下食奴隷(ゲドレ)襲撃3日目~天使チコエルと鉄槌ガングリコン~
~ここまでのあらすじ~
洞窟内で迷い、遭遇したミイラに血を吸われた天地一国は逆にミイラのような姿になってしまったが吸血鬼として復活。
一国を襲ったミイラは吸血鬼カルレオーノとして復活し一国を中食奴隷人と呼び下僕として動けと命じた。
一国ミイラは血が足りなさ過ぎて喋れない、能力なし、体力なし。
カルレオーノの逆鱗に触れる度にバラバラにされ再生する。それくらいの取柄しか無い最弱吸血鬼。
だがミイラになった事で研ぎ澄まされた五感により風の流れを読む事で洞窟迷路を脱する事に成功した。
かつてカルレオーノを火あぶりの拷問にかけた下食奴隷のリーダーとカルレオーノは対峙した。
下食奴隷のリーダーは自分を悪魔崇拝によって呼び出された悪魔のジジャールだと名乗った。
そしてカルレオーノの姉と弟を殺して喰ったと言った。それを信じないカルレオーノとの戦闘が始まった。
戦闘の末カルレオーノはジジャールを捕らえ記憶を読むに至った。
~特殊名~
亜徒類・・・純粋な吸血鬼一族
姉徒麗・・・姉
弟徒君・・・弟
下食奴隷・・・人間全般、エサ、奴隷
中食奴隷人・・・吸血鬼となった人間、下僕
極万年・・・凄い長い年月
牙毒感染・・・牙によるウィルス感染
髪々通信・・・髪と髪を合わせる事で会話が可能になる喋れない一国の為の通話方法
亜徒蘭血国・・・吸血鬼の国
血国王・・・吸血鬼の王
教会地下、悪魔崇拝儀式の場にカルレオーノの弟、弟徒君はT字の木の柱に磔にされていた。
胸には杭が刺さり柱に両手両足を釘で柱に打ち付けられている。胸の杭によって完全に力は失われており脱出は絶望的な状況だった。
「磔は気に入ったかい?君のお仲間を昔このように磔にして色々実験したんだ。弱点を知る為にね。だが今は君を拷問して口を割らせる時間は無いようなんだ。住民が君の仲間が飛び去って行くのを目撃した。少なくても2人君の他に仲間が居る。彼らを捕らえる罠をこれから仕掛けなくちゃいけない。寂しくないように見張りを一人置いて行くよ。じゃあね!」そう言ってジジャールは白い魂人形を1体残し地下の部屋から出て行った。
教会の長椅子に座りながらジジャールは思案した。
吸血鬼3人、日の出の太陽で殺したこいつらの灰を喰えば恐らく力を取り戻し魔界へ帰れる。
だがそれだけじゃ勿体無いじゃないか!
奴らの国への行き方を突きとめれば3人といわず喰いたい放題!一体どれほどの力を得る事が出来るだろうか!
魔界に君臨する力を得る事も可能!
奴らを完全に捕らえ吐かせるのだ!
ジジャールは口から白い糸を無数に排出し、糸はバラけ町の中を無尽蔵に伸びて行った。
伸びた糸の先が町の住人に接触すると住人は今までしていた作業をピタッと止め外に居た者は家に戻り、
家事をしていた者も手を止め銃や包丁や鉈、斧などの武器を一か所に集め始めた。
ジジャールはどんな些細な願いでも叶えてやる事で魂を操る能力を持っていた。叶えた願いが重ければ重いほど精神の糸には抗えない。
この十年弱で町の住人を掌握し信頼を得、大半はジジャールの手の内にあった。
そしてジジャールが町をあげて目的を果たしたい時にこの能力を使う。糸により住民大半の意見は一致する。
糸に操られていない者も集団催眠のように洗脳され誰一人として逆らえない空気を作り上げる。
糸で繋がれた住人の目はジジャールの目と化す。そうして町全体がジジャールの意志のままに動く統率の取れた戦闘集団となるのだ。
吸血鬼を捕らえる為の罠も統率の取れた無駄のない動きで作り上げてゆく。
各々が武器を手に持ち、銃を持つ者には銀の弾丸が手渡され万全の備えで待ち構える。
銀の弾丸で吸血鬼の動きを鈍らせ、罠に追い込み捕らえ、木の杭で完全に動きを止める。
ここまでの準備が整えられている事など知る由もないカルレオーノ達に勝ち目があるハズが無かった。
たかが下食奴隷、非力な餌程度にしか思っておらず油断も相まっていとも容易く捕らえられてしまったのだ。
