08、たまには失敗もある~急いで作った炒め物~
筆者執筆
ディアー「ん……」
ディアーが目を覚ますと、まず始めに日課である時計を見ることをする。
そこでディアーは固まった。
ディアー「……は? ちょ、え? 8時!? やばッ!? 遅刻だ!!」
ディアーは急いで身支度を整えると、これまた急いで厨房へと向かった。
連狼「おお、ディアーか。珍しいのぅ、お主が寝坊なぞ」
既に食堂に来ていた連狼が出迎える。
ディアー「すんません! 急いでなにか作ります!」
連狼「そう慌てるでない。別に無理して作らんでも良いのじゃぞ?」
ディアー「いや、そう言うわけにはいかないッス! ちょっと待っててくださいね」
ディアーは食材をチェックし、急いで準備する。
――急いで作る即席の炒め物――
1、野菜を適当な長さに切る。お肉も適当な長さに切る。
2、油をフライパンに引き野菜とお肉を炒める。
3、味付けして炒めたら完成。
ディアー「タマネギ切って……うわっ! ちょ、ふざけんな! 全部無駄になっちまったじゃねえか……。切り直しだ。フライパンをさっと洗って……と、ちょ! 水飛ぶな! やっば厨房水浸しだ」
連狼「だ、大丈夫か?」
連狼が心配そうに声をかける。
ディアー「あんま大丈夫じゃないっす。とりあえずキャベツ切って、またタマネギ切って。後は肉は羊肉があるな。それ使おう」
連狼「厨房の水は他の者に任せてもよいのだぞ。まずは料理に集中せい」
ディアー「ありがとうございます。んで、肉炒めてキャベツ炒めて、タマネギ炒めて……て順番どうだっけ? ええい! とりあえず炒めるぞ! 早さ重視だ!」
ディアーは冷静なときなら出来ている炒める順番も、今日ばかりは全く守れずにいた。
ディアーの中でもどかしさがよぎる。
ディアー「んで、味付けは醤油でいいや。とりあえず一品仕上げるぞ」
フェイがいつもより遅れてやってきた時、ディアーはまだ調理中だった。
フェイ「おはよう、レン嬢。今日はまだ食事を摂っていないようだな」
連狼「ああ。珍しくディアーが遅刻したのでな。今かなーり焦って作っておる」
フェイは驚いた様子でディアーを見て、連狼に向き直る。
フェイ「それは本当に珍しいな。宮廷料理人になってから初めてか?」
連狼は愉快そうに笑いながら答える。
連狼「今日の飯はあまり期待せん方がよいぞ。手順がバラバラなのでな。ミスも多い」
フェイ「なるほどな」
ディアー「はあぁ……。出来たっす。一応」
連狼「おう、ありがとな。どれ、いただくとしよう」
ディアーは落ち込んだ様子でそれを眺める。
連狼「……うむ。たしかにこれは、お主の想像通りだろう。味は濃いし、タマネギはまだ青さが残ってる。キャベツも芯に近い部分に火が通っていない。肉の臭みも消し切れてないのう」
ディアー「ですよね……。すんません、中途半端なもんだして」
フェイ「私も一口いただこう。……なるほどな。普段どれほど気をつかって料理してるかが分かるな」
ディアー「すんません……」
連狼「まあ悪い点ばかりではない。この醤油の焦がし具合は中々美味じゃったぞ。香りも良かった。不幸中の幸いだな」
ディアー「すんません……」
連狼「たまにはこういう日があっても良かろう。それに、お主はちと頑張りすぎじゃ。だからこれは主の命令じゃ。今日は休め」
ディアー「本当に、何から何までありがとうございます」
連狼「これからはたまには休むことも覚えるのじゃ。他の宮廷料理人もいるのだから」
ディアー「はい……」
ディアーにとって初めての大きな失敗。
それは焦がしたかのようにほろ苦い経験だったようだ。
ディアーさんもこんな失敗するんですね。というのも、私が今日似たような失敗をしまして……。
失敗した直後は落ち込んだし怒ったし、感情が揺れ動きましたが、せっかくだからこの経験を作品に昇華しようと思い立ったのが、今回のエピソードを描くきっかけですね。
完璧じゃないからこそ、普段どれだけ頑張ってるかが分かる。そんなエピソードになればと思います。




