けないと、旦那様にあわせる顔が御座いません、と。


そう言われてしまえば、突き放すことも出来なくなる。朝の準備は素直に従うことにした。


ちなみに、いつも私の身の回りの世話をしてくれるアリアは、人に顕現したままこの公爵邸に連れてこられた為、私の友人として、違う部屋に案内されている。

精霊の存在を大っぴらにするわけにもいかず、渋々各自の部屋に向かっていった。

とは言え、深夜は寝たふりをして、ルイが私の部屋まで来て警護してくれていたのを知っている。


いくら良い人だと思っていても、他人の部屋に寝泊まりするのは初めてのことだ。ルイの過保護なまでの警戒に苦笑いするも有り難いなと思ってしまった。



そんな物思いに耽っていると、背後でほぅと感嘆の溜め息が聞こえた。


「本当にマリエリア様の髪はお綺麗ですね」

「ほんと!こんなにキラキラと輝く艶やかな髪質は他では見たことありませんわ!」


キャッキャと楽しそうに私の髪を結い上げながら、侍女達が褒め称える。

正直、私も初めて見たときから綺麗だと思っていたので誉められるのは嬉しい。


でも、改めて人に言われるとなんだか恥ずかしくなってしまう。


「あ、ありがとうございます。

自分でも気に入っているので、そう言って頂けて嬉しいです。」


照れてしまい、顔が赤くなる。やだな、誉められ慣れてないからどう反応していいかわからない!


「まぁあ!!!」


突然侍女の1人、ユリカが驚きの声を上げた。

何事!?と思い、鏡越しに彼女の方を見れば、彼女の方こそ赤い顔をして、『破壊力が…っ!』とか訳のわからないことを呟き始めた。


心配になったので声を掛けたら、問題ありませんと返ってきたので、とりあえず様子を見ることにした。


なんだろう、昨日からこのお屋敷の人の反応がおかしいというか、様子がおかしいというか…。


私、やっぱり田舎臭いのだろうか。

ここ、王都だしなぁ。

公爵邸の侍女なら、どこかの令嬢でも可笑しくないし。


それとも、流行り病でも引いているのかしら?

具合が悪いなら、治癒魔法を掛けてあげるんだけど、皆大丈夫っていうから何も出来ない。


こういう時、宝の持ち腐れだなぁなんて、思ってしまう。せっかく有り余る力があるのに、人の役に立てないなんて、なんだかモヤモヤする。


「さぁ、出来ましたわ!!

あぁ、やはり元の素材がよいと、何を着せてもお似合いになりますわね。」


ずっと髪を結い上げてくれていたララがにこやかな笑顔で私に告げた。


ぼーっと考え事をしているうちに完成したらしい。鏡を見たら、左右を編み込みし、色とりどりの花のバレッタで後ろを纏め上げていてとても可愛らしい仕上がりになっていた。


「わぁ…すごい」


普段は私が面倒くさがるので、あまり髪をいじらないことが多かった。

なので、ここまで複雑に編み込みされて飾られているのが私にとって新鮮で楽しかった。


「準備して頂いてありがとうございます!」

「いいえ、とんでも御座いません。お礼など必要ありませんわ。それに、私も大変楽しゅう御座いました。」


ふふっと笑って返される。

やっぱりいつ、どの時代も女の子はお洒落が好きなんだなぁと思って私も釣られて笑ってしまった。


「なんだか、楽しそうだね」


突然扉の方から聞こえた声に驚き振り向くと、そこにはミュラー公爵の姿があった。



「ッ!!旦那様!

申し訳ありません、すぐにご準備を…」


「あぁ、問題ないよ。焦らせてしまってすまない。」

「と、とんでも御座いません。」


ララとユリカは慌てていたが、公爵は穏やかな笑顔で彼女達を労い、私に視線を移す。


「あぁ、とても似合っていらっしゃいますね。

貴女の瞳の色がとても綺麗だと思ったので、きっとお似合いになると思っていましたが、想像以上です。」


そう、今日の私の格好は空色の鮮やかなワンピースだ。

ただ、ワンピースといっても、普段私が好んで着るような1枚で楽チンワンピースではなく、ドレスといっても良いのではないかと思うくらい何枚もの布を駆使したワンピースなのだ。


ふんわりとした膝下丈のワンピースは、流行りのハイウエストタイプなのだが、ウエスト部分から幾重にも重なる絹のような布地が、まるで羽のように広がっている。


それがグラデーションになっていて、朝日に当たると、キラキラと輝いて見える。


これ、一体いくらするんだろう…と頭の中で計算してしまった私は正真正銘、庶民なのだなぁと思ってしまった。


「あの、こんなお高そうなお洋服、ほんとに私が着ても宜しいのでしょうか…?」


汚してしまいそうで、着ているだけで緊張が半端ない!!出来るなら、もっお庶民的なものに着替えたい衝動に刈られる。


「勿論ですとも。私も、マリエリア様の可憐な姿を拝見できて朝から楽しませて頂きました。」



うわぁ、何このキラキラ叔父様は!!

というか、まだ好青年と言っても過言ではないミュラー公爵は、年齢よりも遥かに若く見える。


初め、サリエル嬢を迎えに来たとき、義理の親子かと疑ったくらいだ。


今まで私の周りには、ミュラー公爵のように大人の男性の魅力に溢れる人がいなかったから、なんだかドキドキする。


子持ちとはいえ、独身のハンサム公爵なんて、再婚相手にと申し込みが後を絶たなかったんじゃないかなぁ。


「ありがとうございます。ミュラー公爵様。」


「ライアンです、マリエリア様」

「…はい?」

「私のことは、どうぞライアンとお呼びください。」

「えと、ライアン、公爵様、ですか?」


突然の申し出に混乱しつつ、答えたら、クスッと笑われてしまった。


「公爵は結構ですよ。」

「…では、ライアン様?」

「えぇ。」


先程よりもさらに笑みを深め、私に笑い掛ける。

なんて、笑顔の無駄遣い!!!


あれ、このセリフなんだかデジャヴ。

なんだか、最近こんなのばっかだわ、私。


「実は、外が良い天気なので、バルコニーで朝食を、と思いましてお迎えに来たのですよ。

ララとユリカはそちらの準備をお願いできますか?」


畏まりましたと彼女達は急ぎこの場を辞して、準備に向かった。

私はミュラー公爵と二人きりになり、少しだけ緊張してしまう。


「マリエリア様。僭越ながら、私がエスコートさせて頂いても?」


ミュラー公爵が、スッと私に手を差し出した。

私はどぎまぎしながら、そのエスコートのお誘いに返事を返した。


「はい、ライアン様。

まだお屋敷内は、不得手です。

エスコート、お願い致します。」

「喜んで。」


私が彼の手に自身の手を乗せると優雅に引き寄せ、部屋を後にして、バルコニーに向かうのだった。





ほんと、この人の無駄に色気駄々漏れなの、誰かなんとかしてー!!!!

ミュラー公爵は、どうやら開き直ったようです。


皇太子殿下から奪おうなどと大胆なことは考えていませんが、これくらいは許されるでしょう?とばかりに、自身の魅力全開でマリーに接してきます。


その行動の裏には何が潜んでいるのか。

それがわかるのは次回、でしょうか?

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