ー26ー
仕方なく、ユウタ達はサキトについていった。
まだ深夜だ。
「なぁ」
イオリがユウタに話しかけた。
「ん……」
ユウタがイオリを見た。
彼は、リュックサックを背負っている。
「あれ、何かな?」
「あれって?」
「あれだよ!ヨウスケさんを殺した」
「あぁ……さあ、解らないな」
そこで、会話が途切れた。
「タイチさん」
イオリがタイチを呼び寄せた。
そして、タイチにもユウタと同じ質問をした。
しかし、タイチも解らないな様で、首を傾げていた。
いつの間にか、辺りはうっすらと明るくなり始めていた。
朝だった。
その時、一行の後ろで声が聞こえた。
『奴ら』だ。
「くそ……」
サキトが言った。
「走れ……走れ!走れ!!」
コウタが叫んだ。
皆、一斉に走り出す。
後ろを振り向く余裕も無かった。
その瞬間、ユウタの足から感覚が消えた。
足場になっていた樹の根が折れたのだ。
ユウタだけではなく、全員急斜面を転げ落ちて言った。
「うわぁぁぁぁぁぁ……」
叫び声が響いた。
落ちて、落ちて、落ちて……
ドサッ
「いって!」
ユウタが腰をさすりながら起き上がった。
「皆、生きてるか?」
サキトが訊いた。
返事が重なって聞こえる。
辺りを見渡した。
さっきまで居た所と、それほどまで変わりは無かった。