カルレオーノと姉共々胸に杭を打たれ、両手足を切断され木の柱に磔にされる結果となった。
姉徒麗は首までも切断されていた。
切断されたパーツは建物の一か所に集められ、本体へと戻らないよう動きを封じられ保管された。
カルレオーノは何度も火あぶりにされながらも無念の咆哮を上げるしかなかったのだ。
カルレオーノは出血多量と火あぶりによる再生を繰り返し戦意を喪失、意識を失う。
姉も既に拷問を受け両手足首を切断され柱に磔にされている為、抵抗する事は出来ない。
「あららぁやり過ぎちまったかなぁ。とうとう口を割らなかったなぁ。」吸血鬼の国への行き方を聞き出したかったジジャールはガッカリした。
「なら次のプランで行くか・・・。」
ジジャールはこの仲間の状況を教会の地下に拘束している吸血鬼に見せ口を割らせるしかないなと思った。
このままダラダラ時間が経過してしまえば朝になってしまう。
ジジャールにとってはそうなったとしても吸血鬼の灰が手に入るのだから問題はないのだが、
己のレベルアップの可能性、吸血鬼の国というものを諦め切れなかった。
「仲間意識が強ければいいがなぁ・・・。」
ジジャールが糸で操っている者達に教会から吸血鬼を連れてくるよう命令しようとした矢先、ジジャールにとって予期していない事態が起こった。
上空に暗雲が立ち込めたかと思うとカルレオーノと姉徒麗を磔けている柱に雷が直撃した。
ジジャールの目の前で柱は砕け散り、柱に縛っていた鎖も解けカルレオーノと姉徒麗は地面に突っ伏した。
驚いたのはジジャールだった「おいおい!どうなってる!」と困惑した。
ジジャールの上空で雲が光り今度はジジャール目掛け落雷した。「うおっ!」間一髪のところで避け、雷は地面に穴を空けた。
電気を浴びた突風に押されジジャールが後ずさる。体に電気が走り総毛立つ。
上空を見上げると一軒家の屋根に足を組んで座っている幼女が目に入った。
全身を白で纏いヒラヒラのワンピースを身に付けているかのようなシルエット。深夜だというのに白くぼんやりと光っていた。
手に持った槍にも似た杖をジジャールの真上に向け杖を一瞬上下させ何かを口走った。
するとジジャールの上空で雲が光り落雷した。ジジャールはその場から飛び退き、またしても間一髪のところで避ける事ができた。
「くそったれ!何なんだ!」
「避けるでない!悪魔!」屋根の上から飛び降りた少女は背中の鳥にも似た羽をバサッと羽ばたかせフワリと地面に降り立った。
組んだ腕には少女の身長以上ある杖を持っている。
杖の先は槍のような形状で刃のすぐ下に水晶のようなガラス球が付いている。球の中にはどす黒い煙のようなものが渦巻いていた。
「天使!?・・・か!!」ジジャールは顔をしかめる。
「いかにも。あちしは天使チコエルと言う。悪魔!お主らはこっちの世界に来てはいかんのじゃ。秩序が乱れる。」
喋り方が年寄りだが見た目と声が完全に幼女な天使はチコエルと名乗った。
10歳に満たないように見える、華奢で強そうには見えない。
「ガングリコン!落雷!」とチコエルが口走りジジャールの上空に向けて杖を数回上下させる。
すると雲が光りピシャア!という音と共に複数の雷がジジャールに降り注ぐ
「うおおお!!」ジジャールは必至の形相で雷を避ける!
落雷時の電圧は200万~10億ボルトに達する。直撃すれば悪魔のジジャールといえど一溜りもない。
「待て!待て!待て!話をしよう!!」何て容赦のないガキだ!ジジャールは降参する合図で両手を振る。
「話?何の話じゃ?」チコエルは杖を止めて質問した。
「分かった!帰ろう!俺は魔界に帰るよ!!その、話し合い・・・。」
「ふ~む・・・潔よいな。あちしとしてはお主を始末して点数を稼ぎたい所だがの・・・。他の悪魔の2体の情報と引き換えで見逃してやらん事もないぞ?」
ジジャールは言葉に詰まった。
他の悪魔の情報だと!?そんなもの知るハズがない!しかしあの杖は厄介だ!
あれが噂の鉄槌ガングリコン!集めた人間の悪意を自然エネルギーに変える天使の武器か。
本来人間に罰を下すのが目的の道具じゃねぇのかよ!
