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吸血鬼にはゐと住みづらき世界  作者: へーべー
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13/16

覚醒大異変!悪魔の血を持つヴァンパイア

~ここまでのあらすじ~


洞窟内で迷い、遭遇したミイラに血を全て吸われた天地一国てんちいちくには逆にミイラのような姿になってしまったが吸血鬼として復活。

一国を襲ったミイラは吸血鬼カルレオーノとして復活し一国いちくに中食奴隷人(チユドレン)と呼び下僕として動けと命じた。

一国ミイラは血が足りなさ過ぎて喋れない、能力なし、体力なし。

カルレオーノの逆鱗に触れる度にバラバラにされ再生する。それくらいの取柄しか無い最弱吸血鬼。あげくにキュウリと名付けられる始末。

だがミイラになった事で研ぎ澄まされた五感により風の流れを読む事で洞窟迷路を脱する事に成功した。

かつてカルレオーノを火あぶりの拷問にかけた下食奴隷(ゲドレ)のリーダーとカルレオーノは対峙した。

下食奴隷(ゲドレ)のリーダーは自分を悪魔崇拝によって呼び出された悪魔デーモンのジジャールだと名乗った。

そしてカルレオーノの姉と弟を殺して喰ったと言った。それを信じないカルレオーノとの戦闘が始まった。

戦闘の末カルレオーノはジジャールを捕らえ記憶を読むに至った。

ジジャールの記憶の中では姉と弟の死を決定づける出来事は起きていなかった。

記憶はそこで途切れ、ジジャールの口から本体の悪魔デーモンが飛び出した。巨大な蜘蛛の悪魔デーモンで背から螺旋状の角の生えたヤギの顔をした上半身が生えている。再び戦闘が開始され、そこに洞窟から駆け付けた一国が戦闘に加わった。駆け引きの末、一国はジジャールの首筋に噛み付く事に成功。

戦闘は終局を迎える。


~吸血鬼用語~


亜徒類(アトル)・・・純粋な吸血鬼一族

姉徒麗(ネトリ)・・・姉

弟徒君(オトク)・・・弟

兄徒君(ニトク)・・・兄

下食奴隷(ゲドレ)・・・人間全般、エサ、奴隷

中食奴隷人(チユドレン)・・・吸血鬼となった人間、下僕

上食奴隷人(ジユドレット)・・・高い戦闘力、または特殊能力を持つ吸血鬼となった人間

特食同君(トゥドゥク)・・・純粋な吸血鬼と同等か近い力を持つ吸血鬼となった人間

極万年ゴルムンヌン・・・凄い長い年月

牙毒感染(ガドカン)・・・牙によるウィルス感染

髪々通信ガガツー・・・髪と髪を合わせる事で会話が可能になる喋れない一国の為の通話方法

亜徒蘭血国(アトランティカ)・・・吸血鬼の国

血国王(ティカオ)・・・吸血鬼の王

ジジャールの体内から急激に血液が抜かれて行く。枯渇していた一国の体に血液が流れ出す。

猛烈な勢いで体内に循環する。

ジジャールの体はみるみるやせ細っていく!

何だこれは!?吸い取られているのは血液だけではない!!体内の全てが吸い取られているようだ!!

このままではマズい!!



「うがあっ!!」

ジジャールは背中に手を伸ばし背負い投げの要領で投げ飛ばす。



一国は空中で一回転し難なく着地した。

堂々としたそのたたずまいはキュウリと呼ばれムンクの叫びに似ているという面影は何処にも無かった。

己の変わりように一国自身が一番驚いていた。一国は己の顔の形や腕や胸、腹筋の筋肉を確かめた。

血が巡り体は筋肉で満ち人間であった頃のだらし無い体つきは欠片も見えない。


「これが俺・・・?」


顔の表情も引き締まり、眼光鋭くカルレオーノに引けを取らない自信が全身から満ちている。

逆立った黒髪から一本の銀髪がなびいている。身長も伸び160センチまで回復していた。

ボロボロのカッパが逆に格闘家を思わせる。



しかし一国は自分の両肩を抱きキツく締め付け小刻みに震え出した。

熱い!熱い!身体の中が熱い!血が沸騰する!

