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日本人は働く必要が無くなりました。  作者: Katz
第1章 田舎暮らしに憧れて
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1-10. 昔話

前話のまとめ:達成が食い付きました。

 克樹の曾祖母がさとだったと聞いて、達成は非常に興奮していた。


「まぁまぁ、あなたったら。克樹君、驚かせてごめんなさい。いえねぇ、聖美ちゃんは当時、この辺りのアイドルだったのよ。あの頃の若い男の子はみんな聖美ちゃんに夢中でねぇ。可愛くて、誰にでも優しくて、女の子にも人気があってね。ああ、懐かしいわぁ」


 雅美までが克樹の向こうに誰かの影を見るような目をした。


「はぁ、そうだったんですか」


 としか克樹には言いようが無い。


 それから達也と雅美は2人で盛り上がる。完全に地元の年寄の昔話だ。克樹には2人が何を言っているのかさっぱりわからない。仕方無く、お茶とお菓子をいただきながら2人の話を黙って聞いている。と言う風を装って右から左に聞き流している。


 摘まんでいたお菓子が無くなり、家事ロボットがお代わりを持ってきて、ようやく日足夫妻は落ち着いたようだ。


「おっと、済まんかった。年寄の昔話に付き合わせてしまったな。克樹君があの山を選んだのは、聖美ちゃんの事があったからかい?」

「いえ、全くの偶然です。この山の事を家族に話した所、父が初めて曾祖母の事を教えてくれました。まさかこんなに盛り上がるとは…」

「はっはっは、いやいや、済まん済まん。そうか、偶然か。それならあの山について色々話しておいた方がいいな」


 昔々の話。

 この辺りの大地主は百足家と言った。

 歴史と共に地主としての力は小さくなっていったが、それでもずっと地元の顔役だった。


 最後の当主の名前はしょうぞうと言う。

 我儘も言うし口も悪いが気風が良く、この辺りでは殿様と呼ばれて慕われていた。


 聖美は正造の妹で、地元のアイドルだった。

 村の外の男と結婚してどうという苗字になった事までは噂で聞いた。


 あの山は元は百足家の持ち物で、タリ山と呼ばれている。

 正造には跡継ぎが無く、百足家は十五年程前に途絶えた。

 その際に、あの山は管理してくれる人に譲りたいとの遺言が残された。


 正造は達成の学校の先輩に当たる。

 5年違いで、学校で直接顔を合わせた事は無いが、村では兄貴分として何かと頼りにした。

 その兄貴の遺言なので、タリ山は適切な人間に引き継いでもらいたい。

 今は達成が譲り受ける形にして、とりあえず現状を維持している。


「そういう訳でな、タリ山を買いたいと言う人物には話を聞く事にしとるんだ。2回くらいは外国の会社から買い取りの話もあったんだがな。要するに杉材だけが欲しかったようでな、いずれも断った」


 今の日本の木材は海外で人気だ。林業ロボットが普及した事で手入れが行き届き、品質が良い。日本では物価が安いので、日本人の感覚ではかなりの高値であっても、海外で飛ぶように売れる。


「あれだけの杉があれば、うまく輸出できれば一財産になりますね」

「そうなんだよ。克樹君は杉を売る話はせんかったな」

「僕は杉には興味がありませんから。最初の丸太小屋だけ作らせて貰えれば、それ以外の杉は全部、日足さんにお戻しします」

「ふっふっふ、欲の無い事だな。うん、良いだろう。タリ山は無料で克樹君に譲ろう。山に生えている杉も全部貰ってくれ」

「えっ?」


 ベーシックインカムで収入の心配の要らない時代になったとは言え、一財産をそのまま譲ってくれると言うのだ。昔と違って今は贈与税も無い。丸々貰い得だ。克樹は驚いた。

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