下食奴隷(ゲドレ)襲撃3日目~悪魔の記憶~
~ここまでのあらすじ~
洞窟内で迷い、遭遇したミイラに血を吸われた天地一国は逆にミイラのような姿になってしまったが吸血鬼として復活。
一国を襲ったミイラは吸血鬼カルレオーノとして復活し一国を中食奴隷人と呼び下僕として動
けと命じた。
一国ミイラは血が足りなさ過ぎて喋れない、能力なし、体力なし。
カルレオーノの逆鱗に触れる度にバラバラにされ再生する。それくらいの取柄しか無い最弱吸血鬼。
だがミイラになった事で研ぎ澄まされた五感により風の流れを読む事で洞窟迷路を脱する事に成功した。
かつてカルレオーノを火あぶりの拷問にかけた下食奴隷のリーダーとカルレオーノは対峙した。
下食奴隷のリーダーは自分を悪魔崇拝によって呼び出された悪魔のジジャールだと名乗った。
そしてカルレオーノの姉と弟を殺して喰ったと言った。それを信じないカルレオーノとの戦闘が始まった。
戦闘の末カルレオーノはジジャールを捕らえ記憶を読むに至った。
~特殊名~
亜徒類・・・純粋な吸血鬼一族
姉徒麗・・・姉
弟徒君・・・弟
下食奴隷・・・人間全般、エサ、奴隷
中食奴隷人・・・吸血鬼となった人間、下僕
極万年・・・凄い長い年月
牙毒感染・・・牙によるウィルス感染
髪々通信・・・髪と髪を合わせる事で会話が可能になる喋れない一国の為の通話方法
亜徒蘭血国・・・吸血鬼の国
血国王・・・吸血鬼の王
カルレオーノの銀髪の一本がジジャールの額を突き刺すとジジャールの記憶が流れ込んで来た。
カルレオーノと姉、弟が洞窟より出て町を襲撃した3日目・・・。
ガストの体を乗っ取った悪魔のジジャールはソファーで横になりながら獲物が罠に掛かるのをバーの二階の暗い住居スペースで待っていた。
テーブルとソファーだけの全く生活感の無いその空間に深夜の心地よい風が窓からそよぎカーテンを揺らせていた。
「早く来い!吸血鬼!」
ジジャールは人間の生活が気に入ったわけでも、共存しようとしているわけでも全く無かった。やむをえない事情があったのだった。
悪魔崇拝者が自分を呼び出した日
あの日の教会・・・。
「吸血鬼共を始末して欲しい」という願いの元、ガストの体に乗り移った時に既に違和感があった。
空気が合わない。人間界での息苦しさ、力を吸い取られているかのような感覚に襲われていた。
この世界は居心地が悪い、さっさと終わらせる必要がありそうだ。
ガストの体を乗っ取った事でガストの記憶を共有し現在置かれている状況は把握する事ができた。
教会の外に徘徊している化け物共は傷を負わせても再生する。首を切り落としても復活する。人間の血を吸う。人間の頃の記憶や知能は無くなっている。主に夜に行動する。
昼間太陽が昇っている時間に姿を現さない事から弱点は太陽の光である事は明白、にもかかわらずその時間帯に攻撃を仕掛けたという記憶がこの人間には無かった。
夜に徘徊している吸血鬼に攻撃を仕掛けて勝てないと悟り、そこからは防戦一方。
昼間は突然襲われる事を警戒し、吸血鬼に遭遇しないよう食料を集める事しかしていない。
臆病者共の集まりだ。
「明日、朝から吸血鬼の始末を開始する!」そう言うとジジャールは人間達に斧や木の棒、包丁など適当に武器になりそうな物を手渡していった。
「俺達も、やるのか・・・?」人間たちは互いに顔を見合わせながら困惑していた。
「俺が奴らを太陽の下まで引っ張り出す!あんたらは吸血鬼共に止めを刺してもらう。なぁに太陽が弱点の奴らだ確実に弱る!あんたらにでもできるよ。」
「でも奴らは不死身だ!」俺達は既に試している!と住民たちの言葉には無理だというニュアンス、否定的な感情が含まれていた。
「だから徹底的に調べるのさ。確実にくたばる方法を!それを知らなきゃ解決にはならんだろう?」
「ちゃんと寝なよぉ。明日は激務だぜぇ。」そう言ってジジャールは教会の地下、悪魔崇拝儀式場に降りて行った。