あ、あ、あ!



ガタガタ震え、眼と鼻から血が流れる。ポタポタと血が床に垂れ地面に接触したと同時に蒸発した。

い、い、い、い、いぃ!!

痛い!痛い!内側から何万本もの針が体外に出ようとしているようだ!裂ける!身体がバラバラに裂けそうだ!



ブシュッ!と一国の全身の汗腺から血が噴き出し、血は空中で蒸発!そのまま背後にバタン!と倒れた。

一国は死んだように動かなくなった。



血を失ったジジャールはやつれた表情を見せながらもククと笑みを浮かべた。

「どうやらお前らにとって悪魔おれの血は猛毒だったようだな!お前らにとっても賭けだったようだが賭けに敗れたな!結局は俺の勝利で幕を閉じるのだ!」




「違う・・・。賭けには勝ったんだ。」

一国は床に倒れたまま大の字状態で天井を見ていた。


一国は倒れた状態から重力を無視しかかとからフワッと起き上がった。


「痛かった・・・死ぬかと思ったけど・・・。完全に馴染んだみたいだ。」

両手を一度開き、強く握り拳を作る。バキバキッと骨が鳴る。

「主様を固めてる柱を解け。そして黙ってもう一度主様に記憶を読まれるんだ。お前の処分はその後主様が下す。」

ジジャールの方を全く見ず、自分の拳を見ながら喋る抑揚のない淡々とした口調が逆に凄みを帯びていた。



「処分?なぜこの俺が処分を受けなきゃならん!形勢が逆転したとでも?形勢は何ら変わってはいないんだぜぇ。お宅らが圧倒的に不利だという事実は何も変わらんのだ!!」



ジジャールの蜘蛛の口がエイリアンのようにメキメキ!と大口を開けると2本の白い手が大きな袋を体内から取り出した。

蜘蛛である自分と同じくらいの体積があろうかという袋を地面にドサッと置いた。


「これが俺の奥の手だぁ!何だか分かるかぁ!お前なら分かるよなぁ!吸血鬼の主様よぉ!」


何だあの袋?何を企む?一国には何の事だか見当もつかなかった。

「袋です主様。奴は袋を体内から取り出しました。何か分かりますか?」



袋・・・?カルレオーノは黙ったままでいる。



ジジャール2本の白い手で袋を掴みスナック菓子のパーティ空けのように中央から外に向けて引っ張る。

袋は中央から裂け中に入っていた大量の粉が空中へ舞う。



粉!?一国はそう呟いた。



一国のその言葉にカルレオーノの全身は雷に撃たれたように電気が走る。「まさか!」



「粉では無い!これは灰だぁ!!」

蜘蛛は大口を開け空中へ舞った大量の灰を勢いよく吸い込んだ!

床に転がっているイスやテーブルが動くほどの吸引力で余すことなく全ての灰を吸い込んでいく!


「そうだ!これはお仲間が太陽で燃え尽きてできた灰だぜ!お宅が弟徒君(オトク)と呼ぶ吸血鬼の成れの果てだぁ!!探していた仲間がこんなになっちまって済まなかったなぁ!!」

「お前らが今まで戦っていた俺は力を最弱にまで落とした絞りかすも同然の姿よ!天使のガキに目を付けられない為の策だったが、ここまで来たら関係ねぇ!」


「お前は俺の記憶を読んで知ってるなぁ!天使のガキに地中で潰された俺を!

俺はわずかに残った力を振り絞り口から出した小さな手で土を掻きコインほどの穴を地上に開ける事ができたのだ。かなりの時間を要したがな!

その穴から糸を延ばし住人を操って教会の地下にいる吸血鬼を持って来させた!お宅が弟徒君(オトク)と呼んでる奴だよ!

そして俺の頭上で朝日浴びせ燃やし尽くしてやったのだ!その灰を少量ずつ口に運び再び力を取り戻した俺は地上に出る事ができたのだ!

