1-19. 幕間
前話のまとめ:男性の女性化は歴史の必然でした。
牛頭一作は児童保護施設で育った。それより前の記憶は無い。何でも、親が育児放棄したんだか何だかで、乳母ロボットが自分を連れて家を出てくれたらしい。それだけ聞けば十分だと思った。詳しい事情は聞いていない。自分は要らない子だったのかも知れない、その思いは今でも尾を引いている。
乳母ロボットは優しかった。施設の先生も優しかったけど、怒ると怖かった。施設の子供達は全員が友達で、全員が家族だった。毎日賑やかで、不自由な事も多いけど楽しかった。
施設には時々里親が現れて、誰かが貰われていった。その後も連絡を取り合って、時々会って話したりした。今の生活の愚痴をこぼす奴らはとても楽しそうで、そんな姿を見て羨ましいと思う事もある。でも仲間が幸せになれたんだと思うと、純粋に嬉しかった。
中学生の頃。一作の反抗期は暴力には向かわなかったけれど、大人の注意を聞く耳は捨てた。非暴力不服従という言葉を知って少し酔っていた。乳母ロボットの言葉にも耳を貸さなくなってきた頃、ギャルゲと出会った。
特にその大きく誇張表現された胸に惹かれた。おっぱいは母性の象徴とも言われる。もしかすると母親という存在への歪んだ憧憬なのかも知れない、と考えたりした。早速乳母ロボットの容姿を変え、大人の真似をして名前を与えて、藍と呼んだ。藍は何も言わず、全てを見通したように、新しい姿でにっこりと笑ってくれた。涙が出た。
それからはギャルゲを遊び倒した。登場人物に巨乳がいるかどうか、それだけで好き嫌いを決めた。海外製だろうが関係無い。しかし海外製は日本人の感性と合わない物も多く、値段が高い事もあって、普通のオタクは手を出さない。手持ち資金も有限なので、海外製については藍にお勧めを選んでもらった。
そんな頃に克樹と出会った。自分とは何もかも違う。自分には持てなかった物を全て持っている克樹に最初は反発したが、徐々に仲良くなっていった。巨乳好きにもギャルゲ趣味にも何も言わず、普通に接してくれた人間は克樹だけだった。
高校入学を機にブログを始めた。
中二病全開で色々ぶちかました。ペンネームは Issac Goz とする。イギリスを表す .uk で独自ドメインを取る。サイト全体を貴族趣味な雰囲気でまとめる。言語は英語をメインとし、日本語はサブ記事の扱いとする。自己紹介は敢えて載せない。記事は自分で書くが、それを藍にイギリス英語へ翻訳してもらう。それも貴族を意識した格調高い英語とする。
ブログのテーマはギャルゲだ。感想あり、エッセーあり、時には自分で新しいギャルゲの設定とストーリーを考えたりした。
そんな頃、涼子と恵美に出会った。元々同じクラスだったのだが、特に接点が無くて、それまではほとんど話をした事が無い。涼子が恵美を連れて克樹に話し掛けるようになったので、いつも一緒にいる自分とも話すようになったのだった。
4人でつるんでいる内に、涼子から色々な情報が入ってくるようになった。今時の女の子の興味関心に始まり、ファッション、流行の変遷、果ては女心の機微に至るまで、なぜか説教付きで解説される事が多かった。
大きなお世話だ!それが一作の心の声だった。しかし理由が何であれ、女の子を相手に頭から怒鳴りつける事は無かった。一作は優しかった。




