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「食料は?」
イオリがサキトに訊いた。
「この人数だと、一日どころか一食で終わりだ」
サキトが答えた。
今、この状況で食料問題は非常にまずい。
現在、午前11時20分。
「そうだ、ここの荷物置場に何か食料が有るんじゃない?」
アヤが言った。
「無理だよ。有ったとしても、何十年も前の物だ。腐っちまってるよ」
イオリが言う。
それを聞いてアヤは俯いた。
「タイチさん」
イオリがタイチに話しかけた。
「はい」
タイチが顔をあげる。
「この島で『食べれる』ものって有りますよね?」
イオリが言った。
「食べれるもの?」
タイチが首を傾げる。
「だから……木の実とか、茸とか」
イオリが言った。
「あぁ……はい、有ります」
タイチが答える。
「それを採れば良いんだ!」
イオリが目を輝かせて言う。
「そうだな……そうしよう」
サキトが賛同した。
「でも……どうするの?外には『奴ら』が居るし」
シノが言った。
久しぶりの発言だ。
「じゃあ、ここで死ぬのを待つか?」
サキトがシノに言った。
「それは……」
シノが言葉につまる。
「よし!決まりだ。タイチさんとイオリはついてきて。それ以外はここで待機だ」
サキトがてきぱきと指示を飛ばした。
「準備開始!」
サキトがそう言って手を二回鳴らした。
それと同時に皆、動き始めた。