次の日の朝、出口のバリケードをどかせ教会を出たジシャールは何の躊躇もなく一軒家の中に入って行った。
心の準備をする間もなく行動に移された住人たちは急いでジシャールを追いかけるも、ひと固まりで行動しビクビクと警戒する頼りない有様であった。
町の外で吸血鬼が徘徊している様子は無い。家の中にいるのだろうか。
住民達はひと固まりに集まりジジャールの入った家から少し距離を置き様子を見守る。
すると2階の窓が突然割られ外に人間が飛び出した。その人間は首から地面に激しく落下し首が変な方向に曲がり大の字に倒れた。
悲鳴を上げる住人達。すかさずその人間から距離を取る。
倒れた人間から煙が立ち上る、と重力を無視するかのように踵から垂直に立ち上がり突如炎に包まれた。
炎に包まれギヤァ~~~!!と絶叫しフラフラとその場を徘徊する。
吸血鬼だ!住民の誰もがそう認識し武器を吸血鬼に向け警戒しつつ距離を取った。
2階の窓から顔を出すジジャール「燃えたね~!ハハハ。飛び掛かってくるかもしれん気を付けろ。」と笑いながら愉快そうに言う。
吸血鬼はフラフラと絶叫しながら歩いていたが、炎が徐々に弱くなると歩みを止めた。
真黒に炭化しその場でポーズを取った状態で完全に活動を止めた。
「おい誰か!そいつをぶっ叩け!」2階の窓からジジャールが指示を出す。
「お!おう!」一番先頭で斧を構えた男が恐る恐る炭化した吸血鬼に近づき意を決して斧を振り抜いた。
炭化した吸血鬼の上半身がバラバラに砕け風に乗って散った。その後で下半身も砂山のように崩れた。
おお!と住人に歓声が上がる。
「ハハハ!あっけなかったな!止めを刺す必要も無かったようだ!」
住人達はお互いの顔を見合わせ笑みをこぼしながら「やった!やった!」と歓喜に沸いた。
あっけなく吸血鬼を滅ぼせる!そういう希望に抱き合った。
家の中で死体がある事は匂いですぐ分かった。そういう家には吸血鬼はいなかった。
大体吸血鬼はクローゼットの中に潜んでおり眠っていた。クローゼットの外には服やハンガーが散乱しており中に潜んでいる目印となっていて探しやすか
った。ジジャールはそういう奴らを強引に引きずり出し躊躇なく外に放り投げて行った。
外に投げ出された吸血鬼はまもなく炎に包まれ炭化した。
朝から開始された吸血鬼の始末は順調に行われ、このままあっけなく解決するかのように思われた。
だが例外が起きた。
ジジャールが同じように一人の吸血鬼を外に投げ飛ばしたのだが炎に包まれながらも一向に炭化する様子は無かったのだ。
炎に包まれ絶叫を上げながらも炎を消そうともがく!しかし炎が消えないと悟ると絶叫と共に住民達の方に姿を向け飛び掛かった。
炎に包まれたまま口を大きく開け牙をむき出しに住民に襲い掛かった。
住民たちはあっけなく炭化し消滅すると決めつけていた為に油断した。
突然の事で武器で迎え撃つ準備が出来ていなかった。
異変に気付き家から飛び出していたジジャールはすかさず住民と吸血鬼の間に割って入り持っていた木の柱で首を跳ね飛ばした。
跳ね飛ばされた首が地面に転がり、それでもなお燃え続ける首、胴体もその場で静止していたが炎は依然として燃え続けていた。しかし炭化する様子は無かった。
「離れろ!こいつは他のとは違うようだ」ジジャールは腰を抜かす住人たちを離れた場所に避難させた。
「もしかしたらこいつが親玉かもしれんな。」警戒しつつ燃え続ける吸血鬼と距離を取るジジャール。
その時、周辺が一瞬暗くなる。天を見上げると太陽が雲に隠れていた。太陽の光が雲により遮られる。ジジャールはハッと思い吸血鬼を見る。
そこにあったはずの吸血鬼の体と頭が無い。辺りを見渡すが吸血鬼の存在が消えていた。
「気を付けろ!消えたぞ!」ジジャールは離れた家の軒先で固まっていた住民たちに叫んだ!