あれにはとてもかなわねぇ!何とかこの場を逃げ切らねぇと・・・。
ジジャールは何かに閃くと口を開いた。
「他の悪魔の情報というならそこに転がってる2体!そいつらが悪魔だぜ!人間を食い物にする悪魔さ!俺が捕まえておいたのさ!」
ジジャールはカルレオーノを指さし勝ち誇ったように言う。
一瞬間が空く。チコエルは目をパチクリしながら言った。
「愚かじゃの!そんなくだらない誤魔化しが通用すると思うたか?そやつらは吸血鬼じゃろが!だから助けたのじゃ。」
カルレオーノの方を振り向きもしないでチコエルは答える。
「はぁ?ちょっと待て!吸血鬼だからって何で助ける!天使が吸血鬼を助けるなんて話聞いた事がないぜ!」
「天使は秩序を保つのが役目。吸血鬼は絶滅危惧種!貴重なのじゃ。人間の天敵も必要なのじゃ。」
「なんだそりゃ!だったら悪魔も見逃してくれよ!」
「こちらに来た悪魔を始末するのはあちしの役目じゃ諦めよ!」
そう言うと杖を水平に振る
「ガングリコン竜巻!」ジジャールの目の前につむじ風が起こると一気に巨大化し竜巻となった。
ゴォオオ!!という轟音と共に付近にあるあらゆる物を巻き込んでゆく。
ジジャールは竜巻に吸い込まれようとするも口から触手のように複数の手を伸ばし建物のドア付近の柱に捕まった。
竜巻に吸い込まれまいとジジャールは必至に抗う。
チコエルは杖で竜巻を押すように動かすと竜巻はジジャールに向かって進みだす。
「冗談じゃねぇぜ!!」ジジャールは伸ばした手を縮め何とか建物の中へ逃れた。
「ホホ!逃げれると思うてか?」
竜巻が建物を巻き込むとその強力な突風で柱を折り建物の板を剥がしバリバリバリ!と分解していく。
上空に舞い上がった建物の破片と一緒にジジャールは竜巻に巻き込まれ投げ飛ばされた。
「うおおお!!」深夜の町にジジャール叫びが響いた。
チコエルの目の前に落下し地面に叩きつけられたジジャール「ぐげっ!」と悲鳴を上げた。
「くそぅ・・・!!」ジジャールは無念の声を出しながら体を起こす。
「ホホ!また会ったの」ニヤリとするチコエル
竜巻が止むと直撃した建物は土台しか残っておらず巻き込まれた家具や建物の破片がバラバラと辺りに降り注いだ。
建物の破片と共に降ってきた中に切断された手足が混ざっていた。
手足はズルズルと引きずられカルレオーノと姉徒麗の本体へと向かって動き出した。
ジジャールは両手を上にあげ膝をついたまま降参のポーズを取りそれを見つめていた。
そして天使から脱する案を練っていた。ガングリコンには使用制限がある。集めた人間の悪意が尽きれば使用できなくなるハズなのだ。
ならば糸で人間を操り天使を攻撃させて杖で反撃させれば良い!使い切れば勝機はある!そう考えていた。
チコエルはガングリコンの先をジジャールに向けてけん制している。
「さて、どうしたものかの・・・。」チコエルはチラリとカルレオーノの方に目をやった。その時
今だ!!ジジャールが心の中で合図を出す。
すると建物の陰から斧を持った数名の人間がチコエルに向かって突進した。
チコエルはそれに気が付いたが慌てる様子も無く
「ガングリコン地割れ」と言いながら杖の先で地面をコンと叩くとそこから地面に細い亀裂が走り、その亀裂はジジャールの真下を通り抜け後方にまで伸びた。
ジジャールはその亀裂を目で追った。自分の背後にまで伸びた亀裂に目を奪われ思わず振り返ってしまった。
その場から脱する一瞬の間を奪われ、バカッ!と割れた地面に対処する事が出来ずジジャールはあっと言う間に地割れに飲み込まれてしまった。
チコエルが杖を地面から浮かせると地割れはバグン!と音を立て閉じてしまった。その瞬間糸に操られていた人間の意識もジジャールの支配から解かれた。
暗闇の中でジジャールは天使の声を聞いた。
「ずいぶん人間の悪意を失ってしもうた、また補充せねばな・・・。おい吸血鬼!お主らはそこから自力で何とかせよ。あちしの助けはそこまでじゃ。」
チッ吸血鬼共を逃がしちまう・・・。でも体が動かねぇ地面に潰されちまったようだ。疲れたなぁ暫く寝るのも悪くないか・・・。
そこでジジャールの記憶は途切れた。
そして60年後の現在・・・。
町のバーにてカルレオーノとの戦闘に破れ、両手足を切断され髪の毛で首を絞められていたジジャールは口を大きく開けた!
「む!」警戒するカルレオーノだったがジジャールは口を天井に向け何かを勢いよく吐き出した。
それは天井に張り付き、そのまま静止した。その物体から声が発せられた。
「ありがとう!!助けてくれたのだね!!私をその悪魔から救ってくれたのだね!!」