灰の大半は袋にいれ温存し口の中で眠らせていたのだ!今回のような時の為にな!

お前の仲間、弟徒君(オトク)だっけか?少量の灰でも大いなる回復をもたらしてくれたぞ!さぞかし大物だったのだろうな!

お前らの灰も楽しみだぜ!美味しく喰ってやるわ!!」



ジジャールの言葉通りやつれてた身体は回復し、それどころか倍ほども体積が膨れ上がっていた。

「力がどんどん満ちる!まだ力が膨れ上がるぞ!全盛期を超える力だ!」



「主様の弟様を灰にしただと!信じると思うか。信じてはいけません主様!デタラメです。」



「分かっておる!」

言葉とは裏腹にカルレオーノはジジャールの言葉が嘘ではないと直感で感じた。真実であるから絶望する。ジジャールは相手の心を挫く術をよく知っていた。

カルレオーノは一筋だけ涙を流し、それ以上の感情を消した。絶望は相手を喜ばせるだけなのだ。



「俺はたまには真実も話すんだぜ!」



ジジャールは元の3倍も膨れ上がり天井に頭がつかんばかりに巨大化していた。

一国は目の前の立ちはだかるジジャールを見上げなければならないほどであった。

その重量で蜘蛛の足元の板が穴を空ける。



「俺の血を吸って弱った時に叩いておくべきだったな!また絶望的に差が開いてしまったなぁ!おチビさん!ククク」



「全盛期を超える力?それで?クスクスクスクス!もう一度主様に記憶を読まれる事は変わらない。主様がお前に処分を下すのも変わらない。」

一国は曲げた人差し指で鼻に触れながらクスクスと笑った。

「絶望的な差・・・見せてやるよ。」

ふふふ!ハハハハハハハ!!



一国が腹を抑えて笑う。その笑い声につられるかのように建物がカタカタと揺れ出した。

その揺れは次第に激しさを増す。建物全体が揺れる。床に転がるイスやテーブルが小刻みにバウンドする。


ジジャールは静かに辺りを観察する。地震ではない。風が振動しているのだ。何かが接近している?



振動が和らいだと感じた瞬間、ジジャール頭上で大爆発が起きた!

爆弾が爆発したわけでは無い。黒い影が建物に激突し天井から上、2階の住居部分もろとも屋根を吹き飛ばしたのだ。

ジジャールの頭上を黒い物体がうねりながら通過して行く。

それは何万羽とも分からない蝙蝠の大群。群れでうねりながら飛ぶ様は、さながら黒い龍のうねりであった。

さすがのジジャールも呆気にとられ、

天井を無くしたバーから見える黒龍の如くうねる蝙蝠群が満月に照らされながら優雅に泳いる様に目を奪われた。



ハッと我に返りバー内に目を戻すと目の前に一国の姿は無かった。

辺りを見渡すが存在を発見できない。

もう一度上空を泳ぐ蝙蝠軍に目をやり凝らして見る。

一国はいつの間にか蝙蝠の大群にまたがっていた。




一国は目一杯の風を感じた。風が心地よかった。

清々しかった。地平線まで見渡す限りの空、遮るもののない自分だけの世界のような気がした。

まるで王様になったような気分に浸った。



一国は黒龍の背から飛び降り手を真一文字に広げると。

満月の逆光を浴びたシルエットはまるで十字架のようであった。

黒龍は四散し何万羽という蝙蝠大群は深夜の空を更に黒く染めた。



何万羽という蝙蝠の大群が次々と一国の体内に取り込まれて行く。取り込まれた箇所から一国の全身を黒く染め上げる。

上空を黒く染めた蝙蝠は1匹残らずその姿を消した。

カルレオーノの蝙蝠内包量は380羽

に対し一国の内包量何と4万羽!その差カルレオーノの100倍強!!



一国の背から巨大な羽が生えひと羽ばたきすると地上の砂を舞い上がらせながら地面に降り立った。

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