次の瞬間、住民たちが固まっていた軒先の壁をぶち破り全身焼けただれた吸血鬼が両手を広げ現れた!そしてギロリと一人の住人を見た後襲い掛かった!
「下食奴隷共オォ!!」
悲鳴を上げ目をつむり成す術無く固まる住民達。頭を抱えその場にうずくまる。ジジャールの助けは間に合わない犠牲が出たと思われたが、ドンッ!という音と共に静寂が訪れた。
住人は何が起きたのか分からず恐る恐る目を開け辺りの様子を見ると、目を見開いた吸血鬼が手を広げたまま静止していた。
うわっ!!と悲鳴を上げる住民達!
吸血鬼の胸には木の柱が突き刺さっている。ジジャールが柱を投げたのだ。
吸血鬼は無念のうなりを微かに上げるが動けずにいた。吸血鬼は完全に静止した。
・太陽の光を浴びせる。
・木の杭を胸に打ちつける。
この2つが吸血鬼の弱点である事が証明された日であった。
しかし確実に吸血鬼を消滅させなくてはならない。
その日の夜から捕らえた吸血鬼を使った実験が教会の地下で行われた。
様々な道具を使って体を傷つけ、拷問道具を使って実験した。
その結果分かった事は鉄による攻撃に弱いという事。特に銀による攻撃を受けると傷の治りは遅くなり体の機能を低下させる事が分かった。
しかし決して死ぬことは無かった。どんな傷を付けようが最終的には傷を治癒してしまった。
数日に渡る実験であったが決定的に絶命させる方法は分からなかった。
しかしある一人の男が放った何気ない提案が吸血鬼を消滅させる決め手となった。
「日の出から日の入りまで太陽にさらしてみては?」
昼の間に、ある程度の吸血鬼を一層したおかげで夜に徘徊する吸血鬼は減っていた。
そして夜が明ける前に家に戻る吸血鬼を観察し、それらを確実に始末する事でその数を減らしていった。
住民の代表2、3人と共に直接日の出の太陽が当たる広場に木の柱を立て、胸に杭の突き刺さっている吸血鬼を鉄の鎖で縛り付けた。
そして夜が明けるのを待つ。
徐々に空が白み始めた頃。
どれだけ拷問されようが言葉を話さなかった吸血鬼だったがここに来て初めて口を開いた。
「下食奴隷共よ!これで終わりだと思うな!いずれこの世は我々に支配される!仲間の襲撃に怯え眠れぬ夜を過ごすが良い!」
「ほぉ?仲間か、どこから来る?」ジジャールは腕を組み興味津々に聞いた。
「怯えろ!すぐ近くより現れる!」
「すぐ近くねぇ・・・。おっと夜が明けるぞ!」
夜明けと共に吸血鬼の体に水泡が現れ体から煙が立ち上り炎に包まれた。
吸血鬼の絶叫が早朝の町に響き渡る
「うぉぉぉ!地獄の裂け目から這い出し貴様らを再び襲う!待っていろ!!すぐだ!!待っていろ!!」
怒号と共に吸血鬼は数分で燃え尽き炭化して地面に崩れ去ったのだった。
その吸血鬼の燃え尽きた灰をジジャールは口に入れ飲み込んだ。無性にそうしたい衝動に駆られ自分を止める事が出来なかった。
貪るように灰を口に入れ飲み込むジジャールを見て住民達は言葉を失いながら眺めていた。
日の出の太陽。これこそが吸血鬼を消滅させる決定的な弱点である事をジジャールは突き止めたのだった。
それから7年か8年か・・・。どこがすぐだ!待たせやがって!
