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日本人は働く必要が無くなりました。  作者: Katz
第1章 田舎暮らしに憧れて
16/32

1-13. 歓迎

前話のまとめ:世話になった人達に迷惑を掛けない形で借金を整理しました。

 杉も含めてタリ山を丸ごと無償譲渡する話を達成から持ち掛けられ、克樹は驚いた。


「冗談ですよね?あれだけの杉があれば、上手く輸出できれば相当の財産になりますよ?」

「いや、本気だ。昔はこんな話は出来んかったがな、今はベーシックインカムが整備されて、財産を抱える意味が薄くなった。まして儂らはこんな年寄だ。若返りで寿命が延びたとは言え、この先何年生きられるかわからん。子供達も独立して立派にやっとるしな。今更財産を抱え込んでも意味は無いんだ」

「しかし…」

「その代わり条件がある。タリ山の中にももたり家の墓がある。正造先輩と奥さんと、先輩に仕えたロボットも眠っているんだ。法事をしろとは言わないから、墓の手入れを欠かさないでくれないか」

「ロボットもですか。珍しいですね… わかりました。そういう事なら、お話をお受けします」


 そこからは、百足正造の最期を看取ったロボットの話を紹介してくれた。


 こうしてタリ山は克樹に譲られる事になった。電子書類や電子署名、役所への申請等々の手続きは、秘書ロボットを通じてほとんど一瞬で済む。あし家ですべての手続きを終え、克樹は帰宅した。


 夢への第一歩を踏み出せたと、克樹は大喜びで家族に報告した。両親も兄も喜んでくれた。


 ☆ ☆ ☆


 早速、独立の準備を始める。


 タリ山から車で1時間弱の所に、人口1万人位の小都市がある。秘書ロボットのもりを連れて、ひとまずの拠点を探す。


 不動産紹介業は国営だ。


 そもそもデータの蓄積と検索だけであれば、巨大なデータベース1つを皆で共有すれば事は足りる。情報収集力が収益源だったのは、今は昔の物語だ。


 検索の為のユーザーインターフェースも様々に工夫されたが、最終的に1つに落ち着いた。業務の独占と言えば聞こえは良いが、それが逆に仇となった。原価の比較対象が無い為に、猛烈なデフレ時代に強烈な値下げ圧力に晒されて、廃業せざるを得なくなった。国民にとっても必要な仕事であった事から、業務を国が買い上げて今に至る。


 顧客の要望を引き出して検索条件に落とし込む、即ちコンサルティングについても、人間ではなくてAIの仕事になった。その結果、そこに接客ロボットが介在する余地すら無くなった。秘書ロボットで十分なのだ。


 克樹も守を通して不動産データベースを検索、候補を幾つか出した。後は現地で実際に見て回る。今回は長くても数ヶ月程度で出て行く予定なので、利便性などは余り重視していない。タリ山からの距離を重視して適当なマンスリーマンションを決定。守を通してその場で契約し、テレビ電話で両親に報告した。


 家事ロボットのひなたには部屋探しの間に荷造りをしてもらっていた。と言っても仮住まいという事もあり、荷物は殆んど無い。その僅かな荷物を陽に持ってきてもらい、その日から入居した。


 拠点の確保が落ち着いた所で、一応、達成に連絡を入れた。すると明日の夕方にでも時間を作って欲しいとの事。村人への紹介も兼ねて歓迎会を開きたいと言う。


「あまり大袈裟な事をしていただくのも恐縮なんですが…」

「なに、儂らの気持ちだ。それに、皆、酒飲みでな。集まって飲む理由が欲しいんだよ」


 そう言われると断り辛い。


「では明日お伺いしますが… 御挨拶になるような手土産を持っていこうと思うんですが、何が良いでしょう」

「いやいや要らん要らん。克樹君はとにかく身一つで来てくれればいい」

「でもそういう訳には…」

「どうしても気が済まないのなら、一升瓶の1本も差し入れてくれれば良い。酒が入れば皆喜ぶ」


 酒飲みはこれだから…と内心思いながら、陽に言って良い酒を用意した。


 翌日、指定の時間に日足家を訪れた。日足夫妻に公民館まで案内されて中に入ると、老若男女がずらりと並んで席に着いている。克樹が目を白黒させている内に、日足夫妻と共に正面席に座らされた。


 達成が立って挨拶をした。


「皆、今日は集まってくれてありがとう。こちらが新しい仲間のどう克樹君だ。あの百足家の傍系になる。今回、タリ山を受け継いでくれる事になった。儂は本家の跡取りが現れてくれたと思っとる。皆もそのつもりで宜しく頼む」


 え?本家の跡取り?誰が?克樹は何が何だかわからなかった。

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