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「母さん……大丈夫かよ?」
ユウタは病院のベットに寝ている母親に言った。
母親が倒れた。
と、電話がかかってきて職場から慌てて田舎に帰ってきたのだ。
「あぁ……大丈夫だよ」
母親が優しい笑顔で言った。
疲れが一気に出たようだ。
命の心配は無い。
と、医者に言われ、胸を撫で下ろした。
「母さん、ちょっと疲れてんだよ」
ユウタが母親に言った。
父親は二年前に癌で他界した。
それからは、父親がやっていた畑仕事は母親がやっている。
ユウタも、連休等は帰って手伝っていた。
倒れるのも納得できる仕事だった。
それに、母親は確か今年で78歳だ。
「それよりあんた、彼女はできたのかい?」
母親がユウタに訊いた。
「はっ……居ないよ」
慌てて答える。
「駄目だねぇ。その年で彼女の一人や二人作っとかないでどうすんだい」
母親が微笑みながら言った。
「ほっとけよ、そんなことより、今はゆっくり休みな」
ユウタは母親にそう言って病院を後にした。
母親に癌が見つかったのは、その数ヵ月後だった。