ジジャールはソファーの上でイラついていた。吸血鬼を完全に町から根絶させる事ができ人間の願いは叶えてやった!
なのに魔界に帰れなかったのだ!
想像以上に魔力を消耗しており回復しなかった。それどころか人間界にいるだけで僅かずつではあるが消耗し続けていた。
それを回復させたのが吸血鬼の燃え尽きた灰だったのだが、それを喰っても魔界に帰れるほどの回復には至っていなかったのだ。
ジジャールが魔界に帰るにはもっと大量の吸血鬼の燃え尽きた灰が必要なのだ。
ジジャールは吸血鬼こそが悪魔にとっての餌、エネルギー源だと知った。
その日から吸血鬼が燃え尽きる前に言った「地獄の裂け目」とやらを探しようやく例の洞窟にたどり着いたのだったが、洞窟内に吸血鬼の存在は確認出来なかった。
ここが住処という訳では無いのか。
しかし無関係ではない事はコウモリの不自然な攻撃(蹴散らしたが)や洞窟内に仕組まれた人を迷わす為の幻覚から吸血鬼の匂いを感じ取れた。
人を迷わす小癪な洞窟の幻覚は口から手を無数に伸ばす事で破る事ができた。
ジジャールにとっては吸血鬼が町を襲うのを待つ以外方法が無かった。
町の住人を洗脳し、元々バーを経営していたガストの記憶を受け継いだ事で町に溶け込み生活を続けたのだ。
バーで働くことで住人の動向は手に取るように分かった。ある日の突然の違和感、住人の人数が減っている事も素早く察知できた。
町が襲撃を受けている。吸血鬼の匂いに笑みを隠せなかった。
ようやく獲物が来た!確実に捕らえ拷問に掛け情報を引き出す!
殺す!ぶち殺す!そして灰を貪り喰ってやる!早く来い!俺を襲いに来い!
窓がキィ・・・と開いてより多くの風が部屋に流れ込んだのを感じた。それと共に部屋に侵入する気配。
背中を向けソファーで寝た振りをするジジャールに近づく人影。
ジジャールに黒い手が伸びる、その手首を素早くジジャールは掴んだ。「ようやく来たかい!待ちわびたぜぇ!」
それには弟徒君もギクッとし、動揺を隠せなかった。だが素早く頭を切り替え捕まれた腕を振りほどいた。
「チッ!」弟徒君は素早くバックステップで窓から逃れようとした。
強引に噛みに行く事も一瞬考えたがこの男には何かあると察知し場を離れる事を選んだ。窓に手を掛け飛び立とうとした時
「逃がさん!!」とジジャールの口から放たれた4本の白い手が弟徒君の両手足を掴み再び部屋に引きずり込んだ。
ガァ~ン!ガァ~ン!
ジジャールの手に握られていた回転式拳銃の銃声が夜の町に響く。
弟徒君の胸に風穴が空く。力が抜ける!何だこの感覚は!
ジジャールの口からヌルッっと這い出した2体の白い人型が弟徒君の手足をガッチリと掴んで離さない。
「吸血鬼というのは結構な有名人じゃないか!出版物にもなっていたぞ。招かざる家には入れないと記されていたがルールを無視するんじゃないよ。」
「クッ!」力が入らず弟徒君は捕まれた手足を振り解けない。
「動けないだろ?銀の弾丸の味はどうだい?君にはこれから拷問を受けて貰うよ。辛ければ質問に素早く答える事だ。」
手に先の尖った木の杭を持ったジジャールの顔が嫌らしい笑みで歪んだ。




