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俺は御者に頼み込み、街まで連れて行って貰うことにした。
ま、最強となり魔王を倒すことを目的としてるからな、とにかく強者を求めて街を目指さなければならないのだ!
まぁイキりたいというのもちょっとはあるんだがな。それと魔法も使えるようになりたい。
「因みにあとどれくらいで着くんだ?」
俺は馬車と御者席の間の小窓を開き、御者に尋ねる。
馬車は初めて乗ったが、そんなに悪い気分ではないな。ガタゴトとはなるが、ジェットコースターくらいのもんだ。むーん。
「三十分も掛からねぇよ……それよりも本当に解放してくれるんだよな? 条件と違うってことはねぇよな!?」
「大丈夫だよ。ちゃんと街まで着けたら君はちゃんと用済みだ。解放してやろう」
適当に返事しながら流れる外の景色を見る。
はぁ、人に働かせるって極楽だなぁ。異世界って言うから奴隷とかもいるのかな。奴隷を購入してみるってのも一つありかもなぁ。俺の代わりに家事とかしてもらったりとかして。まぁでもその前に本来の目的だよな、強者を探して決闘を申し込むか。そうだな、まずは強者いませんかと街頭アンケート的な聞き込みをして……ああ、あとそれから生活資金も調達しないと……
「ん?」
突如馬車が止まった。
なんだと思い、再び小窓から前方を覗く。
「どうしたんだよ。適当な仕事してんじゃ……ん?」
現在馬車は土で舗装された道の上を走っているのだが、その路傍に一人の人間がいた。
こちらに気づき、立ち止まっている。
人がいるのは分かるけど、避けてくれてるじゃん。なんで停止する必要があるんだ? 頭が悪いのか?
「なんだ? どうして止まるんだよ。無視して先に行こうぜ」
「…………」
御者は黙ってしまっている。
どうした。何があるんだ?
あの人物に何かあるっていうのか……うーん、普通の青年って感じの男だけどな。確かに革鎧とか腰に剣を差してたりもするし戦闘を生業としてる雰囲気は出てるけども……
「って待てよ? もしかして剣士ってやつだったりする?」
やばい、猛者かもしれない。
そうだ、せっかくだし戦ってみるか!
俺の実力を測るチャンスだ。
「とう!」
俺は馬車から離脱し、そいつの目の前に着地した。
「……な、なんだてめぇ……」
男は警戒するような視線を向けてくる。
こちらに来るとは思ってもなかったかのような反応だ。
「いやー、別にどうということはないんだけどね」
「俺に何か用があるってのかよ」
「あるけど、ちょっと道を尋ねたくてね。この先を行ったら街に着くのか?」
「……そうだがそれがどうした」
「いや、まぁ適当なこと言ってみただけだ」
「この状況でかよ!」
「そっちは何をしていたの?」
「答える義理はないな」
短髪の青年は腹立つ顔で言ってくる。
はぁ、なんだコイツ。戦うとは関係なしにぶち殺したいんだが。
しかもなんか野球部顔だしマジでしょうもないわ。
まぁいい。とにかく勝負といこう。
ワンチャン強者という可能性だってあるしな。
そんなことを思った俺だったが、ここで予想だにしない事態が起こった。
「助けてくれ!」
御者の男が声を張り上げていた。
切羽詰まった顔で、青年に助けを求めたのだ。
「はぁ、そう来ますか……」
「……?」
青年は困惑しているみたいだった。
はぁ、この青年なら俺をどうにかできると思ったのか?
ガチで不愉快だわ。
シュン!
俺はその場から掻き消えた。
一瞬で、青年の足元に移動する。
「せいや!」
高速パンチ!
余計なことになる前に、俺は青年の腹に大穴を開けた。
空いた穴からごぽりと何かがこぼれた。
「あ……え…………がっ」
それだけ言って、青年は崩れ落ちた。
目は驚愕に見開いていたが、それ以上動く様子もなかった。
うん、なんとなく分かってたけど、期待外れだったな。こんなところに強者がいるわけもない。
「はぁ!」
俺は御者を殴り飛ばした。
顔面への平手打ち。
御者席から吹っ飛び、地面を転がる。
「ふざっけんなよッ! このゴミが! 余計なことしてんじゃねぇぞ糞!!」
「ぐ、ぐうぅ……ひ、ひぃいいいいいいいい!!」
「小指、いっとく?」
俺は御者の右手の小指を握りしめた。
懲らしめが必要だろう。
「い、いやああああ、ごめんなさいいい! ごめんなさいいいいいいい!!」
泣きじゃくっていた。
なんだよこのおっさん。冷めるわ。
結局小指は折らないであげた。
まぁ怒ってはみたけど、もういいや。
俺は寛容なのだ。
俺は次はないからと御者に釘を差し、再び馬車での移動を開始した。
ほんと人間思うようにいかない。でもだからこそ面白い。だろ?
五分後。
もう流石に御者は大人しくなっており、俺達は揚々と道を進んでいた。
脅迫も大変だな。もうなんだか疲れてきた。早く街で休みたい。
ゴンゴンゴン。
そしてどこからか戦闘音のようなものが聞こえてきた。
「また何かあるのか……異世界って凄いんだな」
音はどうやら前方から聞こえてくる。
となると道の先あたりで何か起こってるということだ。
近づいてみれば、そこには違う馬車があった。
先行していた馬車に追いついたようだ。
複数の生物と何者らかが戦っていた。
「邪魔だなぁ」
生物の方は灰色の体をしている小柄の狼のような生物だった。
だが普通の狼と違うところは二本足で立っているところだ。
そんな狼人たちと戦っているのは三人組だ。
うまく攻撃を受け流しているようだが劣勢のようだ。うお、今炎が飛んだ! 狼人の一人が火だるまに。あれが魔法ってやつか。初めて見た感動。
「俺も使えるようにならないかなぁ。しかし俺の道を妨げるとは許せん奴らだ。しばいてしまうか」




